2015.11.13

綴られた時間 第九回 東京・神田神保町 鳥海書房

東京・神田神保町 鳥海書房 文・写真 久保田雄城

 

「原色千種昆蟲図譜」平山修次郎 1933年(昭和8年)

 

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神田神保町という街は、不思議だ。書店や古書店、それに飲食店がひしめきあっているのだが、街のそこかしこに、未だ「昭和」の匂いがする。

 

そんな街の中、雑居ビルの3階にある「鳥海書房」で僕は「原色千種昆蟲図譜」という本を見つける。初版は昭和8年、つまり1933年。今から80年以上の前の書籍だ。調べてみると、小学5年生だった漫画家の手塚治虫は、クラスメートが持っていたこの本に載っていたオサムシの図版をみて、本名の“治”に“虫”という字を加え、ペンネームを手塚治虫にすると決めたという逸話を見つけた。

 

ペンネームに「虫」を使うというのは、個人的にはよくわからないけれど、この「原色千種昆蟲図譜」のセールスポイントは今や手塚治虫のようである。

 

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東京育ちの僕は幼い頃、昆虫に触れる機会がなかったせいか、どちらかというと苦手である。だから昆虫にまつわる思い出もない。

 

昆虫という言葉で僕が連想するのは、ビートルズとフォルクスワーゲンのビートルだ。
「BEATLES」というバンド名は、ジョン・レノンとスチュアート・サトクリフが考えた造語だ。

 

ジョンによれば、この名前を提案したのは1960年の4月で、バディ・ホリーのバンド名である「バディ・ホリー&ザ・クリケッツ」のクリケッツにあやかり、同じ昆虫で、同じように2つの意味を含んでいる言葉としてビートルズを思いついた。

 

クリケッツは、Cricketsで、スポーツのクリケットと「こおろぎ」をかけている。それに対してビートルズはカブトムシのBeetleに音楽のBeatをひっかけてBeatlesとしたわけだ。洒落っ気でいえば、ビートルズの方が上だろう。
フォルクスワーゲンのビートルは、正式名称は「タイプ1」だったが、そのデザインがカブトムシ(Beetle)を連想させることから通称として知られるようになり、二代目は、「ニュービートル」が正式な車名となった。

 

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そんなわけで、真っ当な昆虫とは縁遠い僕だけど、時には、鳥海書房のような迷宮を徘徊しるのも悪くないと思っている。

 

鳥海書房
住所: 〒101-0051千代田区神田神保町2-3 神田古書センター3階
電話: 03-3264-4450
営業時間 10時~18時半(祝日:11時~17時半)
定休日 第3日曜日