2015.03.06

ワインレッドのレザーの手帳と、僕が彼女をブランド化したわけ(前編)

手帳[第1回]

 

今の時代、スケジュール管理は多くの人がスマホやタブレットや、その合体であるファブレットで行っているのではないだろうか。

 

かくいう僕もそうだ。スマホのようなデバイスが登場する以前は、ファイロファックスのシステム手帳を駆使していた。それにペリカンの万年筆で、仕事のスケジュールからデートの予定まで書き込んでいた。

 

それが今では、iPhoneだ。確かにこれは、もはや発明といっていいほどの製品だと思うし、僕は元々アップル信者だったから、何も文句を付ける気はない。けれど、いろんな事が便利になった分、大切な何かが失われた気がしないでもない。ひょっとしたら、こういう想い自体が懐古趣味なのかもしれないが。

 

それに代わる新たな製品が生み出されると、人々は新製品に飛びつき「いやあ、便利になったねえ」という。そしてある一定の時が過ぎると、そのルーツとなる製品が再評価される。これは世の常だ。レコードとCDしかり、万年筆とボールペンしかり、ラジオとテレビしかり。

 

テクノロジーの進歩は人々を快適に便利にするが、それらと引き換えに人々のエモーションを少しずつ損なっていくのかもしれない。

 

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先日、ヨガのインストラクターをしている智美という名前を持った女性と、青山で打ち合わせをする機会があった。理想的なプロポーションを持った魅力的な人だった。表参道駅で待ち合わせて歩きながら、打ち合わせの前奏曲としてお互いのわりとプライベートなことを話した。

 

彼女は元々、外資系の大手コーヒーストア・チェーンで広報の仕事をしていたという。ちょっとしたきっかけでヨガ・スタジオに通いだした。それでヨガに魅了されて会社をすぐに辞めてインストラクターを目指した。そして、その夢を実現させたのだ。

 

僕らは骨董通りにある、本店がパリにあるカフェに入った。内装はオフホワイトと黒とグレー、それにオーク色を基調した心地良いものだ。

 

席に着くと、彼女はトートバッグから手帳を取り出した。それはワインレッドのレザーで使い込まれたものだった。僕はもうそれだけで彼女が気に入ってしまった。

 

(文・久保田雄城/写真・塩見徹)
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