- 2014.10.22
ボクの仕事は、お客さんを気持ちよくさせること[後編]
三宅 淳さん/コスチュームデザイナー
国内での仕事に加えて、毎年、1ヶ月間ほどチェコに滞在し、バティック(インドネシアなど主にアジアで作られるろうけつ染め)製品のプロダクトを手がけているという三宅さん。その経緯を尋ねたところ、こちらもまた“偶然”の出会いがきっかけだったのだとか。
「別の仕事で滞在していたインドネシアで知り合った人に呼ばれて行くようになったんです。毎日違う場所に行けるのは、(個人事業主ならではの)楽しみですよね。佐野さんとの打ち合わせも、銭湯の大浴場に浸かりながらやったりしてます(笑)。仕事については、おもしろそうだと思ったら、金額云々の話をするより前に“YES”って言いますね」と三宅さん。
一方で、こんなことも話していた。
「モノを作ること自体は、誰にでもできるんですよ。でも、お金に結びつく仕事を作るのは難しいですね」
2014年現在、世界の人口は約72億人といわれている。そのうち、一生で出会う人の数はごくわずか。(さらにいえば、同じ仕事を生業にする人だって星の数ほどいる。)だから、一つひとつの出会いにはきっと意味があるし、すべてがチャンスにもなり得る。
洋服にドレス、シルバーアクセサリーから着ぐるみまでと、扱う素材も用途も異なるが、三宅さんはそれぞれの作品を通して出会った人との繋がりを、何よりも楽しんでいるようにも感じられる。
「何を作るにしても、丁寧に仕事をするのは当たり前として、理想は最後の20%に取りかかるとき、穏やかな気持ちで取り組むこと。……と、いつも考えてはいるけれど、実際はそうはいかないことも多いですね(笑)。
でも、仕上げの段階で変に焦ってしまうと失敗してやり直すハメになったり、やり直さないまでも、例えば着ぐるみだったらごく小さなシワが寄ってしまったりとか。クライアントは気づかないかもしれないけれど、そうなると出来上がった時の達成感は低い。「やった!」から「早く忘れよう」となってしまう。そんな仕事はしたくないですよね。
あとね、アシスタントに「こうしなきゃダメだろう!」なんて言っている時にふと気づくんですが、自分が手を抜いてしまう部分について注意しているんです。言葉が“言霊”となって自分に返ってきている。これは、アシスタントを使わなかったら気づかなかったことだなぁと思います」
忘れてしまいがちだが、個人で請け負っていたとしても、絶対的に“独り”では仕事はできない。「人こそ人の鏡」とはよくいったものだと痛感させられるエピソードである。
ところで、三宅さんがこれから作ってみたいものはあるのだろうか。
「乳児用の着ぐるみですね。こういうウレタンとかではなくて、体に優しい素材で作るんです。赤ちゃんって抱いているだけでかわいいでしょう? それをさらにかわいくしたいんですよ。――そうだな、うちの子はセイウチに似てるから、セイウチを作ってみたいなぁ」
話しながら相好を崩す三宅さんは、子煩悩なパパそのもの。セイウチの着ぐるみを着た赤ちゃん……それは相当かわいいはず! 早期実現&ブランド化を願わずにはいられない。
また、将来は“お菓子づくりが得意なおじいさん”になりたいと都内の某パティスリーに通って学んでいるのだとか。エプロンをまとい、美味しいケーキやクッキーを焼く姿は想像に難くないが、個人的には、その頃にはお孫さんのためのかわいい着ぐるみを作っているような気もしてならない。
プロフィール
三宅 淳
オーストラリア滞在中にバブル期の恩恵受け、世界を流れ歩く。BURNIGN MAN にカウンターパンチを喰らい、TOKYOでモノづくりを再開。おしゃれな人から変態な人まで分け隔てなくクライアントの為に日々創造中。
http://jumpinjapflash.com/jumpin/index.html
http://www.kit.hi-ho.ne.jp/kamekou
http://www.phippie.com/
(文・河西みのり 写真・西原樹里)
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