2014.10.08

ボクの仕事は、お客さんを気持ちよくさせること[前編]

三宅 淳さん/コスチュームデザイナー

 

 三宅淳さんの肩書きをひと言で説明するのは、ちょっと難しい。
「最近は“コスチュームデザイナー”って言ってます」とのことだが、若い女性向けのアパレルブランドのパタンナー、男性をターゲットにしたシルバーアクセサリーのプロダクト、インドネシアなど海外を拠点に展開するブランドのプロダクト、ウエディングドレスのオーダーメイド……と手がける仕事は多岐に渡る。

 

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 取材で訪れたのは、そんな三宅さんの拠点の一つである『亀有工房』。着ぐるみをはじめ、さまざまな衣装、舞台小道具等を手がけるこちらの工房で、三宅さんは衣装制作を担当している。三宅さんが頭に手拭いを巻いている写真について注釈を加えると、ウレタンシートを貼り合わせて造られた着ぐるみのボディに合わせて、ボア生地を裁断しているところ。
 デザイン画をもとに立体ボディを作り、皮膚や衣装となる布を切り出したら、縫ってはボディに被せ、シワなどが寄らないように微調整を繰り返す。すべての工程は手作業で行われ、1体が完成するまでに早くても2、3週間はかかるという。
 実は、このときに作っていたものは、三宅さんが生地の質感がどうしても気に入らず、別のボア生地を購入して作り直したという。

 

「シンナーなどの特殊な薬品を使うことも多いので、真夏も真冬も扉は常に開けっ放しです。意外に、地道でアナログな作業なんですよ」と、亀有工房で造型を担当する佐野さん。
 近ごろ、あちこちで目にする“ゆるキャラ”のほとんどは、こんな風に職人の手によって1体ずつ手作業で作られているのだ。

 

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 面白いのが2人の出会いで、佐野さんが出展していたフリーマーケットにたまたま三宅さんが訪れたのがきっかけだという。
 そのとき、三宅さんがオーダーメイドでコスプレの衣装を手がけているということを聞いた佐野さんが、「それなら僕の仕事を手伝ってみない?って、なんとなく声をかけたんですよね」。「そこからもう20年ですからね。すごい話ですよね」と三宅さんも笑う。

 

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 実家が和裁業を営んでいたという三宅さんにとって、幼い頃から“モノづくり”は身近な存在で、現在の仕事に就いたのも自然な流れだったという。

 

「子どもの頃は、自分でスターウォーズの絵を描いて、おばあちゃんにハンカチに刺繍してもらって、その続きを縫ったりしてました。中学生になると、友達から学生服のパンツを細くする加工を頼まれたりね。姉のブラジャーのワイヤーの修理なんかもやってましたよ(笑)」

 

 ちなみに、ブラジャーの修理を頼んだというお姉さんは、同じ屋根の下で育ちながらもまったく違う道に進んでおり、三宅さん曰く「ぞうきん一枚、縫えませんよ(笑)」というからおもしろい。
 さまざまな仕事を手がけている三宅さんだが、1番楽しい仕事は?と聞くと“具体的ではないオーダー”なんだとか。

 

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「例えば、“かっこいいパンツが欲しい”とか、“ハチが好きだから着ぐるみ作って”とかね。打ち合わせしながら、どんな雑誌が好きか、どんな街で遊んでいたのか、好きな音楽やコレクションしていたものなんかを聞きながら、相手のことを探っていくんです。
 相手のバックグラウンドがわかってくると、少しずつデザインの方向性も見えてくる。ハチの着ぐるみを作るときは、本物のハチを見ながら、お尻の黄色と黒の縞のバランスをチェックしたりね。
 クライアントを気持ちよくさせてあげるのが、デザイナーの仕事だと思うんです。すべての工程を自分でコントロールできる仕事は面白いし、ゼロから作り上げたものが相手の好みにバチっとハマると最高に嬉しいですよね!」

 

“クライアントを気持ちよくする”仕事の最たるものがウエディングドレスではないだろうか。
 多くの花嫁は、挙式が近づくほどに期待と高揚感で胸がいっぱいになり、ボディラインは自然と引き締まって、表情も徐々に変化していく。三宅さんは、フィッティングを重ねるごとにサイズの微調整に加えて、ドレスに合わせてジュエリーやパールをあしらうなどの演出を施すという。また、式当日もアイロン掛けやフィッティングのために式場に駆けつける。
 自分のためだけに作られた、世界中でたった一枚のドレスは、式当日はもちろん、年月が経って思い出す度に華やかな気持ちにさせてくれるだろう。

 

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プロフィール
三宅 淳
オーストラリア滞在中にバブル期の恩恵受け、世界を流れ歩く。BURNIGN MAN にカウンターパンチを喰らい、TOKYOでモノづくりを再開。おしゃれな人から変態な人まで分け隔てなくクライアントの為に日々創造中。
http://jumpinjapflash.com/jumpin/index.html
http://www.kit.hi-ho.ne.jp/kamekou
http://www.phippie.com/

 

(文・河西みのり 写真・西原樹里)

 

[後編](10月22日配信予定)へ続く