2018.08.13

楽しいを1冊に詰めこんで、国や年齢の垣根を超えて絵本で繋がる【前編】

miyauni(大藤めぐみさん:鈴木雄大さん)/絵本作家
 

「パッケージからキャラクター、グラフィック等々、デザインにはいろいろな分野がありますよね。絵本って幅広いデザインを網羅しているものだと思うんです。」と笑顔で話してくれたのは「miyauni」の名で絵本作家をされている大藤めぐみさんと鈴木雄大さん。二人は大学三年生の時にバイト先で出会い、今は夫婦として二人三脚で絵本作りに励んでいる。
 


 

 2016年に著作である「ねずみくんとおおきなチーズ」でイタリアボローニャ国際絵本原画展に入選した、500冊限定で「ねずみくんとおおきなチーズ」を刊行。2017年11月に「ぱたぱたえほん」が、2018年2月に「Cherche et trouve le caméléon」をフランスで刊行したのち、「miyauni」としては関東初となる個展を今夏に開催。浅草雷門からほど近いカフェで開催された個展では、ワークショップやコラボメニューなどを展開するなど、初めてのこと尽くしだったと言う。さらに7月26日には、二人の元バイト先であり、出会いの場ともなった無印良品、その有楽町店にてトークショーも開催。キャンセル待ちが出るほどの人気だったそうだ。
 

 現在、出版されている絵本は3点。どちらもハッとするようなビビッドな色合いが素敵な絵本だ。二人にとって鮮やかな色合いは自然に出てくるものだそうだが、そのうちの1冊「Cherche et trouve le caméléon」を出版する際、現地の出版社の方から色使いへのアドバイスをもらったことがあったと言う。
 


 

「いくつかのページの色をもう少し暖かい色にしてほしいというアドバイスをもらったことがありました。暖色の方が、子供が落ちつくからだと思います。この経験がきっかけで、新しい絵本を作る際にも子供が安心する暖かい色を意識するようになりました。」こう笑顔で話してくれた大藤めぐみさんは、しっかりしているという印象をうけるものの、どこか穏やかな雰囲気が漂う女性だ。ふんわりとした笑顔がとても印象的で、彼女の人柄を表しているようにも思えた。
 

 色鮮やかなページのなかで、見本となっているカメレオンの姿を付属のシートで探すというワクワク感が詰まった1冊だ。ぴったり当てはまる場所を探しているうちに、子供だけでなく大人も気づけば夢中になってしまうだろう。擬態つながりで、今後はタコをモチーフにした絵本も作成予定だと言う。
 


 

 もう1冊の絵本は、「ぱたぱたえほん」という作品だ。タイトルからも分かるように、“ぱたぱた”しているいろいろなもの、動物、昆虫などを1冊に詰めこんだ面白みがあふれる1冊となっている。
 

 2冊の絵本のうち、刊行した順番としては「ぱたぱたえほん」の方が先なのだが、実は本人たちにとっては思いかげない出版になったのだとか。
 

「最初は海外で絵本を出せたら良いなと思っていたのですが、その前に思いがけず縁が繋がって日本国内で絵本を出せました。僕が名古屋のデザイン事務所でフリーランスとして席を置いていたことがあって、その時に編集者の方にお会いしたんです。その後絵本作家として活動して行くという時に、出版社でその方に偶然お会いして。当時はクラウドファンディングで冊数限定で刊行する予定だったのですが、その方と色々準備を進めていくうちに、全国の書店で販売出来るようになったのはすごく嬉しかったです。」
 

 そう話してくれた鈴木さんはおしゃれな大人の男性という印象もありつつ、子供のように目がキラキラしている男性だ。二人はボローニャ国際絵本原画展で入選を果たしたのち、2016年末に結婚。入籍の前から同棲はしており、今年で6年目になると言う。
 


 

「miyauni」という絵本作家を知った時、名前の由来が気にならない人はいないと思う。ちなみに私はお互いの苗字や名前を合わせて作った造語的な名前だと思っていたが、それは見事に検討外れであった。実は「miyauni」という名前にも、絵本作家である二人の仕掛けが詰まっていたのだ。
 

「もともとは“myao uninen”という名前で活動していました。『myao』は猫の鳴き声、『uninen』はフィンランド語で“うとうと眠い”という意味を持つ言葉です。猫を2匹飼っているのですが、猫の寝ている姿ってかわいいなあと思いながらつけました。ただ、フィンランド語は聞き馴染みがないせいか、名前をあまり覚えてもらえなくて・・・。」
 

「最初は性別も不明で、国籍もわからないような意味合いも持たせたくて“myao uninen”の名前を使っていました。でも仕事をするにあたってそうもいかず・・・。そこで“myao uninen”を略して、miyauniという名前にしました。最初はmiya君、uniちゃんと呼ばれていたこともありましたね。」
 

「miyauni」という口なじみが良い名前には、独特の世界観を持ちながら、穏やかな空気が流れる二人にピッタリな意味や歴史が詰まっているように思う。そんな二人に絵本作りで大変なことを聞いてみると、顔を見合わせて微笑みながら、「特にないです」という答えが返ってきた。鈴木さん曰く、「嫌だな」「面倒だな」と思う作業も無いらしい。「キャラクターづくりから素材選び、デザインに至るまで、すべての作業を自分たちが楽しいと感じるものだけで構築していきたい。」二人の絵本作りの根底には、普段仕事をしている中で誰もが忘れてしまいがちな思いがあるように思えた。
 


 

◆プロフィール
・miyauni
大藤(おおとう)めぐみと鈴木雄大からなる絵本作家。2016年「ねずみくんとおおきなチーズ」でイタリアボローニャ国際絵本原画展入選を機に国内外で活動。著書に、日本で「ぱたぱたえほん」(エンブックス)、フランスで「Cherche et trouve le caméléon」(MANGO JEUNESSE)。
・大藤めぐみ
女子美術大学芸術学部デザイン学科卒業
・鈴木雄大
パレットクラブスクールイラストコース16期卒業
共通の趣味:海外旅行 美味しいものを食べること
miyauniホームページ:https://www.miyauni.com/
 

◆今後の個展情報
・Fairy come out! ~ようせいさん、でておいで!~
場 所:GALERIE CENTENNIAL(http://www.14thmoon.com/index.html
    大阪市中央区大手通り1-1-10
電 話:06-6943-4060
期 間:2018年9月12日(水)~21日(金)
時 間:12:00~19:00(土・祝・最終日は12:00~17:00)
休館日:9月16日(日)
 

・はじめまして、ねずみのズーズー
9/22(土)~10/3(水)
場 所:サコダアートギャラリー(http://www.sakoda-art.com/gallery/
    兵庫県西宮市田代町19-12 Beehive西宮
電 話:0798-66-0667
期 間:2018年9月22日(土)~10月3日(水)
時 間:10:00~18:00(最終日は~17:00)
休館日:なし
 

◆取材協力
BEARS TABLE
東京都台東区雷門2-15-1 デコルテ浅草ビル1F
電話:03-6231-6530
営業時間:11:30~18:00
定休日:火曜日
http://bearstable.jp/
 

(文・橋詰康子 写真・西原樹里)