2015.08.26

「食べ物としての色気」をいただく。【後編】

坂本 紫穂さん/和菓子作家

 

「私ね、昔から何をやってもいまいちテンションが上がらなかった。でも、和菓子という道を見つけてからはずっとテンションが上がりっ放しなのが自分でもわかるの(笑)」
 同世代女子として、こんなに羨ましい言葉はない。

 

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 あらゆる角度からお料理を学んだだけあって、坂本さんの和菓子は美しいだけではなく、頂くものすべてが本当に美味しい。これも本人がとても気を使っているところで、作品でありつつもあくまで“食べ物”なので、美味しそうで“食べ物としての色気”があることが大切なのだという。彼女の和菓子は人の体内に入って初めて完成する作品なのだ。
「きっと私、わがままなのでしょうねぇ(笑)」と話す坂本さんだが、言葉の節々に依頼主やその先にいる人、そして生徒さんを喜ばせたいという優しい気持ちが繊細な和菓子一つ一つに現れている。

 

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「よく、絵は描く人の心を表すというけれど、それは和菓子も同じようなところがあって、自分の内側がそのままお菓子に出てしまう。だから自分自身のコンディションを保つことが大切だと思う。例えば私の場合、秋の紅葉のお菓子を作る時も、見たままの紅葉そっくりに作るのではなく、自分が感じた“印象”をお菓子にする。何かに触れた時、見た時にそれを受け取る自分の心や、それを素直に表現する心が重要ってことかな。
 和菓子教室に来てくださる生徒さんにも、和菓子作りを通して自分の内側を優しく見つめて、今の自分や自分の好みを感じてもらいたい。

 

 そうこう話している内に、あっという間に取材班全員分の和菓子が出来上ってしまった。今回のテーマは「波」。ころんと丸い形の先に、透き通った青と白の波がたっている。見た目は可愛らしいが、この波のカーブならサーフィンでも出来そうな荒波だ。一口食べれば中の餡子と混ざって、これまた繊細で上品な甘さがする。
 言われてみれば、坂本さん自身を表したような和菓子にも感じる。
 和菓子の世界は本当に奥が深い…。

 

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 坂本さんの今後の目標は、美味しい和菓子を作り続けるためにより内面を見つめ続けること。そして国内のみならず、海外でも和菓子作りを広めていきたいと考えている。日本食が文化遺産に登録された事もあり、最近では海外からのオファーも多く、こうした日本人女性が世界を舞台に活躍するのは本当に誇らしく思う。

 

 坂本さんは、今回撮影を行った表参道のCrossKitchenで和菓子教室を行っており、女性、男性、親子にも大変人気がある。私自身、食べられる芸術体験としてだけでなく内面磨きという意味を込めて、ぜひ参加してみたい。

 

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■プロフィール
坂本 紫穂(さかもとしほ)
紫をん(Shiwon)https://www.facebook.com/wagashi.shiwon
1982年生まれ。和菓子作家。
茶席での菓子を中心に、オーダーメードの和菓子を作品として制作。都内を中心に和菓子教室や和菓子作りのワークショップも行う。
2013年・・・映画「利休にたずねよ」公式タイアップ茶会(和菓子監修)
2014年・・・COREDO室町 オープニング特別展示/粋な茶会in橋楽亭(和菓子監修)
2014年・・・漫画『へうげもの』ORIBET-TEA 400 ~没後四百年・古田織部を偲んで~茶会(和菓子監修)
2015年・・・パークホテル東京(汐留)アフタヌーンティー・スイーツ(プロデュース)

 

撮影協力:「CrossKitchen」 http://www.crosskitchen.jp/
 

(文・吉井美生 写真・西原樹里)