2015.08.11

「食べ物としての色気」をいただく。【前編】

坂本 紫穂さん/和菓子作家

 

取材を始めて早々に、「写真はとても重要なので、きれいに撮ってくださいね!
 宜しくお願いします。」と話す和菓子作家の坂本さん。イメージ作りというより、自分自身をありのままに伝え、表現するのが彼女のスタイルのようだ。

 

現に、今彼女が受けている仕事は相手から依頼を受けたものが多く、自ら営業をかけることは少ないという。

 

「ご依頼頂いたお仕事は楽しいものばかり。だから時には忙しくて大変なこともあるけど、とてもありがたいことです。」

 

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 坂本さんの作る和菓子はどれも独創的で、伝統的な椿や桜などの花をモチーフにしたものもあれば、恋文・死闘・夢・ひとだまなど、様々なテーマをもとにイメージを膨らませて作る作品も多い。依頼主からデザインやモチーフを決められることはなく、和菓子を盛る器や、コンセプト・時間・場所を聞いて自らイメージを決めていくのだそう。

 

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「私らしいやり方でお菓子を作り、人を喜ばせたい。」
 そう話す坂本さんの今日の装いも、伝統和菓子のイメージにあるような和服や割烹着とは違い、夏らしい藍色のワンピースにスターバックスのアイスコーヒーを傍らに置いて和菓子を作るという斬新なスタイル。 動きやすさ重視で、汚れてもすぐ着替えるので、普段はエプロンを着けることもないそう。和菓子教室の日は、砂糖やボール、麺棒など、多くて20人分の材料を一人で運ぶ事もあるようだ。
「和菓子の仕事は体力勝負かも。それに、和服での作業や移動は大変だもの。」

 

 過去に行ったお茶会イベント写真にも、殆どの女性が煌びやかな着物で映っている中、たった一人坂本さんだけが白いブラウスにジーパン姿で、逆に目立っていたのが印象的だった。本人曰く、あくまで主役は“お菓子”であって自身の服装(特に裏方仕事の場合)は、かなり優先度が下がるとのこと。

 

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 これほど、自身のスタイルが確立されている坂本さんも、現在のように活動できるようになるには長い模索期間があったようだ。

 

 栃木県宇都宮市で生まれ育った坂本さんのご実家は、大正初期に建てられた教科書に出てきそうな日本家屋で、現在では日本料理屋として使われているそう。幼い頃からずっと食文化に興味があった坂本さんは東京の大学で社会学を専攻し、陶芸部へ入部。卒業後、モバイルコンテンツを扱うIT企業に入社し、仕事をしながら土日に写真学校や料理学校に通い、またカラーコーディネーター、フードコーディネーターの勉強をするなど領域を広めた。その後、日本最大の料理レシピサービス“クックパッド”へ転職。さらにABCクッキングスタジオの業務を手伝うなど、少しずつ和菓子へ繋がる道を選択していった。特に、ル・コルドン・ブルーでフランス料理を学んだ際は、異文化の料理を一から学ぶ事で逆に原点に戻る気持ちが芽生え、日本文化への興味が一層高まったのだそうだ。
 そんな坂本さんが本格的に和菓子に目覚めたきっかけは、28歳の誕生日頃に和菓子が夢に出てきたからというから驚きだ。

 

 

■プロフィール
坂本 紫穂(さかもとしほ)
紫をん(Shiwon)https://www.facebook.com/wagashi.shiwon
1982年生まれ。和菓子作家。
茶席での菓子を中心に、オーダーメードの和菓子を作品として制作。都内を中心に和菓子教室や和菓子作りのワークショップも行う。
2013年・・・映画「利休にたずねよ」公式タイアップ茶会(和菓子監修)
2014年・・・COREDO室町 オープニング特別展示/粋な茶会in橋楽亭(和菓子監修)
2014年・・・漫画『へうげもの』ORIBET-TEA 400 ~没後四百年・古田織部を偲んで~茶会(和菓子監修)
2015年・・・パークホテル東京(汐留)アフタヌーンティー・スイーツ(プロデュース)

 

撮影協力:「CrossKitchen」 http://www.crosskitchen.jp/

 

(文・吉井美生 写真・西原樹里)