- 2015.02.23
丸の内《早矢仕掛け》
やすこなオムライス 第二回
二月下旬、寒さも厳しくなって、先日には都内で雪も舞ったほどだった。春はまだかと待ちわびるが、当分この寒さにまだ悩まされそうだと痛感した。
さて、二回目を迎えるやすこなオムライスだが、今回は高層ビルが軒を連ねる、サラリーマン、OLの街、丸の内を訪れた。午前11時ともなれば、今日も一日頑張ろうと意気込む働き盛りの方々が意気揚々と歩いていた。
丸の内仲通りは、通称『丸の内ストリートギャラリー』と呼ばれる、パブリックアートの宝庫である。有楽町駅から足を進めると、うまく間隔を置いてアートの数々をお目にかかることができる。
丸の内には最近よく通っているが、一番気に入っているのが丸の内ブリックスクエアの中庭だ。秘密の花園という言葉がまさにふさわしいような、ビル群に囲まれたその箱庭は、春には気高いバラたちが咲き乱れて、まさに圧巻の一言である。あいにく今は冬なので、バラを見ることはできなかったが、代わりにいつもは気に留めないアートの数々をゆっくり見ることができた。
ブリックスクエアを出ると、まっすぐに立つ威圧感がある像の出迎えを受ける。これはイタリアの彫刻家であるジュリアーノ・ヴァンジの「追憶」という作品である。最初は追憶といわれてもピンと来なかったが、よくよく側面からも見ると、手の作りが左右で違う。向かって右は片手がそのまま添えてあり、左は両手を組んでいるのである。自分を抱きしめることで、何かを懐かしみ、憂いているのではないか、とぼんやり思った。
行く先になんだか見た感じ小さいが、一風変わった作品があった。なんだか見たことがあるような、ないようなフォルムだと思いきや、こちら、草間彌生の作品だった。「われは南瓜」という、草間彌生の水玉もしっかりと施されている、かわいい作品である。これは、草間彌生初の石彫作品らしく、その思い入れが、動画でも紹介されていた。穴が開いた南瓜は、なんだか見慣れないような、でも見たことがあるような、不思議な既視感をよみがえらせるものだった。
そのまま仲通りを進んでいくと、向かいにシマウマの像が見えてきた。GARBというカフェのちょうど向かいに位置しているこの像は、思わず「お手!」といいたくなるほど愛くるしかった。安藤泉の「G-proportion」というこの像は、丸の内を行き交う人々に一番目に留まりやすいことだろう。
丸ビルを通り越し、新丸ビルに差し掛かるころ、小さな音楽隊が迎えてくれた。もちろん、オブジェである。中野滋の「路上の楽隊」は、1986年、私が生まれる前の作品のようだ。一見ありそうでないような楽器たちが表情豊かに彫られていて、今にも軽快なリズムが聞こえてきそうだった。
ストリートギャラリーは、天高く仰いでいる、網屋千秋の「はばたく」という作品でピリオドが打たれる。今にも飛びだちそうな鶴のような像は、なんだか気分を高揚とさせてくれた。
お腹に不在票が届きそうな感覚に気づけば、時刻は12時を回っていた。急ぎ昼食へ向かった。今回お邪魔したのは「M&C Café」。あの有名な丸善の中にあるカフェである。ハヤシライスの名づけ親といわれている丸善系列のレストランである。お目当ては、名物早矢仕ルーがかかったオムライスだ。
お昼時真っ最中だったので、少し待って店内へ。周りはサラリーマンが圧倒的に多く、皆おいしそうに早矢仕ライスやカレーを頬張っていた。
選んだのはもちろん早矢仕掛けオムライス。まだかまだかと待っていると、意外と早く出てきて、お腹が盛大なハーモニーを奏でずに済んだ。
出てきたオムライスは、四方を早矢仕ルーで埋め尽くされていて、卵はとろとろという見るからにおいしそうなものだ。中が白米なのは、早矢仕ルーにより合わせるためだろうとひとり納得して、我慢できずにパクリ。うむ、家では到底まねできない濃厚な早矢仕ルーと、とろとろ卵、合わないわけがない。早矢仕ルーが残らないよう、しかも最後も存分に味わえるように食べたかったが、そんな計算も虚しく夢中でバクバク食べてしまった。しかし、そんな心配も過ぎたもので、最後までしっかり早矢仕ルーが味わえるほどたくさん、これでもかとばかりにかかっていたので、杞憂だったな、と食べ終わってひとり思った。
皇居、東京駅も傍目にとらえることのできるオフィス街、丸の内。忙しく働く人々の心の支えとなるようにか、仲通りにはベンチも多く設置されており、コーヒーを片手に一息ついている人も目に留まった。ある意味、彼らにとってはオアシスなのかもしれない。暖かくなれば、より栄えて賑やかになることだろう。
ごちそうさまでした。
※敬称略
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