2015.02.05

日比谷公園《2色掛け》

やすこなオムライス 第一回

 

 1月27日、昨晩から冷たく降り注いだ雨も、朝方には上がって、いい小春日和となった。

 

 毎回、東京都内にどことなく置かれているアートとおいしいオムライスを紹介する「やすこなオムライス」、初回を飾るのは日比谷公園内にあるパブリックアートと老舗洋食「松本楼」である。

 
 

 正面に帝国ホテルを迎える日比谷門から園内に入ると、まずは大噴水が迎えてくれる。日比谷公園の象徴ともされる大きな噴水である。

 

 そこからぐるっと園内をぶらぶら歩いてみると、いたるところに芸術が隠されていることを初めて知った。子供のころは遊具にばかり気を取られていて、まったく気に留まらなかったので、新しい日比谷公園が垣間見えたことで、少なからず新鮮な気持ちにさせられた。

 

 まずは松本楼そばにある埴輪像、これは説明文によると宮崎平和公園から送られたものらしい。埴輪は2体あるらしいのだが、どう見ても1体しかなく、謎は深まるばかりだった。

 

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 入り口付近に置かれている大きな石、これはスカンジナビア碑銘鐸というものである。北極航路開通20周年を記念して送られたもので、スカンジナビアの古代バイキングの北欧文字碑を模したものらしい。飾りとして置かれている石と比べて、かなり大きく、迫力にびっくりしてしまった。

 

 日比谷公園内には、大小問わず多くの噴水がある。鷺の口から水が出ているものは子供たちを惹きつけるだろうし、大噴水は見るものすべてを圧倒させる。
 その中でも、芸術品として名高いのが鶴の噴水である。これは日本の公園内の噴水としては3番目に古いもので、東京美術学校(現在の東京芸術大学)時代の津田信夫、岡崎雪声に依頼制作したものらしい。津田信夫といえば、日本橋の装飾などを手掛け、パリ万国博覧会では日本代表として審査員を務めた大物である。また、岡崎雪声は鋳金の第一人者と呼んでも過言ではない、鋳金のエキスパートである。その二人の共同合作となると、もっと近くで眺めてみたくなったが、如何せん貯水が邪魔して、仕方なく遠くからじっくりと見せてもらった。

 

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 そうしてまた少し歩くと、なんだか小さな噴水のような像が見えたので、近づいてみた。そこは馬の水飲み場と呼ばれる、その名の通りかつて馬がのどを潤しただろう場所だった。説明文によると、明治時代の交通で重要な役割を果たした馬が使用したものだそうだ。確かに、人が使用するには難しそうな水飲み場である。当時は4つ飲み口があったであろうそれは、今では老朽化して2つしか口がない。しかし、立派な彫刻が施されていて、当時馬が水を飲んでいた姿を想像してみると、実にほほえましい。

 

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 ここまでぐるっと日比谷公園を回ったところで、中心部にある日比谷松本楼に戻ってきた。小腹どころか大腹が空いたので、お目当ての松本楼に足を運び、行列に並んだ。時刻は12時過ぎ、ちょうどマダムやサラリーマンが優雅なランチをする時間である。人気のテラス席を待つ余裕はお腹になかったので、店内でオムレツライス2色ソース掛けを頼んだ。周りで楽しそうに食事している人たちを横目で見ながら、早く早くと料理を待つ。そうして出てきたオムライスは、見るからに卵はとろとろで、2種類のソースのどちらもおいしそうだ。まずはソースにつけずに卵とチキンライスだけを一口ばくり。うん。おいしくないわけがない。大変おいしい。すごくおいしい。ソースもからめるとものすごくおいしい。

 

 あっという間に平らげて、まだ並んでいる人たちに心の中でエールを送り、店を後にした。

 

 都会でありながらそう思わせないほど閑静なその公園は、しかしどこか東京らしさを感じさせた。アートも見れたし、満腹でもあるし、今日はいい気持ちでいられそうだ。

 

 ごちそうさまでした。

 

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※敬称略