2016.07.20

花巻×賢治 ②地域の魅力を探る

地域の魅力を探る

 

 

前半では主に宮沢賢治の心象風景のことを綴ったが、後半では岩手の魅力を紹介しようと思う。

 

その1.美味しい水
花巻の水は美味しい。水道水特有の臭みがなくまろやかだ。山に囲まれているため、花巻市周辺には有名な採水地も多い。宮沢賢治記念館の駐車場では、地元天然水を使った飲料などを販売する「いわて地産地消自動販売機」なるものも発見した。これは、水に自信があるからこそできることだろう。
そして、水が美味しいということは料理も美味しい。

 
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その2.地元の味
宮沢賢治記念館の隣りには、なんと「注文の多い料理店」でおなじみの「山猫軒」が存在する。オーナーは山猫ではなく人間だが、佇まいは物語そのもの。そして店内では美味しい郷土料理が提供されている。
こちらは岩手の郷土料理、すいとんがメインの「山猫すいとんセット」。東北独特の少し濃い醤油の味つけが美味しい。嬉しいことに、お味噌の焼きおにぎりまでついている。

 
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そして、小岩井農場では獲れたての卵と作りたてのチーズを使ったオムライスをいただいた。東京にもオムライスの名店はいくつもあるが、こんなに“新鮮な”オムライスを食べたのは初めてだった。普通、“新鮮”は野菜や魚の鮮度を表すが、あえてここではオムライス自体が新鮮であると伝えたい。新幹線に乗って食べに来る価値のある一品だった。

 
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その3.たくさんの温泉
宮沢賢治も愛した花巻温泉郷。花巻には、なんと12もの温泉地が存在する。賢治ツアーの道のりは坂道や階段も多いが、温泉で1日の疲れを癒すことができる。市内には長期滞在ができる湯治宿もあるので、温泉を目的に足を運ぶ旅も魅力的である。

 

その4.職人の技術
岩手の土産店ではだいたいどこに行っても南部鉄器の鉄瓶や急須が販売されている。せっかくなので岩鋳鉄器館にて工場を見学させていただいた。作業場では職人たちが黙々と鉄器造りをしている。独特の匂いや、職人が何度も座って擦り切れて真っ黒になった座布団が印象に残った。
手仕事で作られた鉄瓶は一つにつき平均数万円の値が付いている。家電が一つ買えるくらいの値段だ。しかし、擦り切れた真っ黒な座布団と職人の方たちのゴツゴツした手を見た後は、その値段にも納得する。コンピューターやロボットが人に代わり何でも作れるようになってきた現代だが、きっと職人たちの手に勝る機械はこの先も登場しないだろう。

 
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その5.宮沢賢治への愛
前半でも述べたように、花巻市内を歩くと宮沢賢治の世界観が色々なところに散りばめられている。例えば、旅館に置いてあった南部鉄器のランプシェードも宮沢賢治と星空がモチーフになっていた。「ほしめぐりのうた」は取材中のBGMのように各所で耳にした。

 
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最もインパクトが大きかったのは、花巻駅の擁壁に描かれた巨大な「銀河鉄道の夜」の絵だ。ブラックライトを照射すると浮かび上がる、特殊な塗料で描かれている。駅に向かう道の途中で突然現れたのでびっくりした。花巻駅を通勤に利用している人の中には、毎晩この巨大な銀河鉄道を見ながら帰宅する人もいるのだろう。
宮沢賢治の世界は、花巻に住む人々の生活の中に溶け込んでいるようだ。

 

 

おわりに

岩手県は東日本大震災の被災地でもある。現在は復興が進んでいるように見えるが、地元の新聞にはまだ復興に関するニュースが毎日のように掲載され続けている。また、偶然にも宮沢賢治が生まれた年と亡くなった年には、三陸地方で大震災が起こっている。
宮沢賢治が愛し作品に描いた「自然」は、穏やかに私たちを包み込んでくれるものばかりではない。時に自然は人間には超えられない力をもって、私たちの生活を呑み込んでしまうこともある。彼はそういった自然の側面も包み隠さず描写した。
賢治の作品も、食べ物も水も伝統工芸も、すべて自然と共にある。彼の作品から学ぶことは多いが、その一つに「奢らないこと」がある。代表作的な詩「雨ニモマケズ」からも、その精神を読み取ることができる。
自然に対しても人に対しても奢らない。
彼の亡き後も、イーハトーブの地にはあらゆるものに対する畏敬の念が感じられた。

 
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山猫軒
http://www.yamanekoken.jp

 

岩鋳鉄器館
http://iwachu.co.jp/demo/museum