2015.02.13

彼女が微笑むだけで、僕は天にも昇る気分になるんだ(後編)

コンパス[第2回]

 

恋は不思議だ。彼女が僕の机でコンパスを使っているのをぼんやり眺めているとそれが踊り出すし、彼女と遊歩道を行けば、花の開く音さえ聞こえてくるようだ。

 

彼女といると、なんでもうまくいきそうに思えるんだ。
彼女といると、なんでもうまくいきそうに思えるんだ。

 

ただ僕は新しい仕事が軌道にのりはじめていて、なかなか時間が自由にならず、彼女はきちんとカメラを扱えるようになりたいと休日はカメラと二人で過ごしていた。それに彼女のバイト先の小さなレコード会社はヒットが出て忙しそうだった。

 

僕らは「恋人のような」関係だった。だからというわけではないだろうが、彼女にはいつも他の男の影がちらついていた。彼女に出会ったのは、幽霊たちが住んでいる地元のバーだった。踏切を鋏んで、僕と彼女の家は歩いてそれぞれ7分程のところだった。その中間にその「お化けバー」あった。一人でそのバーにいくと、「この前彼女、男と来ていたよ」とお化けに耳元で囁かれたのは一度や二度ではない。

 

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僕らは時々、行動を共にするだろう。
そしてその時間は至福の時となる。
でも止まない雨や明けない夜がないように、
それもいつか終わる。

 

そして、その先に何が待っているのかは誰も知らない。
だって、彼女の魂には少し傷がついているから。

 

でも今は、その未来さえ祝福したいほど僕は彼女に恋してる。
だって彼女が微笑むだけで、僕は天にも昇る気分になるんだから。

 

そうして表参道の天をあおぐと、そこには光の春があった。

 

(文・久保田雄城/写真・塩見徹)
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