2018.06.15

セーラー服と女学生

セーラー服と女学生 〜イラストと服飾資料で解き明かす、その秘密〜
 

2018年5月31日(木) 紗矢
 

しとしとと梅雨の足音が聞こえてくる、そんな日に、東京都文京区にある弥生美術館で開催されている展覧会、『セーラー服と女学生』を訪れました。
 


 

みなさんは、なぜ水兵服であったセーラー服が、学生、それも女学生の制服として定着をしたのか不思議に思いませんか? この『セーラー服と女学生』では、そんな日本独特の発展を遂げた「セーラー服=女学生」という考えを、イラストと服飾資料で解き明かす展覧会となっています。
 

展覧会は1階と2階部分に分かれ、1階は歴史資料と昭和時代の作家たちの作品、2階は近現代のイラストレーターの作品などが展示されています。
 

わくわくとした気持ちを胸に、まずは、1階部分へと足を運びました。
 

  • 深谷美保子 作品
  • 蕗谷虹児 作品

 

まず目に入るのは、昭和時代に描かれた女学生たちのイラストです。作家ごとに絵の雰囲気は異なりますが、登場する女学生はすべてセーラー服を着ています。この頃からセーラー服が女学生のシンボルとして定着していたようです。
 

また、セーラー服が女学校の制服として定着した頃、女学生たちのブームは少女雑誌を読むことでした。この展覧会では、そんな当時の女学生たちが愛読していた少女雑誌も展示されています。
 

中原淳一 作品

 

どの作家も、思春期に差し掛かる少女たちを美しく、可憐に表現しているのがわかります。今の少女たちが、ネットや雑誌で憧れの芸能人を眺めるように、当時の女学生たちは、このような雑誌を見て流行や理想を追っていたのでしょうか。
 

それにしても、セーラー服を着ているだけで女学生だとわかるのはとても便利ですね。描かれている女学生の服が私服だったら、受けるイメージや年齢が全く違っていたのだろうと思うと不思議な気がします。
どうして日本で、ここまで「セーラー服=女学生」というイメージが定着したのでしょうか?
 

次のコーナーでは、そんな日本独特のセーラー服文化が生まれるきっかけとなった、「セーラー服の歴史」が紹介されています。
 


 

和装文化の日本で、洋服であるセーラー服がどうやって女学生に受け入れられ、現代まで生き残ったのかなどが解説されています。
 

ほかにも、セーラー服が制服になる前は私服として着られていた……などの豆知識も多く、セーラー服を着ていた人はもちろん、着ていなかった人でも楽しめる内容です。
 

左から) 金城学院 福岡女学院(冬服) 福岡女学院(夏服) 平成女学院(昔の制服のレプリカ)

 

さらに、日本で初めて制服として導入されたとされる学校のセーラー服の見本も展示されていました。初期からブルーの爽やかなセーラー服が登場していたのには驚きました。
1階の展示さえ見ればセーラー服博士になれるような、充実した内容です。
 

さて、セーラー服の歴史にどっぷりと浸かったら、2階部分を見に行きましょう。2階は1階の歴史的な雰囲気とは変わり、ポップなイラストが多い近現代の展示となっています。
 

江津匡士 作品

 

イラストレーターである森伸之、江津匡士、中村佑介、各氏の作品の他、セーラームーンのイラストも展示されています。さらに、イラストの誕生秘話など、ここでしか見られない各イラストレーターとの対談もパネルで紹介されていて、これは必見です。
 

  • 森伸之 作品 ©森 伸之
  • 中村佑介 作品

 

例えば、森伸之はセーラー服の観察歴が40年もあるらしく、その並々ならぬ情熱が語られています。
また、中村佑介のコーナーでは、なぜセーラー服の少女を描き続けているのか、描く際のこだわり、あのポップで独特な世界観はこうして生まれたなど、イラスト制作の裏側を覗くこともできます。
 

©Naoko Takeuchi

 

セーラームーンファンに嬉しい、漫画家、武内直子のコーナーもあります。貴重な原画が見られる、またとない機会です。これを目当てで訪れる方も多いのではないでしょうか。対談パネルを読めば「あの制服のモデルはどこ?」などの情報も知ることができますよ。
 

このほか、珍しいリボンの結び方なども展示されています。セーラー服という決められた形の中で、唯一自由に形を変えられるリボンは、個性を表現できる箇所ですが、まさかここまで……という複雑な結び方も紹介されています。「どうにかおしゃれに着こなしたい!」という女学生の熱意は今も昔も変わらないようです。
 

また、ぜひ見てもらいたいのが、展覧会に訪れた人たちの感想コーナーです。
 


 

ノートには、「私の学校はこうだった!」という情報や「懐かしくて昔を思い出した……」など、訪れたみなさんの感想がつづられています。「この展覧会を見て、ほかの人はどんな思いを抱いたのだろう?」と思ったらぜひ、このノートを開いてみてください。
 

ミュージアムショップでは、女学生が描かれたポストカードや関連書籍・雑貨も販売されています。展覧会の思い出にいかがでしょうか?
 


 

 

ちなみに、私はセーラー服を制服として着用していました。現在は、古臭いなどの理由から制服をブレザーに変える学校も多く、セーラー服を制服として導入している学校は昔に比べ少なくなっているようです。
 

しかしそんな中、セーラー服に魅力を感じ、私服学校なのに個人でセーラー服を購入・着用する女学生が現れています。
 

貴重になってきたからこそ、セーラー服が女学生の一つのブランドとして確立され、一層注目を集めているのだとこの展覧会を見て思いました。レトロブームならぬ、セーラー服ブームが始まるのも時間の問題かもしれません。
 
 


 

セーラー服と女学生 〜イラストと服飾資料で解き明かす、その秘密〜
会 期:2018年3月29日(木)〜6月24日(日)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館し、翌日休館)
時 間:10:00〜17:00(最終入館は16:30)
会 場:弥生美術館(東京都文京区弥生2-4-3)
入館料:一般900円、大・高生800円、中・小生400円(2館併せて観覧できます)
http://www.yayoi-yumeji-museum.jp/