2018.02.19

みんなのうたの世界展

2018年1月26日(金)渡邉 理絵
 

─ 思い出が深まる場所 ─
 

子供の頃見たテレビや聞いた歌はとても印象に残っていませんか。
1961年から現在まで続くNHK「みんなのうた」はきっと多くの人の心に刻まれていると思います。杉並アニメーションミュージアムでは日本のアニメ100周年展Part2として、「みんなのうたの世界展」を開催しています。懐かしい曲の映像が見られるほか、撮影に使われていた美術や小道具などの資料、作家や歌手の紹介など、「みんなのうた」の歴史を辿りながら楽しめる企画展です。
 


 

子供の頃は誰が歌っているのかあまり気にしていなかったですが、気にしてみると有名な歌手やタレントも「みんなのうた」に参加していたり、最近ではアイドルやミュージカル俳優も参加するようになったりと、多彩に広がってきた歌の世界も知ることができます。
たとえば「北風小僧の寒太郎」は誰が歌っているかご存知でしょうか?
 

「北風小僧の寒太郎」©NHK/月岡貞夫

 

実は堺正章さんの歌(1974年)と、北島三郎さんの歌(1981年)の二つのバージョンがあるのです。1974年版も1980年代に何度も再放送されているようなので、1980年代に自分が子供の頃聴いていたのはどっちだったのだろうと興味がわきました。ミュージアム内のシアターでは1974版が上映されていますので是非聴いてみてください。
 

歴代の歌の中で強く印象に残っているのは「メトロポリタン美術館」(1984年)と「山口さんちのツトム君」(1976年)です。いずれも初回放送の年から想像するに再放送を見ていたのだと思うのですが同年代の方にはきっと共感していただけると思います。
 

大貫妙子さんが歌う「メトロポリタン美術館」。イマジネーション溢れるアニメーションの世界観は、子供ながら強く惹きつけられたのを覚えています。大人になって本物のニューヨークのメトロポリタン美術館に訪れた時に、不思議と初めての体験に感じなかったのはこの曲が頭の中を流れていたからだと思います。暗い美術館の中で天使やミイラが動き出すちょっと怖いながらワクワクする描写と、天使に靴下を貸してあげようとしたり、バイオリンのケースをトランクにしたり、ちょっと不思議な「タイムトラベル」をするかわいらしい描写がとても好きでした。アニメーションを担当した岡本忠成さんの制作した実物のセットが展示されていたのには興奮しました。歌の最後で女の子が絵の中に入ってしまうのですが、改めてアニメーションを見てみてそれがエドガー・ドガの《ダンス教室》という絵だということに気が付き、子供の頃には気が付かなかった新たな曲の魅力を感じました。こちらもミュージアムのシアターで上映されています。
 

「メトロポリタン美術館」©NHK/岡本忠成

 

「山口さんちのツトム君」も大ヒットしたので誰もが知っている曲かもしれません。ツトム君のことを「このごろ少し変よ どうしたのかナ」と心配する少女の乙女心がかわいらしいですよね。この女の子がユミちゃんという名前だということを初めて知りました。また歌っていたのは当時東京放送合唱団のメンバーだったという川橋啓史くんとのこと。男の子だったんですね。子供の頃はただ流して聞いていた曲の色々な側面を知ることができるのも今回の展示の魅力の一つです。
 

「山口さんちのツトム君」©NHK/田中ケイコ

 

また、田中ケイコさんが制作した「山口さんちのツトム君」のアニメーションの世界をパネルで楽しめる撮影コーナーもあります。カップルにもピッタリの写真の背景になりそうです。すぐそばには子供が大好きな「おしりかじり虫」の特大人形とパネルもありました。
 

「おしりかじり虫」©NHK/うるまでるび

 

そして歌と共にもう一つ、時代を越えて多くの人の心に刻まれているのはオープニングのタイトルバックかもしれません。「ララララー」というコーラスから始まり「みんなのうたです」とタイトルコールが入り、タイトル文字と絵がでてくるオープニングです。実はこのタイトルコールを現在担当しているのは映画「となりのトトロ」の主題歌などで有名な井上あずみさんだとNHKの担当の方に教えていただき、また聴くのが楽しみになりました。また、絵のほうは若林佳子さんの押し花の動物たちが使われています。テレビで「みんなのうた」を観ている時にその絵がかわいいなぁと気になっていたのですが、若林さんに焦点を当てたコーナーもあり、じっくりと間近で見ることができました。押し花特有の茶色と薄いピンクの色合いにシックな落ち着きがあり、それでいてかわいらしくとても素敵でした。タイトルバックのアニメーションから飛び出して、一つ一つ額装された動物たちを見ていたら今にも動き出しそうな気がしてきました。昔からずっと変わっていないタイトルロゴの存在もなんだか嬉しいですね。
 

 

©NHK/若林佳子

 

杉並アニメーションミュージアムは、常設でアフレコ体験や色付けに挑戦できるなど、子供はもちろん、大人も童心に返って楽しめる場所です。今回の企画展「みんなのうたの世界展」もまた子供も大人も癒されるものとなっています。童心に返ったり、ノスタルジーを感じたりするだけでなく、制作の裏側を知ったり、思いがけない発見や気付きもあり、思い出が一層深まること間違いありません。
 
 


 
<日本のアニメ100周年展Part2> みんなのうたの世界展
会 期:2018年1月18日(木)~3月25日(日)
会 場:杉並アニメーションミュージアム
時 間:10:00~18:00(入館は17:30まで。企画展最終日は16:00閉館)
休館日:月曜日(祝祭日の場合はその翌日)
入場料:無料
http://sam.or.jp/kikaku/