2018.02.01

百段雛まつり 近江・美濃・飛騨 ひな紀行

2018年1月18日(木)佐藤 愛美
 

─わたしのおひなさま─
 

一足早くお雛様を見に行こう。
 

目黒区にあるホテル雅叙園東京で3月11日まで開催される「百段雛まつり 近江・美濃・飛騨 ひな紀行」。第9回目となる今回は、岐阜県と滋賀県から集まった約500体のお雛様が展示されている。
桃の花が咲くにはまだ早い時期ではあるが、春を迎える前にたくさんのお雛様を見ることができるのは、ちょっと特別な体験のようで嬉しい。
 


 

会場のホテル雅叙園東京内にある「百段階段」は、東京都指定の有形文化財である。ケヤキ板を使用した階段は、名前の通り100段……ではなく99段。この理由は、「奇数は陽数で縁起がいいから」や「完璧な数より発展性のある数が日本の美学」など諸説あるとのこと。
 


 

この長い階段の途中には、7つの和室があり、料亭として開業した昭和の頃には、多くの客人が宴会を楽しんだそうだ。それぞれの部屋が異なる趣を持ち、訪れる人の目を惹く。柱に施された彫刻や、天井に描かれた日本画は一度足を止めて見上げてしまうほど、展示作品と同様に絢爛豪華だ。
 

今回の展覧会では、西日本の雛文化である「御殿飾り」のお雛様が多数飾られている。こちらは岐阜・飛騨高山の日下部(くさかべ)家のお雛様。御殿の中の女雛・男雛を中心に、表情豊かな人形たちが登場する。
 


 

近江名産の麻の衣装をまとった「清湖雛(せいこびな)」も印象的だ。お雛様の着物は暖色のイメージがあるが、澄んだ青色の着物も美しい。琵琶湖の色をモチーフにして制作された布であると聞き、納得した。
 


 

岐阜県群上市白鳥町にある日本土鈴館からやってきた土雛は、なんとも愛嬌のある表情をしている。土鈴館の館長である遠山さんが、白鳥町に根ざした雛まつりの文化についてお話してくださった。
「白鳥町は雪深く3月3日には桃の花が咲かないので、4月3日に雛まつりをやるんです。雛人形は、一家が代々に渡り飾ってきた特別なものです。子どもたちにとっては『わたしのおひなさま』なんですよ。顔にらくがきをして喜ぶ子どもたちもいるくらいです」
ここに飾られている雛人形たちは、地域の人々に昔から愛されてきたのだろう。遠山さんのお話を聞いて、お雛様と楽しそうに遊ぶ子どもたちの情景が思い浮かぶ。
 

星光の間では、土雛と共に土鈴のコレクションも展示されている。
 


 

当展覧会のメインビジュアルにもなっているのは、井伊家・砂千代姫伝来の古今雛。井伊直弼の七女である砂千代姫のお雛様だ。現在は長浜城歴史博物館で保管されているが、今回、特別に公開されることとなり、その美しい姿を間近で見ることができる。
そして、目を凝らして見ると、十二単にも細やかな刺繍が施されている。大切に保管されてきた雛人形を介して、作り手や持ち主の砂千代姫の気持ちが伝わってくるかのようだ。
 


 

ここまで雛人形を中心に紹介してきたが、人形以外の作品にも注目してみたい。こちらは岐阜県の井戸家の個人コレクション。普段は一般公開されていない雛人形や飾りの数々が特別に展示されている。指先ほどのお椀や、細かい細工が施された白木のお道具は、小さな女の子であれば歓声を上げておままごとに使いたくなるに違いない。
 


 

階段を99段目まで登りきると、中川政七商店の特別展示コーナーに辿り着いた。奈良で創業した中川政七商店は「日本の工芸を元気にする!」というビジョンのもと、日本各地の郷土玩具をモチーフとした「日本全国まめ郷土玩具蒐集」を販売している。
北海道から沖縄まで、全国の小さな郷土玩具が雛壇に飾られ、展覧会の最後に癒しを与えてくれる。
 


 

可愛く美しく、そして奥深いお雛様の世界。
今の私にとってお雛様は“手を触れずに、ちょっと離れた場所から眺める特別なお人形”ではあるが、幼少期は自宅に飾られている雛人形を抱っこし、髪を梳いたり烏帽子の裏側を覗いたりしていた。まさに「わたしのおひなさま」がいたことを思い出した。
 

今回見て来たたくさんの雛人形たちも、それぞれに女の子たちの遊び相手として長年愛され続けてきたのだろう。
 

 
 

mark_present
招待券をプレゼント!
本コラムの読者の皆さまに感謝を込めて、抽選で5名様に今回の「百段雛まつり 近江・美濃・飛騨 ひな紀行」の招待券をプレゼントします。メールフォームの件名を「雛まつり」として、「お名前」「メールアドレス」、内容欄に「送付先の郵便番号・住所」を明記のうえ、ご応募ください。
応募締切:2018年2月11日(日)
ご応募はこちらから!

 
 

百段雛まつり 近江・美濃・飛騨 ひな紀行
会  期:2018年1月19日(金)〜2018年3月11日(日)会期中無休
開催時間:10:00〜17:00 最終入館16:30
開催場所:ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財「百段階段」(東京都目黒区下目黒1-8-1)
アクセス:目黒駅から徒歩3分ほど
入 場 料:大人¥1,500/学生¥800※要学生証呈示/小学生以下無料
主  催:百段雛まつり展実行委員会
お問い合わせ:03-5434-3140(ホテル雅叙園東京 イベント企画)
http://www.hotelgajoen-tokyo.com/hinamatsuri/
 
※写真撮影は一部可