- 2017.12.04
キンダーブックの90年
キンダーブックの90年─童画と童謡でたどる子どもたちの世界─
2017年11月7日(木)渡邉 理絵
― 時代と共に変わるもの、変わらないもの ―
文京区の凸版印刷の建物には2つの文化施設が併設しています。音楽の演奏会やコンクールなどで使われているトッパンホール、そして、印刷の過去、現在、未来をプロローグ展示ゾーン、総合展示ゾーンに分けて多角的に展示している印刷博物館です。
その印刷博物館では10月下旬より、フレーベル館と共催で「キンダーブックの90年―童画と童謡でたどる子どもたちの世界―」という企画展が開催されています。
「キンダーブック」というのはフレーベル館から出版されている幼児向けの雑誌のことで、月間保育絵本の先駆けと言える存在です。「観察絵本キンダーブック」として1927(昭和2)年11月に創刊されました。まだ右から左に文字が書かれていた時代から刊行されていたと思うと90年という年月の重みを感じます。
左)『観察絵本キンダーブック』昭和14年7月号「ソラノ オハナシ」童話作家あまんきみこ 思い出の作品
中)『観察絵本キンダーブック』昭和33年9月号 右)『観察絵本キンダーブック』昭和37年9月号
展示では、第Ⅰ部として、まず「観察絵本キンダーブック」が生まれる前に存在していた幼年向けの雑誌から、「観察絵本キンダーブック」の誕生までが紹介されています。「キンダーブック」で多くの童画を描いた作家たちの以前からの活躍もわかります。
そして、「観察絵本キンダーブック」の誕生で興味深いのは、創刊号は二種類存在したということです。写真の通り、一つはミレーの《落ち穂拾い》の絵をモチーフにしたイラストが表紙になっています。そしてもう一つは、まったく違う絵で、大きさも違うのです。学芸員の方のお話ではなぜ二種類存在したか記録に残っていないということで、ミステリアスな部分があり気になります。もう一つのバージョンはぜひ来館して見てみて下さい。
『観察絵本キンダーブック』創刊号
次の第Ⅱ部では、「キンダーブックで見る昭和史」として、掲載されていた童画や童謡が時系列で展示されています。昭和の時代そのもの、子供たちの生活そのものを感じ取れ、「通信」「エネルギー」「乗り物」「宇宙」といったコラム展示のテーマからも当時の戦後の経済成長と科学の発展がいかに子供たちの生活や関心と密接に関係していたかがうかがい知れます。そして、90年という月日はとても長いようでもあり、大きな時代の流れの中でも変わらないものが存在するとも感じさせてくれます。
第Ⅲ部は、「表現の変遷」。吉澤廉三郎や武井武雄、いわさきちひろなど、一流の画家が描いた挿絵の原画や、印刷技術の進歩とともに生まれた写真とイラストの組み合わせなど、さまざまな表現の変遷が紹介されています。
「むぎわらのおさいく」吉澤廉三郎 画
そして、第Ⅳ部では、「私のキンダーブック時代」としてキンダーブックの制作に携わってきた作家や画家たちの制作エピソード、編集者や監修者の思い出などが紹介されています。「キンダーブック」を手に取って読めるコーナーもあるのでゆっくり堪能したいエリアです。
展示室の外にも、現在出版社から刊行され手に入れられる現代版の「キンダーブック」やフレーベル館の絵本などを手に取って読める子供向けのコーナーがあり、一緒に行った娘は展示室に入る前にそのコーナーを気に入り、なかなか離れませんでした。ここでは、自由に記念撮影もできるので来館の記念にいいですね。
印刷博物館の売店では、企画展期間中「キンダーブック」の販売もしており、私も12月号を購入しました。国旗とマークの小さな図鑑が付録でついていたり、自然や生活のことが写真とイラストで紹介されていたり、物語のページや、シールを貼って遊ぶページまであったり、一冊税込みで430円で、とてもお得な内容になっています。世の中には色々な雑誌や教材が溢れていますが、ちょうどいい量と質なのがとても気に入りました。
今回の展覧会は、展示そのものも興味深く、新しい発見もありました。お子さんのいる方や関心のある方はこの機会に印刷博物館で「キンダーブック」との出会いをぜひ体験してもらいたいです。私はきっとまた来月も「キンダーブック」を手に取ると思います。
招待券をプレゼント!
本コラムの読者の皆さまに感謝を込めて、抽選で5組10名様に本展の招待券をプレゼントします。メールフォームの件名を「キンダーブック」として、「お名前」、「メールアドレス」、「送付先の郵便番号・住所」を明記のうえ、ご応募ください。
応募締切:2017年12月10日(日)
ご応募はこちらから!
キンダーブックの90年―童画と童謡でたどる子どもたちの世界―
会 期:2017年10月21日(土)~2018年1月14日(日)
時 間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日:毎週月曜日
※ただし1月8日(月・祝)は開館。12月29日(金)~1月3日(水)、1月9日(火)は休館
会 場:TOPPAN小石川ビル内 印刷博物館 東京都文京区水道1-3-3
入場料:一般500円、学生300円、中高生200円、小学生以下無料
http://www.printing-museum.org/exhibition/temporary/171021/index.html
関連記事
-
- みんなのミュシャ 2019.07.25
-
- information or inspiration? 2019.05.13
-
- 鈴木敏夫とジブリ展 2019.05.08
-
- “着る” アフリカ展 2019.03.08