2017.10.16

きいちのぬりえ・きせかえ原画展

きいちのぬりえ・きせかえ原画展 〜精緻なきいちの手仕事の世界〜
 

2017年9月22日(金)渡邉 理絵
 

─ 憧れと思い出を乗せて ─
 

都電に乗り、のんびり車窓を眺めながら向かった先に、レトロで愛らしい女の子が色鮮やかに描かれた扉がありました。世界初のぬりえ専門美術館で、昭和のぬりえ作家である蔦谷喜一の作品を主に保存展示する、今年開館15周年を迎えた「ぬりえ美術館」です。
 

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そのドアを開けるとすぐに、手ぬぐいやお人形など、ぬりえとコラボしたグッズが展示してありました。自分の思い出の中にあるわけではないのにノスタルジーを感じてしまう不思議な空間です。
 

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そして次にあるのは月替わりの展示スペースです。訪れたときには「おめかしして出かけましょう」をテーマにした作品が数点展示されていました。
 

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ぬりえというと、冊子になったキャラクターのものが思い浮かびますが、喜一さんのぬりえはA5判ほどの小さな一枚刷りのぬりえです。戦前はバラ売りされていたものが、戦後に色付けされた絵の表紙の袋に数枚入れられたセットが主流となり「きいちのぬりえ」と呼ばれ大人気となりました。今でも当時の復刻版が販売されています。
 

下絵を描いていた頃のものは原画が残っているそうですが、亜鉛版(ジンク版)に直接描いて印刷していた時代のものは、何回か刷った後に版が磨り減るため破棄されてしまい、原画も残っていないそうです。ただ、冊子になっていなかったことで、流通した商品が一枚だけでも残っていることがあり、額に入れて展示することができたそうです。美術館では原画だけではなく、コレクターの方から寄贈されたものも多くあります。開館当時から比べてかなり作品数が増えたそうです。保存することも大変ですが、収集の大変さや意義を強く感じました。
 

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©きいち/小学館

 

奥のメインの展示室へ進むと今回の「きいちのぬりえ・きせかえ原画展 〜精緻なきいちの手仕事の世界〜」と題した企画展となっており、色付けされたかわいいぬりえが沢山ありました。袋の表紙用に色付けした原画は多く残っていたそうです。女の子の好きそうなかわいいお洋服や素敵なお着物、憧れのお姫様やペットなど、当時の暮らしぶりより少し上流を意識して描かれています。きいちの少女の絵のモデルは、1930年代に世界のアイドルといわれ当時人気を博していたアメリカ人の子役シャーリー・テンプルをモデルにしていると言われています。彼女の金髪のウェーブの髪に憧れ、きいちのぬりえの少女は皆ウェーブに描かれています。
 

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©きいち/小学館

 

ぬりえの他にもう一つ、喜一さんの代表作と言えるのが「きせかえ」です。喜一さん自身「きせかえ」の作成のほうが大変だったと語っていたそうです。それもそうです。たった1ページの紙面に全てを納めなければならず、着せ替えるためには正面と後ろ姿の人物や洋服などそれぞれのサイズをぴったりにしなくてはなりません。1枚の紙の中に凝縮された喜一さんの技術とセンス、そして企画展の副題にもなっている「精緻な手仕事ぶり」がとても感動的でした。当時、正面だけのきせかえが多かったようですが、喜一さんのきせかえは正面も後ろも着せ替えることができ、そのこだわりにも「精緻な手仕事ぶり」が感じられます。
 

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©きいち/小学館

 

月替わりの展示スペースとメインの展示室の間に、中庭に面したぬりえの体験ができるカウンターがあります。ぬりえと色鉛筆が置いてあり、自由にぬりえを楽しむことができます。
5歳の息子は、最近はみ出さないように塗れるようになったこともあり、黙々と塗っていました。女の子に息吹を与えるかのようにどんどん色付け、お化粧まで施して、とても楽しんでいました。ここでは、きせかえ遊びもできるようになっています。
 

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ぬりえ美術館は、喜一さんの姪にあたる館長の金子マサさんのご自宅の敷地にあり、ほとんどお一人で切り盛りされています。今回、館長さんのご好意により休館日に特別に貴重なお話を伺うことができました。喜一さんの作品や貴重な資料がこうして残り、保存され、多くの人の目に触れる機会ができるのは、素晴らしいことです。世界のぬりえの研究もされていて、収集もされているそうです。
 

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  • 館長 金子マサさん
  • 故 蔦谷喜一さん

 

館長さんから北海道で一番ぬりえが売れたと教えていただきました。当時、東京でも雪はよく降ったそうですが、とりわけ北海道や東北など寒い雪国では室内で遊ぶ「ぬりえ」が子供にとって貴重な遊びだったのですね。最近は脳の活性化のために大人のぬりえも注目されています。子供にとっても、昔子供だった大人にとっても、これからもずっと「きいちのぬりえ」が愛されますように。
 
 

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ぬりえ美術館・ぬりえポストカード付きご招待券 5組10名様
※企画展終了後もご入館いただけます
きいちのぬりえ 袋入りぬりえ お人形(復刻版・8枚入) 1名様

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本コラムの読者の皆さまに感謝を込めて、抽選で上記各賞品をプレゼントします。

メールフォームの件名を「きいちぬりえ」として、「お名前」、「メールアドレス」、内容欄に「ご希望の賞品」と「送付先の郵便番号・住所」を明記のうえご応募ください。
★招待券とぬりえの両方ともご希望の方は1通でご応募できます。
 ※抽選は招待券とぬりえ、それぞれで行います。
 賞品の記載のない場合、受付できませんので必ず記載してください。
応募締切:2017年10月23日(月)

ご応募はこちらから!

 
 

2017年秋ポスター
 

きいちのぬりえ・きせかえ原画展 〜精緻なきいちの手仕事の世界〜
会 期:2017年8月5日(土)〜10月29日(日)
時 間:12:00〜18:00(入館は17:30まで)
    11:00〜17:00(入館は16:30まで)
休館日:月〜金(土・日・祝のみ開館)
会 場:ぬりえ美術館 荒川区町屋4-11-8
入場料:大人500円(中学生以上)小人100円(小学生)
http://www.nurie.jp/