2017.09.06

岡本太郎と遊ぶ

岡本太郎と遊ぶ PLAY with TARO
 

2017年8月9日(水)渡邉 理絵
 

─ 感じる心、考える頭、自由な精神 ─
 

岡本太郎と聞くと、まず思い出すのは何でしょうか。大阪万博の《太陽の塔》でしょうか。「芸術は爆発だ」という言葉でしょうか。勢いとパワーのある芸術家であり、心に響く言葉を発する思想家でもある岡本太郎。存命中はもちろん、没後も色褪せることなく私たちに強く訴えかけてきます。
 

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川崎市岡本太郎美術館は、岡本太郎が晩年、出身地である川崎市に作品のほとんどを寄贈したことから、彼の没後、広大で自然の豊かな生田緑地の中に建てられました。
岡本太郎の専用美術館として、彼の作品を保存し、常設展や企画展で様々な切り口から展示しており、青山のアトリエ跡地にある岡本太郎記念館と共に、岡本太郎の作品の魅力を伝える役割をしています。
 

その川崎市岡本太郎美術館では、7月から企画展「岡本太郎と遊ぶ PLAY with TARO」が開催されています。また、作品の展示と共に「字は絵だろ」と語っていた彼らしい絵のような「遊び字」も紹介されています。夏休み期間ということもあり、子供たちが学び楽しめる体験コーナーも多数用意されている楽しい企画展です。
 

まずご紹介したいのは、展示室の外の無料スペースにある《太陽の塔》や岡本太郎の等身大写真パネル。顔をハメて楽しんだり、手を繋いだように写真を撮れたりします。彫刻の椅子には座ることもできます。一緒に行った子供たちはしばらくここで過ごしていました。
 

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展示室には、吸い込まれそうなパワーのある作品の数々。黒い縁取りや原色使いが多い作風も、一つ一つの作品から心に感じるもの、心にぶつかってくるものはそれぞれ違います。「眼にふれ、手にさわる、すべてに猛烈に働きかけ、体当たりする。ひろく、積極的な人間像を自分自身につかむために。」(朝日新聞社『岡本太郎の眼』より)という岡本太郎の言葉が、まさにしっくりくる体験です。パワーを持っているのは作品そのものでも、対峙する自分自身がそのぶつかってくるものを受け止める行為は、積極的に体を張っているような、自分のパワーを試されているようなそんな感覚になるのです。
 

ph_taro_03《眼の樹》

《眼の樹》1978年 油彩・キャンパス

 

ph_taro_04_《ドラマ》

《ドラマ》1958年 油彩・キャンパス

 

ph_taro_05《海辺の肖像》

《海辺の肖像》1973年 油彩・キャンバス

 

今回、作品の制作過程とも言える、下絵(ドローイング)を展示していたことが新鮮でした。
色鮮やかな自由な形を表した作品もこうして緻密に何度も考えられて描きなおして出来上がるのだと知ることができ、芸術家の考えやアイディアを一枚の絵に収める制作の難しさと神聖さを垣間見ることができました。
 

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《犬》1954年 油彩・キャンバス

 

「遊ぶ字」のコーナーでは、字の意味が持つイメージと岡本太郎の作風とが一体となっている自由な表現に魅了され、書であり、絵であり、どちらの視点からも魅力のある作品で、とても気に入りました。
 

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漢字には六書(りくしょ)と呼ばれる分類法があります。その中に「象形」「指事」と呼ばれる造字法があるように、もともと漢字は物の形や状態を表すことができるものです。それがこうして、彩色と変形を加えると、一層不思議な力を発揮します。本人の言葉を借りれば、「字は誰でも書く。書けるものだ。書になっていようが、いなかろうが、かまわない。平気で、無条件に己をぶつけ、線を引いてみたらいい。筆と墨、あるいは無限の彩りで。紙の上に自分の全存在がひらき、夢が息づく。遊ぶ字だ。そこに、生きるよろこびがふくれあがってくる。まさに芸術。」(日本芸術出版社『遊ぶ字』より)ということなのです。
 

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《挑む》1980年 紙本着色                      《爆発》

 

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《楽》                       《驚》

 

体験コーナーでは「遊ぶ字に挑戦!」のコーナーもあり、岡本太郎の「遊ぶ字」に色を塗ったり、自分で自由に字を作ってみたりすることができます。出来上がった作品は持って帰ることもできますが、展示することもでき、挑戦した人たちの作品展示を見る楽しさもあります。
 

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他にも「さわって遊ぶ」「おと・リズムで遊ぶ」「ことばで遊ぶ」「仮面で遊ぶ」「においで遊ぶ」など色々な切り口で、詩人や漫画家、美術家や打楽器奏者など様々な作家の協力と共に、五感をフル活動させて岡本太郎の世界観を存分に楽しむことができるようになっています。
 

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左)箱の中の匂いを嗅いで感じたことを書く「においで遊ぶ」のコーナー
右)仮面をかぶってみることができる「仮面で遊ぶ」のコーナー

 

岡本太郎は「遊び」について、「『遊び』と『お遊び』とは全然違う。『遊び』は真剣な、全人間的な、つまり命のすべてをぶつけての無償の行為だ。」と言っています。今回の展覧会のテーマである「岡本太郎と遊ぶ」というのも、まさにそうです。子供たちは体験コーナーで飽きることなく色々と真剣に試していました。「あそびかたガイドマップ」も配られるので小学生なら子供だけで楽しむことができそうです。
 

高校生の頃読んだ岡本太郎の著書『今日の芸術 時代を創造するのは誰か』(光文社)はわかりやすく、かつ斬新で、目から鱗が落ちるような芸術論が書いてありました。何か霧が晴れていくような、漠然とした未来に風穴を開けてくれるような気持ちになりました。
今回の企画展は、その時の感動を思い起こすような、そして、作品に向き合う自由な精神を思い出させてくれたような気がします。
 

夏休みが終わり、これから芸術の秋が訪れます。
岡本太郎と、そして生田緑地からパワーをもらい心の充電をしてみてはどうでしょう。
今回の企画展の限定メニューがある「カフェテリアTARO」で一休みするのも一案。
駅からすぐという場所ではありませんが、そこはぜひ「挑む」気持ちで。
 

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《挑む》1980年 紙本着色                          《母の塔》

 

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《限定メニュー・プチシューのパステルパフェ》

 
 

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応募締切:2017年9月14日(木)
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会 期:2017年7月15日(土)〜10月15日(日)
時 間:9:30〜17:00(入館は16:30まで)
会 場:川崎市岡本太郎美術館 川崎市多摩区枡形7-1-5
入場料:一般900円、高校・大学生・65歳以上700円、中学生以下無料
http://www.taromuseum.jp