2017.05.23

[企画展]花*Flower*華 ─琳派から現代へ─(山種美術館)

2017年4月25日(火)渡邉 理絵

 

─ 光り輝く季節の花々 ─

 

花の美しい季節ですね。広尾の落ち着いた街中に佇む山種美術館では、「[企画展]花*Flower*華 ―琳派から現代へ―」と題した、季節の花々を四季ごとに展示する美しい企画展が開催されています。副題にある「琳派(りんぱ)」とは尾形光琳(おがたこうりん)を始めとする日本の江戸時代から近代に活躍した作家の装飾的な美術・工芸を指すもので、光琳の「琳」を取って「琳派」と呼ばれています。金箔などを使った煌びやかな作品が特徴で、西洋のクリムトやウォーホルにも影響を与えたとも言われています。

 

「琳」という字には「光り輝く美しい宝石」という意味があり、光琳は名前の通りの作風になっていたというのは不思議なことです。実は、この美しい字の意味を知り、自分の娘の名前に「琳」という字を使っているのですが、こうして「琳派」の作品をまとまって観るのは初めてということもあり、期待に胸を膨らませながら訪れました。

 

恵比寿駅から徒歩で向かう道すがら何度も美術館の案内板に出会いました。目の前に到着すると信号機に「山種美術館前」の看板があり、自然と美術館へ導かれていきます。

 
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さて、B1階にある展示室へと足を進めると、第1章から第4章まで、春夏秋冬に分かれてそれぞれの季節の花の作品43点の展示があり、また「花のユートピア」として異なる季節の花を取り合わせて春夏秋冬を描いた作品9点、そして「魅惑の華・牡丹」として牡丹の作品8点を集めた展示と分かれていますが、まず、「第2章 夏―輝く生命」から今の初夏の季節にぴったりの2つの作品をご紹介します。

 
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小林古径《菖蒲》1952(昭和27)年 紙本・彩色 山種美術館

 

入口を入ってすぐ目に入るのが、小林古径(こばやしこけい)の《菖蒲》です。古径の晩年の作品で、花の描写も美しく、古径の愛蔵品だったという古伊万里の壺や右側の壁の陰などからもこの作品の魅力が滲み出ています。描かれている花は「花菖蒲」です。タイトルは「菖蒲」なので紛らわしいのですが、「菖蒲」と「花菖蒲」は別種の植物です。

 

日本では「こどもの日」に菖蒲湯に入ったりしますが、この湯に入れるのは菖蒲。一方、花菖蒲はアヤメ科の多年草で6月頃に美しい花を咲かせることで知られます。取材に訪れた時はちょうど「こどもの日」が近く、この作品がとても強く心に響きました。

 
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小林古径《白華小禽》1935(昭和10)年 絹本・彩色 山種美術館

 

これは、古径の《白華小禽》という作品です。写真では伝えきれない絹の生地に塗られた絵の具がキラキラとした質感は、是非間近で見てほしいと思いました。使われている岩絵具は鉱物を砕いて作られるものなので、その粒子に光が当たりキラキラと光って見えているそうです。日本画は和紙や絹に描かれたものが多いのですが、裏打ち紙で支えたうえで掛け軸にされていて、間近で見る絹の織り目もまた、何とも言えない味わいがあります。

 
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酒井抱一《月梅図》19世紀(江戸時代)絹本・彩色 山種美術館

 

そして、こちらは「第4章 冬―厳寒から再び春へ」から、酒井抱一(さかいほういつ)の《月梅図》です。この作品は、今回出品作の中で唯一一般の方も撮影できる作品となっています。酒井抱一は尾形光琳から直接学んでいないものの、光琳に私淑(光琳を模範として慕い学ぶこと)した画家として、琳派を代表する絵師ともなっています。梅を好んで描き、また輪郭を描かないという画題や描法も光琳にならったものだといいます。こちらも絹に描かれて掛け軸になっており、うっすらと浮かぶ月と、力強い梅の幹、柔らかな梅の花とのコントラストがとても印象に残っています。

 

今回の展示では、花にまつわる話や花言葉などの解説もあり、花の特徴も詳しく知ることができるのが魅力の一つです。たとえば、「梅」は遣唐使によって中国からもたらされた花で、奈良時代には花見と言えば梅の花だったほど古くから日本人に愛され、大宰府に左遷された菅原道真も愛した花、との紹介がありました。花言葉は「不屈の精神」「高潔」「忠実」「気品」。自分のモットーに近い花言葉を持つ「梅」が、今まで以上に好きになりました。

 
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鈴木其一《四季花鳥図》19世紀(江戸時代)紙本金地・彩色 山種美術館

 

そして「花のユートピア」のコーナーから、いかにも琳派らしい金色の背景に様々な季節の花が描かれた鈴木其一(すずききいつ)の《四季花鳥図》をご紹介します。其一は酒井抱一の弟子で江戸琳派を継承した画家として知られています。二曲一双の作品になっており、右隻は春夏、左隻は秋冬の草花が描かれています。中央には鳥も描かれていて、一緒に行った1歳の娘が鶏の親子の部分を見つけて、「ひよこさん!」と呼びかけていました。

そして、同じ「花のユートピア」のコーナーで注目なのは、今回のチラシや図録にも使われていて、メインイメージともなっているこちらの作品。

 
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田能村直入《百花》1869(明治2)年 絹本・彩色 山種美術館  ※クリックで拡大表示

 

田能村直入の《百花》という作品で、春夏秋冬の花百種が一堂に描かれているとても美しい花卉(かき)図巻です。中国清時代の写実的な「没骨花鳥画」を勉強し、参考にしたとのこと。「没骨」とは輪郭を描かない画法です。輪郭がない分、彩色も良く見え、葉脈や花の模様がより際立って見えます。この作品もまた、実際に足を運んで見ていただきたい作品の一つです。

 

図巻の右から左に向かって春夏秋冬の季節が巡るように描かれており、春の「牡丹」、夏の「紫陽花」、秋の「桔梗」、冬の「梅」など、一見しただけでは全ての名前がわからないですが、巻末には百種の花全ての名前が記してあり、現代の図鑑のような役割もあったようです。

 
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加山又造《華扇屏風》1966(昭和41)年 絹本・彩色 山種美術館

 

一つの作品に春夏秋冬を含める画法は、日本画ではよく見られたようです。こちらの加山又造の《華扇屏風》という六曲一双の作品は、扇形の中に春夏秋冬のそれぞれの草花を描いています。

 

昭和41年作ということで比較的新しい作品なのですが、琳派の「扇散らし」という手法を意識して作られたとのこと。扇に描いた花も俵屋宗達(たわらやそうたつ)や尾形光琳の好んだモチーフが見受けられます。琳派を現代へつないでいるような作品です。

 
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 左)「薫風」  中)「Cafe 椿」  右)山種コレクション 花の絵画 名品集 Flower 塗り絵ページ画像

 

また、この美術館のカフェでは粋な計らいとして、青山の老舗菓匠「菊家」に特別にオーダーして毎回作っているという出品作品にちなんだ和菓子も楽しめます。「薫風」というネーミングの和菓子は、古径が描いた《菖蒲》の花菖をモチーフにしています。他にもいくつかあり、1階の「Cafe 椿」で楽しむことができます。作品の保護のために照明を落としてある展示室とは一転し、こちらのカフェは大きな窓から日差しの入り込む明るい雰囲気です。ミュージアムショップでは、図録に、田能村直入《百花》の塗り絵が入っていることに感激しました。作品を観るだけではなく、食べたり、自分で色を塗ったり、様々な角度から、何度も楽しめる今回の企画展。落ちついた佇まいの美術館で、光り輝くのは「季節の花々」だけではなく、訪れた人それぞれの「心」かもしれません。

 

 

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招待券をプレゼント!
本コラムの読者の皆さまに感謝を込めて、抽選で5組10名様に「花*Flower*華」の招待券をプレゼントします。メールフォームの件名を「Flower」として、「お名前」、「メールアドレス」、内容欄に「送付先の郵便番号・住所」を明記のうえ、ご応募ください。
応募締切:2017年5月26日(金)
ご応募はこちらから!

 

 
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[企画展]花*Flower*華 ─琳派から現代へ─
会 期:2017年4月22日(土)~6月18日(日)
休館日:月曜
時 間:10:00~17:00 ※入館は16:30まで
会 場:山種美術館 渋谷区広尾3-12-36
入場料:一般1000円(800円)、大高生800円(700円)、中学生以下無料
    ※( )内は20名以上の団体料金および前売り料金
http://www.yamatane-museum.jp