- 2017.02.20
和紙を楽しむおひなさま
2017年1月31日(火)渡邉 理絵
─ 表情を変える折り紙 ─
もうすぐひな祭りですね。おひなさまというと、ひな壇に並んだおひなさまを思い浮かべる人も多いと思います。今回はちょっと趣向を変えて、おりがみ会館のギャラリーで開催している「和紙を楽しむおひなさま」から、折り紙のおひなさまをご紹介します。
文京区の湯島にあるおりがみ会館は、江戸時代に襖紙屋で技術を学んだ小林幸助が、安政5年に独立開業した襖紙加工業の店の傍らで明治11年頃から始めた染紙業の店、「小林染紙店」を母体に設立されました。長年に亘って蓄積されてきた紙文化の歴史と世界中の折り紙作家の作品を展示し、折り紙を含む紙文化の振興を目的としています。
会館に入ってすぐのロビーでは、教室で実際に作る講師の作品見本がいくつか展示してあり、季節柄おひなさまの作品も並んでいます。企画展のギャラリーは右手の階段を上がった2階にあります。階段にも折り紙のおひなさまやペーパーナプキンの折り紙などが展示されていて、小さな作品の数々に目が留まり思わず足を止めました。
ギャラリーは小さな展示室ですが、小さな折り紙の作品をじっくり見るのにちょうどよい大きさで、一点一点間近に見ることができました。多種多様な和紙が使われていて、また、細やかな折り方が美しい素敵な作品がたくさん並んでいました。
中でも気に入ったのは、「つるし雛」です。色とりどりのお花やお人形などを糸で繋ぎ吊るして飾る「つるし雛」。つるし雛の名所といえば福岡県柳川市、静岡県の稲取地区、山形県酒田市が有名で、福岡では「さげもん」、静岡では「雛のつるし飾り」、山形では「傘福」と呼ばれて親しまれています。いつか実際に訪れて見てみたいと思っていた「つるし雛」がこうして折り紙でかわいらしく展示されていたので嬉しくなってしまいました。今年のひな祭りは下の子のために作ってみようと思っています。
このように、折り紙といっても平面の作品だけではなく、立体的な作品も見ることができます。正面から見ると平面でも横から見ると立体になっているものもあり、折り紙の作品の多様性が感じられます。また、「折る」という作業には子供の「教育折り紙」の域を超えた高度な芸術的な要素が詰まっていることを改めて感じさせてくれます。手本の折り方を見ながら作るのもいいですし、さらに折り方を考える楽しさもあると思います。一時期、紙を切ったり貼ったりすることで立体になるカード作りにハマっていたので、これを機に折り紙にもハマりそうな予感がします。
白一色で折ったひなを並べた作品や、金一色の折り紙と和歌でひなまつりの遊びの百人一首を表現した作品など、表現や展示方法にも様々な工夫が見られました。顔に表情は描いていないのですが、和紙の色が変わるだけでぐっと印象が変わり、まるで表情まで変わったようです。
おりがみ会館では、作品の展示だけではなく、4階にある工房を見学することができ、日本でも数少ない染め場の様子を生で見ることができます。ここでは、毎日染め師たちの手によって1枚1枚和紙が染められています。
訪れた時、染め師の方が質問に丁寧に答えてくださり、粉の染料を水で溶かして専用のハケでムラなく塗り、乾かしているところだと教えてくださいました。この作業を通常は2人で担当していて、例えばこの「青」の染料を塗って乾かすという一連の作業は、半日かけてやっているとのことでした。
3階にあるショップでは、工房で作られた手染めの和紙の折り紙や、展示作品が作れるキットが買えるほか、大きな和紙や折り方の本など、折り紙や和紙に関するものが多彩に揃っています。そして、館長の小林一夫さん自ら、おりがみの実演をしてくれることも。この日は運よく実演を見ることができ、また館長監修の折り方の本を購入したところ、その場でサインをしてくださいました。本の中にある折り方を、何も見ずにさっと折ってくれて、まるで手品を見ているかのようでした。「気軽に折るのがいいんだよ、僕なんて夢の中でも折っているよ」と仰っていて、折り紙は特別なものではなく身近なものに感じてほしいという小林さんの想いが伝わってきました。
一緒に行った上の子は今までも折り紙に興味はあったのですが、どうしてもやりたいとせがむことはありませんでした。それが、おりがみ会館から帰ってきてからは、本を開いては自分で試し、できないとなると、「これ作って」と言うようになりました。実演で見た驚きや感動が心の中で持続しているのだと思います。これからは子供向けにワークショップやイベントがあれば参加したいですし、こうした実演は見るだけでも心に響くのでまた訪れたいと思います。年に4回「おりがみ会館で1日遊ぼう!」という企画が開催されていて、幼児から大人まで申し込みをすることができます。
大人向けにもおりがみ教室が開催されています。
手先を使うので高齢者にも人気ですし、「Origami」として日本文化を知りたい外国人にも人気です。
折り紙の歴史は諸説あるようですが、日本で生まれたものがヨーロッパに伝播し、ドイツの教育学者フレーベルが幼児教材として採用したものが明治時代に逆輸入されたらしいということです。明治新政府の初代・文部大臣の森有礼がその「教育折り紙」を作るように依頼したのが、初代社長・小林幸助とのこと。やはり日本の折り紙の原点はここにありました。明治に普及した折り紙を通して、日本古来のひな祭りと和紙をぜひ楽しんでみてください。
おりがみ会館の「ぼかしおりがみ」をプレゼント!
本コラムの読者の皆さまに感謝を込めて、抽選で3名様におりがみ会館の「ぼかしおりがみ」をプレゼントします。メールフォームの件名を「おりがみ」として、「お名前」、「メールアドレス」、内容欄に「送付先の郵便番号・住所」を明記のうえ、ご応募ください。
応募締切:2017年2月28日(火)
ご応募はこちらから!
和紙を楽しむおひなさま
会 期:2017年1月11日(水)~3月4日(土)
10:00〜17:30 ※日・祝定休
主 催:お茶の水 おりがみ会館
会 場:文京区湯島1-7-14
入場料:無料
http://www.origamikaikan.co.jp/gallery/170110ohinasama/index.html
※キットはオンラインショップでも購入できます。
http://origamikaikan.co.jp/eccube/
※「おりがみ会館で1日遊ぼう!」次の開催日は3月31日(金)。要予約
http://www.origamikaikan.co.jp/reception-test/study_info.php?uid=85
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