2017.02.04

東京国際キルトフェスティバル

第16回東京国際キルトフェスティバル ―布と針と糸の祭典―

 

2017年1月19日(木)渡邉 理絵

 

― 虹の向こうの物語 ―

 

毎年、東京ドームで行われている「東京国際キルトフェスティバル」。
16回目となる今年は日本の第一線で活躍する作家の「四季 花物語」をテーマにした新作の発表や、特別展示「珠玉のガーデンキルト」としてネブラスカ大学リンカーン校IQSCM(インターナショナル・キルトスタディセンター&ミュージアム)所蔵の5000点の中から、花をモチーフにした貴重なキルトの展示や、またレオ・レオニの絵本がキルト作品になるなど、多彩な展示やイベント、キルトマーケットが開催されました。中でも今回は、特別展示「オズの魔法使い」の立体キルトを目当てに、ワクワクしながら足を運びました。

 
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「オズの魔法使い」は1900年に刊行されたアメリカの作家ライマン・フランク・ボームの児童文学作品です。子供の頃に観た、ミュージカル映画「オズの魔法使」がとても強く印象に残っています。登場人物の一人、西の悪い魔女を主人公にしたミュージカル「ウィキッド」も大人になってから何度も観てしまうほど、「オズ」の世界観は子供の心にも大人の心にも響く不思議な魅力を感じます。

 

今回、その文学や映画の世界をキルトで再現してくれたのが、日本を代表するキルト作家の鷲沢玲子さんとその教室の生徒さんたち。会場は大変盛況で混雑していましたが、「オズの魔法使い」のエリアは展示の高さもありすぐ目に入りました。

 

まずは「ドロシーの家」です。
物語の冒頭で、主人公のドロシーが竜巻に巻き込まれて家ごと飛んでしまい、アメリカのカンザスにあったはずの家が、目を覚ますとオズの国に。そんな物語のキーとなるドロシーの家。ベットカバーやクッションなどの布製品がキルトになっていたのはもちろん、家の周りに置かれた野菜や果物、散りばめられた葉っぱなどもキルトの作品になっていました。

 
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そして、もう一つ物語のキーとなっている、家の下敷きになってしまった東の悪い魔女の履いていた「魔法の靴」。映画では「ルビーの靴」としてとても目立つ赤い靴なのですが、実は原作では「銀の靴」です。演出上、映画の製作途中で色が変えられたという「魔法の靴」が、こうして新たに「ルビー」でも「銀」でもない「水色と銀色と花柄のキルト」になると、柔らかい温かみを感じます。

 
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この、「柔らかい温かみ」というのがキルトの特徴です。
「キルト(Quilt)」の語源はラテン語で「詰め物をした袋・敷物」という意味で、現在は表布・しん・裏布の3枚の布を重ねて一緒に刺し縫い(キルティング)したものが「キルト」と呼ばれています。中世のイギリスで盛んに作られ、アメリカ大陸に渡り、布をはぎ合わせて作るパッチワークキルトとして発達しました。パッチワークキルトは、三角形や四角形など小さく切った布をはぎ合わせて作るピースドキルトと、土台となる布に色々な形に切った布を縫い付け、花や鳥、風景や人物など好みのモチーフを絵画的に表現するアップリケキルトに大別されます。

 

今回、立体キルトというものを初めて見ましたが、物語の最後に出てくる、ドロシーをカンザスに帰そうした「気球」や、オズの魔法使いの住んでいた「エメラルド城」などの大型作品も、すべてキルトで作られていて、そのスケールの大きさに驚きました。また、物語に出てくる「ケシの花」や、足元の一面に散りばめられた小さなお花までも、よく見ると一つ一つがすべてキルトで作られていて、ダイナミックさと繊細さの両方に驚く展示でした。

 
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もちろん、登場人物も再現され、エメラルド城へ通じる黄色いレンガ道に立っていました。
オズの魔法使いへのお願い事を胸に一緒に旅してくれた「脳みそが欲しいかかし」、「心臓(ハート)が欲しいブリキのきこり」、「勇気が欲しいライオン」そして、ドロシーの飼い犬の「トト」のその可愛らしさに癒されました。
中でも、目にとまったのは、ライオンの首についているオズの魔法使いが授けた「勇気の勲章」です。映画の中では「勇気(courage)」と書かれた金属性の「十字の勲章」なのですが、今回はカラフルなピースドキルトで縁取られた水色のハート形に「勇気(courage)」と縫い付けてあったのです。原作のほうには勲章は出てこず、「勇気のもと」という液体が出てくるだけなので、映画の勲章をモチーフに表現したのだと思うのですが、ここにもキルトの温かさ、可愛らしさがよく出ていたと思います。子供の頃、映画を見た時に少し怖かった、緑色の顔をした「西の悪い魔女」や、魔女の手下である羽の生えた「サル」も、こうしてキルトになると、可愛らしくて、愛らしい存在に思えました。また、映画には出てこないのですが、原作のほうではドロシーを導く重要な登場人物となる「野ネズミ」や「コウノトリ」も再現されていました。

 
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印象的だったのは「エメラルド城」を再現したキルトです。
エメラルド城にはこうして大きなパッチワークキルトが使われていたのですが、一枚一枚が違う魅力的なデザイン。青や紫など色の微妙な組み合わせで、全体が「エメラルド」に見えるようになっていて、とても華やかで綺麗でした。

 

すっかり見入っていると、その場にいた製作者の一人、鷲沢玲子主宰の教室に通われている富岡さんからお話を聞くことができました。このエメラルド城のパッチワークキルトは教室で分担してそれぞれデザインを考えて作ったとのこと。また、お城の塔も一本一本担当を決め、お花も皆で分担して作ったと、色々と裏話を聞かせてもらいました。また、このキルトフェスティバルが終わった後、別の場所でこの「オズの魔法使い」の作品の一部を展示する予定があるそうです。来年の開催となり詳細はまだなので、またお知らせする機会があればと思います。

 

それにしても、この展示を見て以来、映画「オズの魔法使」の名曲「虹の彼方に(Over the Rainbow)」がずっと頭の中を巡っています。ドロシーが「虹の向こうのどこか空高くに子守歌で聞いた国がある(Somewhere over the rainbow way up high, there’s a land that I heard of once in a lullaby)」とまだ見ぬ空想の世界を思い浮かべながら歌うこの歌。「虹の向こう」という言葉は、どんなファンタジーの扉をも開ける魔法の言葉のような気がします。最後に、ドロシーが「やっぱりお家が一番(There is no place like home)」と魔法の言葉を唱えて帰ってくることからも、虹はまさに空想と現実の懸け橋の役割をしているのです。

 

1年に1回開催されている「東京国際キルトフェスティバル」も、今回はすでに終了してしまいましたが、毎年、物語の世界が再現される特別展示があるので、来年もとても楽しみです。これまでは、「ピーター・ラビット」や「ムーミン」の世界が再現されたことがありました。来年はどんな虹の向こうの物語でしょうか?

 

さらに、今年の4月26日から29日にはマーケット中心の「東京国際キルトフェスティバル〜スプリングマーケット2017〜」が東京ドームシティプリズムホールで開催されます。気に入ったものはその場で購入できますし、キルトの作品を間近で見られるいい機会なので、また足を運んでみたいと思います。
https://www.tokyo-dome.co.jp/quiltmarket/

 
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これは、今回の「東京国際キルトフェスティバル―布と針と糸の祭典―」で、「スイミー」や「あおくんときいろちゃん」で有名なレオ・レオニの絵本のページが、様々な作家さんのキルトの作品になっていた展示の一部です。隣に展示してある絵本と見比べて楽しむことができ、絵本から抜け出したかのような、キルトの優しさや温かさを感じる作品の数々に、大人も子供も楽しめました。

 

文学が映画化されたり、舞台化されたり、その作品の変化を楽しむのが好きなのですが、こうして物語が優しく柔らかい温かなキルトの世界になるのもすっかり好きになってしまいました。

 

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「第16回東京国際キルトフェスティバル―布と針と糸の祭典―」
公式トートバックをプレゼント!

 
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本コラムの読者の皆さまに感謝を込めて、抽選で1名様に今回の「第16回東京国際キルトフェスティバル―布と針と糸の祭典―」の公式トートバックをプレゼントします。
メールフォームの件名を「キルトフェスティバル」として、「お名前」、「メールアドレス」、内容欄に「送付先の郵便番号・住所」を明記のうえ、ご応募ください。
応募締切:2017年2月17日(金)
ご応募はこちらから!

 

 
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第16回東京国際キルトフェスティバル―布と針と糸の祭典―
会  期:2017年1月19日(木)〜25日(水)
主  催:東京国際キルトフェスティバル実行委員会
     (NHK、読売新聞社、東京国際キルトフェスティバル組織委員会)
後  援:外務省、経済産業省、東京都、アメリカ合衆国大使館、NHK出版、NHK文化センター
企画運営:NHKエデュケーショナル、NHKアート、東京ドーム
会  場:東京ドーム(東京都文京区後楽1-3-61)
http://www.tokyo-dome.co.jp/quilt/