2015.12.09

写真屋「monogram」

『写真で人と人を繋ぐ、町の写真屋さん』

 

2015年11月14日(土) 佐藤愛美

 
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東急東横線、学芸大学駅東口を出ると目の前には商店街が広がっています。雨天にも関わらず、地元の家族連れの方や学生さんなどたくさんの人で賑わっていました。
今回の目的地monogramは、そんな商店街から少し路地裏に入った場所にあります。クリーム色の外壁に、木の扉。まるでお洒落な雑貨屋さんのような外観なのですが、実はこちら写真屋さんなんです。
写真屋さんというと、商店街の片隅にあって、薄暗い暗室があって、一人ではちょっと入りづらい……そんなイメージを持っていたのですが、8年ほど前にできたというmonogramは誰でも気軽に扉を開けられるオープンな写真屋さんです。

 
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もともとは神戸のWEB制作・企画会社としてスタートしたmonogramは、ポラロイド社のWEBサイトの制作に携わっていたことをきっかけに、写真の分野へと進出しました。ポラロイドカメラにまつわるワークショップや写真集の制作を経て辿りついたのが「もっと色んな人が撮った写真を見てみたい!」という思いだったそうです。

 
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そういった経緯で生まれたのが、色々な人が撮った写真を集めて紹介するプロジェクト「カメラピープル」です。「カメラ好きの人のための企画だから『カメラピープル』という名前にしたんです」と教えてくださったのは、プロジェクトの代表・ミヤモトタクヤさん。

 

「WEBサイトで写真を募集したところ、多くの人からお気に入りの1枚が集まりました。応募された写真の中から心に響く写真を厳選して1冊の写真集として形に残し、同時にSNSでもカメラピープルのコミュニティを立ち上げ、たくさんの人たちから注目してもらえたんです。カメラピープルをSNSのコミュニティ名だと思っている人もいるし、写真集の名前だと思ってる人もいるし、団体名だと思ってる人もいますけど、全部カメラピープルです」

 
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最初はWEBサイトによる活動や写真集の制作がメインだったカメラピープル。多くのカメラ好きの人々と交流していく中で「自分たちが町の写真屋さんをやったらどうだろう?」と思い立ったことをきっかけに、学芸大学駅の近くに写真屋monogramを構えたのだそうです。
「年配の人にとっては写真をプリントすることは当たり前ですが、若い人にとっては写真=画像になりつつあります。最近は、デジタルばかりでフィルムカメラに触ったことがない人が多いですよね。雑貨屋さんでフィルムカメラを買ったのはいいけど、撮った後にどうしたら良いのか分からないと悩んでいる人もいます。そこで、自分たちが写真屋をやることで何か貢献できたらいいなあと思いました」

 
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実際にmonogramでは、カメラグッズや写真集の販売をしているほか、写真のプリントも行っているそうです。オリジナルのフォトフレームやレザー仕様のカメラストラップや、レンズキャップカバー、帆布のバッグなど、ちょっと特別感があって素敵です。ストラップには無料で刻印もしてもらえます。カメラ好きの人へのプレゼントにもぴったりですよね。

 
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お店の2階にはレンタルギャラリーが併設されています。
取材当日に開催されていたのは、カメラピープルの企画展『誰が何と言おうと大好きな写真展』でした。
こちらは、カメラピープルが2012年9月から始めたWEB企画の展示会。1日1枚、全国の応募写真の中から選ばれた「誰がなんと言おうと大好きな写真」がサイトにアップされます。WEBに掲載された写真を見ることができるのはたった1日限り。翌日には、もう見ることができなくなってしまうのだそうです。本当に「特別な1枚」ですね。

 
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今回、ギャラリーに展示されているのは、2015年4月から9月までの半年間にWEBで紹介された183枚です。これまでにも仙台や大阪、名古屋など全国各地の写真屋さんや雑貨店、カフェで、同シリーズの展示を行ってきたのだそうです。

 
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販売はされていませんが、「誰が何と言おうと大好きな写真」は1か月ごとに1冊の写真集として残されています。掲載された写真の作者がmonogramや展示会を訪れると、自分のページにメッセージを書き残すのが恒例になっているそうです。

 

「応募の倍率はだいたいいつも5~6倍。選ぶのも悩みます。ご応募いただく写真はさまざま。技術的な視点で見るとピントがズレていたり、違和感のある構図、色が綺麗に出ていなかったり……そういった意味では『上手な写真』ではないのかもしれないけど、それよりも、シャッターを切った瞬間にその人が感じていた思い入れの強さみたいなものに惹かれます」と展示写真を見渡しながら語るミヤモトさん。
上手い写真ではないけれど、誰が何と言おうと大好きな写真。

 

プリプリして美味しそうないちごのアップ
あの日、動物園で見た一匹のシロクマ
妹が生まれる前の日に「お母さんのお腹の中ごっこ」をしている子どもたち

 
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これってなんの写真なの?と一瞬足を止め、写真に添えられた撮影者のコメントを見て「ああなるほど、そういう写真なのか」とシャッターを切った瞬間の特別な思いに触れる。そんな体験が183枚分できる企画展です。共感するもの、思わず吹き出すようなもの、撮影者によって添えられたコメントを読んでさらに「何の写真?」と謎が深まるもの。
1枚1枚の写真が、一遍の小説のように被写体と撮影者のストーリーを語りかけてくるようでした。

 

また、今回の展示作品とは異なりますが「誰が何と言おうと大好きな写真」という写真集も3巻目まで販売されていました。

 
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カメラピープルが過去に発行した写真集のほとんどは非売品となっていますが、ギャラリーの本棚にはこれまでに作られた写真集がこんなにたくさん!1冊ずつ手に取り、窓際の椅子に掛けてゆっくりと眺めれば、素敵な時間が過ごせそうです。
また、都道府県ごとに好きな写真を募集したシリーズは、なんと47都道府県分すべて揃っています。自分の出身県の写真集を手に取り、郷愁に浸ってみてはいかがでしょう。

 
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カメラピープルに応募される写真は、デジタルカメラだけでなく、フィルムカメラで撮影されたものやスマートフォンで撮影されたものもあります。
「どんなカメラで撮られたかは、あまり重要視していません。ただ、紙や本に残すこと、手に取れる形にすることを大切にしていきたいと思っています」

 

ここ数年間、写真に携わる中でミヤモトさんに大きく衝撃を与えた出来事は2011年の東日本大震災だったそうです。津波の被害でパソコンやデジカメのデータが消えてしまう中、辛うじて比較的多く残ったのは写真屋さんが印刷した印画紙の写真でした。
「水に弱いインクジェットプリントや、残っていてもその中に写真があると気づいてもらえないパソコンに比べたら、写真屋さんがプリントした印画紙の写真ならすぐに『あの人の写真だ』と分かってもらえます。実際、そうやって残っていた写真が手元に戻り喜びをかみしめた被災者の方は多いみたいですね」

 

震災以降、ミヤモトさんは気仙沼のフォトブックを作るなどして、被災地の「今」を写真で伝える活動にも力を注いでいます。

 
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「誰が何と言おうと大好きな写真」は、残念なことに、今回の展示を最後に企画はお休み。「これからも続けないんですか?」というファンからの要望を多く受けているそうですが、さらなる新企画が、もう始まっているそうです!

 
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次の企画は、最も私たちの身近にあるフィルムカメラ「写ルンです」が主役。なんと2016年7月には、発売されて30周年目を迎えるのだそうです。いったいどんな企画になるのか、期待が膨らみますね。

 
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その他にも、2~3か月に1度開催されている「暗室BAR」というイベントも気になるところです。なんとこちらは暗室で本格的に現像作業を行いながら、みんなでお酒を飲むという楽しげな企画。4年前から始まり、つい先日は41回目の暗室バーが開催され、次回は2016年の開催予定だそうです。

 
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フィルムで撮影した写真を大きくして展示する「FILMS」も定期開催されています。

 

全国のカメラ・写真好きの人々を繋ぎ、写真を難しいものでもマニアックなものでもなく、より身近に感じさせてくれるカメラピープル。
monogramの気さくなスタッフの方たちも「私たち、何かと写真に写るのは多いほうなんです!」と集合写真まで快く撮らせてくださいました。アットホームで、写真のことを何でも気軽に相談できそうな写真屋さんです。

 
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ギャラリーの机に置いてある「みんなのノート」は、訪れた人が誰でもメッセージを書き込むことができ、スタッフが交換ノートのように返事を書くこともあるのだそうです。
また、全国の方たちが作ったフォトブックや、ミヤモトさんが1日1枚撮り溜めた日常のフォトブックも本棚にたくさん展示されていました。こちらはいつも、ギャラリーで見ることができます。
撮る人、撮られる人、その写真を見る人の繋がりが、置かれているノートやフォトブックから伝わってきます。

 
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良い写真とは、ただ綺麗なばかりの写真でも、上手いだけの写真でもない。
自分の写真に対する価値観を改めて問い直された1日でした。

 

 

○写真屋「monogram(モノグラム)」○
住所:〒152-0004 東京都目黒区鷹番2-19-13
TEL:03-3760-5852
アクセス:東急東横線「学芸大学」東口より徒歩約1分
OPEN:12:00~20:00(水曜定休)
http://monogram.co.jp/

 

○カメラピープル 今後の予定○
http://camerapeople.jp/
写ルンですピープル
http://camerapeople.jp/utsurundesu/