- 2015.11.18
シブカル祭。2015 女子が集えば世界が変わる!?
ガールズアートの最前線に触れる
2015年10月23日(金)24日(土)*本手保行(SHUTTER)*
芸術の秋です!
10・11月は各所でアートイベントや学園祭が目白押しで、アート好きの方にはどこに行って良いのやら、贅沢な悩みですね。
私がこの時期に毎年欠かさず楽しみにしているのが、渋谷パルコで行なわれている「シブカル祭。」です。
70年代から流行を発信し続け、かつてはアーバナート展などで次世代アーティストを発掘してきた渋谷パルコ。アート、音楽、ファッション、映画など、様々なジャンルで今を時めく女性クリエイターたちが大集合するイベントも、今年で5回目の開催。
今回のキャッチコピーは「女子が集えば世界が変わる!?」。
さて、どんな出逢いと発見があるのか、自分の中の価値観が変わってしまったらどうしよう?という期待を胸に、行ってきました!
渋谷公園通りを歩いて行くと、見えてきました渋谷パルコ!
「シブカル祭。」に来たら、急ぐ気持ちを抑えて、まずは建物の周りを一周してみるのが常連の楽しみ方なのですが、いきなり入口に巨大な卵がお出迎え。
「シブカル音楽祭。2015 ~女子が唄えば世界が踊る!?~」に出演した、木村カエラさんのNEWシングル「EGG」の発売にあわせて作られた、高さ4メートルの「木村カエラ×シブカル祭。2015 超巨大EGGバルーン」。
巨大卵はエアードームになっていて、中に入って楽しめます。もういい大人になってしまった私ですが、アート作品となれば話は別(という言い訳で普通にはしゃいでみたかった)。
中に入ると、絵が描かれた無数の卵が転がっています。
これらの卵は、今回「シブカル祭。」に参加しているクリエイター6人、伊波英里さん、小高真里さん(malamute)、五島夕夏さん、とんだ林蘭さん、水野咲さん、Lyさんが描いたものだそうで、どれも可愛い。
アート作品の卵に埋もれつつ、放り投げたり、さらに様々な受け身まで取れてしまう、なかなかできない体験。小学生時代のプールの時間を思い出して純粋に楽しめました。
超巨大EGGバルーンだけでなく、「シブカル祭。」は、パルコ全館がアートギャラリーになっているイベントなので、ゆっくりと館内を見て回りたいところですが、「シブカル祭。に来たら、まずはパルコミュージアムに集え!」とホームページにも書かれているので、まずは3階にあるミュージアムへ。
ここです。3階にあるパルコミュージアム。新しい波の熱気が、入口からも伝わってきます!
「TOKYOシブカルランド。」と銘打たれたメイン会場は、昨年とは全く違う雰囲気でちょっと驚きました。
去年までは、作家それぞれのスペースに仕切りがあり、ギュッと詰まったレイアウトで展示が行われていたと記憶しているのですが、今回は実に開放的な雰囲気。床には芝が敷いてあり、毎日替わるケータリングコーナーのほか、中央には大きなステージが設置され、まるで屋外フェスに来たような、ジャンルレスでフリーダムな仕様に様変わりしていました。
出展クリエイターは、6名の推薦者と「シブカル祭。」実行委員会によって選ばれました。
美術手帖の岩渕貞哉さん、現代美術家の加賀美健さん、island JAPANの伊藤悠さん、VOILLDの伊勢春日さん、ナオナカムラの中村奈央さん。さらに、美学校の講師であり、美術集団Chim↑Pomのメンバー、卯城竜太さんが参戦しているのが、実に興味深く感じました。
かわいい、オシャレ、カッコいい、そんなイメージがあるシブヤに集う女性クリエイターたち。その中に、卯城さんはどんな劇薬を投入してくれたのでしょうか?
卯城さんから声がかかり、今年、新たに参加したクリエイターのひとりが、タタラ・タラさん。
以前、卯城さんが主催していた、美学校の現代美術セミナー現役受講生とOBによって構成されたアーティスト集団「天才ハイスクール!!!!」。その解散展で彼女は長刀を持った道着姿で「Are you Pentagon?」と質問をするパフォーマンスを行っていました。初めてお見かけして以来、「何なんだろうな?でも何か面白い」と気になっていたので、今回は会場でゆっくり話が聞けることになり、楽しみでした。
ちょうど自分の作品の撮影をしていたタタラさんに遭遇。
最初にお会いした時は女性が決闘を申し込むような格好をしていたので、オシャレなファッションに身を包んだ彼女に、一瞬気づきませんでした(笑)。
まず経歴をお聞きしたところ、女子美術短期大学を卒業し、デザインの仕事を始めたそうなのですが、医師から「形式的思考障害」という謎の診断が下され、空白の時間を経て、Chim↑Pomに出逢ったそう。その後、美学校に入り、現在に至ります。
今回の作品タイトルは「~階段怖いーそれでも私は挑み続けるー そこに階段があるから~」。
階段の上にモニターがあり、映像には登山の完全装備をしたタタラさんがロープを伝って様々な場所の階段を必死に登って行くという、良い意味で分かりやすく、クスッと笑ってしまう映像作品。
「不安定な場所が凄い怖くて、階段とかはいつも左手で手すりを持って、右手はいつでも手が付ける体勢にしているくらい大嫌い。階段を登り降りするのって、山登りをしている感覚と感じだなって。エベレストを登るくらいだなと思い、だったら階段で登山をしよう」と考えたのがきっかけだそうです。
何故、階段に挑み続けるのかと問うと、「そこに階段があるから」と、明白な答えが返ってきました。一切無駄がない純粋で壮大なテーマです。
タイトルは、いつもパッと分かりやすいものにしているので、「階段怖い」にまず決まり、その後の言葉は、よく山登りのドキュメンタリー映像のタイトルにあるような長いものにしたそうです。
収録されているのは厳選された5つの階段なのですが、「険しい階段はどこでしたか?」と聞いたところ、「Mt.Shinagawa Station」と即答。警戒が厳しい品川駅は、いつもより急いで登ってしまったそうです。まぁ当然ですよね(笑)。ただご安心下さい。カメラの後ろにはヒマラヤやキナバル山にも登ったことがあるアマチュア登山家のお父さんが、しっかりサポートしての撮影。装備もお父さんが所有する本格的なものを使用。実は家族愛に満ちあふれた作品だったりします。
今度はピラミッドなど世界遺産に挑戦して下さい、とリクエストしておきました。
「ポップにリズミカルにキャッチーに、バカを全力でやっていきます。これからもそういった作品を作りたいと思います。」と答えてくれたタタラさん。今後の展覧会はまだ決まっていませんが、現在は、片山さゆ里というアーティストのビジュアルプロデュースにも力を入れているそうです。
そのあと、同じく卯城さん推薦で、「天才ハイスクール!!!!」時代にタタラさんの同期だったSORAさんにもお話を聞いてみました。
SORAさんも以前の解散展で「ひのあたらない場所」という作品を出展しており、ピンク色が眩しい部屋の中、股間に巨大な万華鏡があるヴィジュアルで、強烈なインパクトを残していた作家さんです。
今回「耳をすませば」という作品。「シブカル祭。」のポップな空間に、まるで「2001年宇宙の旅」のモノリスかのごとく、縦長の黒い物体がそびえ立つ。よく見ると小さい穴に森の映像が流れていて、微かに銃声が聞こえてきます。
SORAさんは沖縄出身で、この光景はSORAさんの地元では当り前の日常だったそうです。作品が語っていることは分かりますよね。
いつもはシモなものや、人を驚かせる作品を作っているそうですが、今回は女性クリエイターが集まるイベントなので、敢えて硬派なものを持ってきた結果、あまりウケが良くないとひたすら気にしていました。
最近は燃え尽き症候群だと語っていましたが、あのタタラさんをして「SORAさんは天才肌」と言わせるほどの美術家なので、今後も何か仕掛けてくれることでしょう。
2人の作品は、わざわざ言葉にするまでもなく、見る側に伝わりやすいものだったと思います。比較的デザイン的な作品が多く、商品にしやすい作品が多数を占める中、生き様と直感を見せてくれたお2人。
そこに、卯城さんが2人を選んだ意図があったのかも知れません・・・ないかも知れません。
まだまだ紹介したい作品がたくさんある「シブカル祭。」らしい作品をもう一つ。
一番端の部屋には、「美術手帖 presents シブカル杯。」で一次審査を通過した5名の作品が展示されています。
グランプリを獲得したのは、柴田英里さんの「BON SAI」という作品でした。
その他の通過作品の中で私が注目したのは、さいあくななちゃんの「夢という字がどんどんダサくなるとき」。壁一面だけでなく、床にまで敷き詰められたピンクをベースした絵の数々。
名前のさいあくの由来は、会社でムカついたことを絵に描いていたら、会社の人に発見され「最悪だな」と言われたエピソードから。学生時代から、言葉ではなく、その日その日の感情を描き続けた絵を積み重ね、作品を形成していったそうです。
大きな字で「ちょうちょう楽しい表現の自由へ」という言葉が書かれていたのが印象深かったので聞いてみたところ、「最近は表現の自由というのを既成概念にとらわれて決めている人が多いなと。死ねとか書くと、そういうの良くないとか、炎上することも多いので、自由なんてないじゃん、言いたいことも言えないのが嫌だと思い、私が楽しいと思う表現の自由へと書きました」と熱く語ってくれました。
歌手が感情を歌で表現するように、絵でストレートに表現するななちゃん。今の自分自身を表現し、さらに時代も表現をしている作家さんは、今見ておかないといけないなと、そう思いました。
シブカル祭。には、他にも興味深い作品やイベントがまだまだたくさんありました。
榊原ミドリコ
毎日GIFのアニメを作り、インスタグラムで公開したものをまとめた「本日のGIF」を展示していました。
チーム未完成
パンをモチーフとしたZINEやグッズを製作・販売、ラップまで歌ってしまうOL系アーティスト。
毎年、美大や専門学校から数千、いや数万人という卒業生が世に放たれていることを考えると、「シブカル祭。」に発見されたクリエイターたちは本当に幸せだと思うし、私たちもこういった展示を通して、作家を知るきっかけができて、とてもありがたいとつくづく感じます。
また来年、新しいアーティストと出会えることを、楽しみに待っています。
◇シブカル祭。2015 女子が集えば世界が変わる!?◇
期間:2015年10月16 日(金)~25日(日)
場所:パルコミュージアム、渋谷クラブクアトロ、シネクイント、渋谷パルコ館内外各所
URL:http://shibukaru.com/
タタラ・タラ
クリエイター。東京都下町生まれ。医学的にアタマの中の川の色が違うと証明される(形式的思考障害)。2015年、天才ハイスクール!!!!展覧会『Genbutsu Over Dose』、同年、個展『悩める脳内パラダイス』(ナオナカムラ)。
http://shibukaru.com/1047/
SORA
クリエイター。1991年沖縄県生まれ。あるスイッチがオンされて今に至る。2015年、天才ハイスクール!!!!展覧会『Genbutsu Over Dose』、同年、個展『つかまえちゃった』(ナオナカムラ)。
http://shibukaru.com/1468/
さいあくななちゃん
ニート兼画家。本名わたなべなな。美術界のロックンローラーになりたい。2015年、個展『夢という字がどんどんダサくなるとき』(高円寺無力無善寺)。舞台装飾、グッズ販売、フライヤーデザインなども手がける。来年2月個展を開催。
http://huwahuwadorori.web.fc2.com/
◇さいあくななちゃんの国内個展ツアー「ロックンロールスター」◇
期間:2016年2月25日(金)~2月28日(日)
場所:中野FREAK OUT
URL:http://gallery-freakout.com/
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