- 2014.12.11
MOTOYA Book-Café-Gallery
『なぞときブックフェア』
2014年11月28日(金) 小松 一世(ライター)
京王新線・初台駅から徒歩10分弱、富ヶ谷方面に向かう閑静な住宅地の一角にある『MOTOYA Book-Café-Gallery(モトヤ ブック・カフェ・ギャラリー)との嬉しい出会いがありました。ウェブで偶然みつけた『なぞときブックフェア』というタイトルに興味を抱いて足を運んだのですが、地図を頼りに小さな商店街を抜け、坂道を登って下ると・・・迎えてくれたのはガレージのポップな展示が目を惹く可愛い一軒家でした。
戸建ての家を改装してつくられたこのカフェは、玄関で靴を脱いであがるスタイル。思わず“お邪魔します”と言ってしまうほど温かな雰囲気に包まれています。
あまり広くはない店内も、親しい友人のリビングを訪れたような心地良さ。壁面の書棚には、洋書や画集を中心とする珍しい本が並んでいます。
どれでも手にとって読めるのですが、逸る気持ちを抑えてまずは飲み物をオーダー。お隣のテーブルの常連さんらしき人にならって、ホームメードだというホットレモネードを注文しました。美味しい♪♪♪ ほのかな甘さに身も心もぽかぽかです。
さて、肝心の“なぞとき”です。飲み物をオーダーすると、回答用紙とスタンプカードを渡されます。店内に展示された手作り本がそれぞれ“なぞとき”の問題になっていて、正解数に応じてスタンプをもらえる仕組みです。もちろん問題の手作り本を席に持っていき、飲み物をいただきながらじっくり取り組むことができます。
手作り本は8人の作家さんによる、それぞれに拘りの感じられる作品でした。例えば白壁の棚に鎮座する豆本たち。布巻コードのような柄の閉じ紐がレトロな炬燵(こたつ)型や、セピア調のプリントがヨーロッパの写本を思わせるクイズ集など、掌に包み込めるほどの小ささなのに、書籍らしい存在感を醸していました。小さくて精巧なものには、ついコレクター熱が沸々します。
一方、瞠目させられたのは、ヒントのイラストがすべて手刺繍で表現された布絵本。繊細で温かみのある刺繍とナンセンスなクイズとのイメージのギャップが楽しくも贅沢な一作でした。その他、びっくり箱のような仕掛け絵本や、ウォーリーを探せ風の写真集、鍵付の木箱入り絵本、等々、手作りならではの凝った仕立てに興味をそそられ、難問を解くのを忘れそうになるほど見入ってしまいました。(作品情報はお店のHPをご覧ください)
これらの作品のいくつかは、今回の展示のために創られたとか。会期3週間足らずのフェアのために一点ものの手作り本が並ぶとは、なんて贅沢な企画でしょう! オーナーいわく、このギャラリーそのものが作家の方々の紹介の場になることも目的のひとつにしているため、展示会のテーマに合わせて特別に制作していただく場合もあるとのことでした。
さて、『MOTOYA』という店名。私はてっきりフォント屋さんのモトヤが開いたテナントショップかと思っていたのですが、全くの勘違いでした。
「モトヤというのは私の名前なんです」とにこやかに答えて下さったのは、素敵な女性オーナーの本屋暁子(もとやあきこ)さん。本業はグラフィックデザイナーで、本好きが高じてこのお店を開いたのが6年半程前だとか。(「店名にはモトヤフォントは使っていないのですけどね」とも。言われてみればなるほど~確かに!)
今回のフェア以外にも手作り本の扱いは多く、すべて本屋さん自らアートブックフェアや手作り市などに出かけて、お気に入りの作家さんを見つけてくるのだそうです。今回のような企画展のほかに、お店のアニバーサリー企画として『手作り本フェア』を開いたり、『製本ワークショップ』を毎月開催するなど、ブックカフェならではの拘りが随所にみられました。この空間をデザインされた本屋さんの手がけるグラフィック作品も観てみたいなぁと、ちらりと思ってしまいました。
店内の書籍の多くはその場での購入もできるそうです。お仕事柄、洋書の写真集や画集も数多く、また書棚には『手作り本フェア』で出会った作家さんの1点モノ(お宝もたくさん!)などもさりげなく置かれていました。
「書店はある意味特別の空間なので、そこで手にして良いと思って購入した本も、自宅に持ち帰ると印象が少し違ってしまうことがあると思うんです。その違和感を少しでもなくすために、自宅のリビングのように寛いだ状態で本を手にして、気に入ったらご自宅で続きを読んでいただけるような、そんなお店にしたくてブックカフェを開いたんです」と、ゆったりとした口調で語る本屋さん。「アクセスを考えれば決して条件がいいとは言い難いけれど、でも(このようなコンセプトの店が)駅前や商店街の中というのはちょっと違うと思ったんです」とも。
訪れるお客さんは、ウェブ上で展示会やワークショップの情報を知った方が多いとか。この日も“なぞとき”目当てに初めて来たという方や、懸命に問題に取り組むカップルの姿を見かけました。きっとリピーターも多いことでしょう。
住宅街の中で、強く主張することもなく、さりとて小さいながらも存在感のあるこのカフェのイメージは、そのまま本屋さんのお人柄に通じるようでした。
お手製のレモネード、アンティークな小物とともに並ぶ丁寧に創られた本の数々、ゆったりとした時間の流れ・・・住宅街の一角の隠れ家のようなブック・カフェ・ギャラリーは、ぜひともみんなに教えたい! でもホントは秘密にしておきたい、そんなとっておきの空間でした。
そうそう! 見事にクイズに正解していただいた景品は、素敵なオリジナルしおりでした♪ (くるくるまわすと絵が変わるという遊び心のあるデザインです)
なお、12月11日(木)~21日(日)には、本屋さんの秘蔵本も出品されるという『MOTOYA BOOKSHOP スペシャルセール』が開催されるそうです。
また、毎月開かれている『製本ワークショップ』の年内最後の開催は12月14日(日)、
『布とリボンでつくる本』がテーマです。
【MOTOYA Book Café Gallery】
開店時間:午後1時~8時(ラストオーダーは午後7時30分まで)
定休日: 月曜日・火曜日 ※ギャラリーのスケジュールにより営業日や時間の変更あり
所在地:東京都渋谷区初台2-24-7
観覧料:カフェでの展示のためドリンクのオーダーが必要(400円~)
http://www.mo-to-ya.com/index.html
◆『なぞときブックフェア』
会期:2014年11月12日(水)~30日(日)※終了しました
↓展示作品の一部を観ることができます。
http://www.mo-to-ya.com/gallery/index.html
今後の予定:
MOTOYA BOOKSHOP スペシャルセール
会期:2014年12月11日(木)~21日(日)(12/15~17を除く)
製本ワークショップ『布とリボンでつくる本』
会期:2014年12月14日(日)午後1時~4時30分
参加費:3,600円(別途、製本針代100円)
定員:8名(事前予約制)
(2015年1月以降も毎月1回、テーマを変えて開催)
関連記事
関連記事はありません