2014.11.17

カミン・ラーチャイプラサート

Before Birth – After Death

 

2014年11月2日(日) *湊 るい*

 


こんにちは。
秋も深まり、肌寒くなって来ましたね。外を歩くのが気持ちのいい昼下がり、薄手のジャケットを羽織り、「カミン・ラーチャイプラサート Before Birth – After Death 」を観に行って来ました。

 

さて。
突然ですが、皆様は、ドクロにどのようなイメージをお持ちですか? ちょっと怖いかも? 取扱注意? ロックテイストのファッション?

 

今回紹介するカミン・ラーチャイプラサート氏(以降カミン氏)こそ、ドクロモチーフが印象的なタイの現代アーティストです。
「芸術とは生の本質と自然の摂理、更に自己についての理解を深めるための学びの過程」と捉えており、日常とアートとの融合を目指したプロセス重視型の創作活動を行なっているとのこと。

 


今回の個展のタイトルである「Before Birth – After Death」は、直訳すると「生まれる前、死んだ後」。なんとも深いテーマですね。最初目にした時思ったのは、ちょっと暗い感じなのかな?ということ。カミン氏の芸術における解釈ともども、「私にはそんな難しい内容ハードル高いです、ごめんなさい許してください」と土下座でもしたい勢いでもあり。そんな印象のまま、フラっとギャラリーの扉を開きました。

 


目に飛び込んで来たドクロの皆さん。

 

そこで、私の心の第一声とは。

 

「あら、意外とかわいい」

 

ph_021

 

暗いイメージは全くなく、むしろモダンでポップな雰囲気。ハートとか描いてあるし。一つ一つをよく見ていくと、日本語やらタイ語やらいろいろ書いてあります。

 

ph02

 

今回、残念ながらカミン氏は不在でしたが、親切にもギャラリーのディレクターの方がいろいろ教えてくださいました。

 

まず、彼の作品の作り方について。非常に興味深いです。
毎日の出来事や想いをまとめて文章に残して、その日得たもの、例えばレシートやチケット等にその言葉や絵をドローイングします。更に、それを元に立体化し、今回のような作品に仕上がるのだそう。
 


私が面白いと思ったのが、こちら。

 

ph_010

 

これは元々、お寺に宿泊した際の、スケジュールの紙にドローイングしたものを元に制作した作品だとのことです。

 

実はカミン氏、日本にはもう何度も来ており、お寺や焼き物に興味があるのだそう。彼の作品にもとても影響されているのが分かります。
また、コピーライターとメールのやり取りで禅問答を行い、日々の活動の中に紛れた生の真意について考察を深め、その痕跡を作品の一つ一つに託していったとも。

 


プレスリリースより ─
今回のプロジェクトは、そのタイトルが示すように『私たちが生まれる以前、死んだ後』の状態、言い換えるなら『我々はどこから来て、何のために生き、そしてどこへ立ち去るのか』という人間存在に対する根源的な問い掛けが出発点となっています。
このプロジェクト全ての作品には髑髏のモチーフが取り込まれていますが、これは、<究極的には生も死も存在しない。なぜなら変化することそのものが自然の本質であるからだ。>とするラーチャイプラサートが至った真理を象徴的に表すものとして用いられています。

 

このように、自然な生き方をしたいというカミン氏は、環境問題にも関心があるようで、リサイクルをテーマにした作品を作ったり、農薬を使用しない農業をしたりしているそうです。

 

自然な生き方。
どんな生き方かと考えた時、私たちはきっと難しく考えてしまいがちですが、「その時々の自分の心の声に正直に生きる=それぞれの幸福のあり方」ということなのかな、と 私はそう思いました。
ともすれば、簡単に忘れてしまいがちな日常の一コマ。
例え小さな出来事でも、後から思い返した時に特別だと思えるように、大事にしてあげたい。

 

皆様の今日一日はいかがでしたか?
明日も幸せな一日でありますように!

 

ph_002

 

『カミン・ラーチャイプラサート Before Birth – After Death 』
期間: 2014年10月10日(金)~11月2日(日) 
場所: Art-U room 
HP  :http://www.art-u-room.com/

 

■ カミン・ラーチャイプラサート
1964 年タイ王国ロッブリー生まれ。1987 年シラパコーン大学版画科を卒業後渡米。1992 年タイに帰国後、仏教哲学や瞑想法等に対する関心を深め、一日一点の作品を数年の期間にわたって日々制作し、一つのシリーズとして完結させる独自の創作スタイルを採るようになる。これまでタイ内外にて多数の個展を行なう他、ヴェニス・ビエンナーレ(2003 年)、釜山ビエンナーレ(2008 年)、シドニー・ビエンナーレ(2012 年)他の国際展に参加。その作品は、グッゲンハイム美術館、シンガポール美術館を始め多くの美術館、コレクションに収蔵されている。ラーチャイプラサートはまた、個人的な創作活動と平行して、他者や地域社会との係わりに根ざした社会的なプロジェクトを展開しており、その代表例としては 1998 年よりチェンマイにてリクリット・ティラヴァニャらと共に立ち上げた実験的コミュニティ「The Land」や、2008 年に金沢で行なったプロジェクトを契機とする「31stCentury Museum of Contemporary Spirit」などがある。


関連記事

    関連記事はありません