2014.07.31

赤松陽構造と映画タイトルデザインの世界

「映画タイトルデザイン」「筆」「転身」

 

2014年7月18日(金曜日)ぽつぽつ雨

 

 『赤松陽構造と映画タイトルデザインの世界』を見に京橋の東京国立近代美術館フィルムセンターへ行ってきました。この展示がきっかけで、映画のタイトル作成を専門として仕事をする人がいることを知りました。

 

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映画のタイトルを一目見たときにどんな内容か想像が膨らむことがありますよね。例えば『東京裁判』、『HANA-BI』、『美しい夏キリシマ』、『Shall we ダンス?』、『ウォーターボーイズ』、『それでもボクはやってない』、『禅』など、これらの映画を見たことがある人も多いのではないでしょうか。この映画のタイトルは全て赤松陽構造さんが手掛けたものです。赤松さんのデザインしたタイトルは、どこか昭和の人情深いイメージです。『HANA-BI』の映画のポスターをみたとき字体が刃物を振っているように遊ばれた文字だったので、ヤクザ映画かな、と思ったところ実際の内容もそのようなストーリーでした。視聴者はなんとなく無意識に自分の中で情報を自己処理していると思いますが、実はタイトルデザインには映画の内容を一瞬で分かるような工夫と技術があるのです。

 

 映画の内容とタイトルの関わりって深いんです。それについて赤松さんは、こんなふうに言っています。
「タイトルの出し方にしても、リズムが違っていたら、見ている人の整理が変わっちゃうんです。例えば、メインタイトルをすごく速くすると、次のカットが長く見えちゃうんですよ。そういう狂いがあってはいけないんです。」
「タイトルって、ロングの風景に出したものと、顔のアップに出したものでは、同じサイズの文字でも違った大きさに見えるんですよ。後ろに動きがあるのとないのとでは、同じ秒数でも違って感じられます。」
 タイトルを考えるときは、文字の大きさ、書体、表示する秒数、出し方、映画の内容などたくさんのことを考えないといけないのですね。道具についても筆は新品に限らず使い古したものを使ったり、割り箸、小枝など「こんな物まで」と思うような物を使って、映画のイメージに合うようにデザインしています。実際に『BROTHER』は割り箸でデザインしたそうです。

 

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 フィルムセンターの展示室では、映画のタイトル画だけでなく、赤松さんがタイトルデザインを手掛けた映画の短編映像や使った道具、台本、フィルム、新聞記事などが飾られていました。室内は薄暗くてふるーい田舎の記念館のようで情緒ある雰囲気でした。フィルムセンターでは赤松さんが手掛けた映画の短編版が上映されているので、その映画を3時間ほどかけてゆっくり鑑賞するのも良さそうです。

 

 赤松さんは元はカメラマンを志していましたが、タイトルデザインの会社を経営していた父親の急逝を機に、映画タイトルのデザインの世界へ入りました。映画タイトルデザインの第一人者として、黒木和雄、北野武、黒澤清、阪本順治、周防正行監督作など400以上の作品にタイトルを提供しています。中学生の時に見た『ウエストサイド・ストーリー』(1961年、米映画)のタイトルデザインを未だに覚えているそうで、この職についた理由の一つとして、当時の印象的なデザインが記憶にあるからだそうです。現代のタイトルデザインについて話されている内容が印象的でした。
「確かに今は、コンピューターを使えばだれでも簡単にできるようになったじゃないですか。コンピューターやモニターと、スクリーンにはギャップがあるんです。スクリーン上のスピード、タイミング、文字サイズとかは経験がないと分かりません。いちばんいいのは、アナログのできる人がコンピューターを使いこなしてゆくことなんです。」

 

 タイトルデザインは、たとえ映画を構成する一部分の表現であっても、時代に沿ったもので内容全てを把握して経験を積んでいかないと出来ないのですね。ミクロの世界でもマクロの世界の視野を持って何事にも真剣に取り組むことが大事ということを学んだ、今回の「友華乃ぶらりアート」でした。

 

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『赤松陽構造と映画タイトルデザインの世界』
期間:2014年4月15日(火)~8月10日(日)
時間:11:00 ~ 18:30(入室は18:00まで)
    月曜休み
場所:東京国立近代美術館フィルムセンター 7階展示室
   東京都中央区京橋 3-7-6
   TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
料金:一般210円、大学生・シニア70円
HP:http://www.momat.go.jp/FC/titledesign/

 

赤松陽構造(Hikozoh Akamatsu)

1948年、東京都中野区生まれ。1969年に急逝した父親の跡を継いで映画タイトルデザインの仕事を始めてから、現在までに400以上の作品を担当、現代日本の映画タイトルを代表するデザイナーとなる。日本タイポグラフィ協会会員。第66回毎日映画コンクール特別賞、文化庁映画賞[映画功労部門]を受賞(いずれも2012年)。
HP:http://n-art.jp/


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