- 2015.04.09
銀座・和光 北陸発 工芸未来派
2015年4月4日(土) *湊 るい*
春の陽気から一転、突然の寒さの洗礼を受けながら銀座の街を歩く午後。品の良い人々の流れの中、高級専門店「和光」へやって来ました。お目当ては「北陸発 工芸未来派」、北陸を拠点に活躍する工芸家7名のグループ展です。
今回こちらにお邪魔したのは、ある出会いがきっかけでした。去年、別の展覧会で、ある作家さんの作品に一目ぼれをした私。残念ながら自身の都合でインタビューが叶わなかったため、次のチャンスを虎視眈々と狙っていました。そして、今日、ついにその日が!!
そのお相手こそ、陶芸作家「水元かよこ」さん。それでは、逸る気持ちを抑えつつ、彼女と作品の魅力に迫ってみましょう。
ちょっと皆様、見てください!このパンチの効いたビジュアルを。
「やだ、かわいい!グロテスク!こういうの大好き!」
一番最初に見た時の感想は、こんな感じでした。
女性らしいキュートさと、不思議な世界に引きずり込まれそうな毒々しさが、私のハートをガッチリ掴んで離してくれませんでした。「なんて罪な作品なの、ぜひ作家さんにお会いしたいわ」と思った私は、すぐさま水元さんにご挨拶を。その瞬間、第二の衝撃が走りました。「ええ!この方が!?」というギャップ。知的で落ち着いたイメージの彼女からこの作品が産み出されるとは..と。しかし、話を聞くにつれ、いろいろと納得することになりました。
水元さんの経歴はとてもユニークです。まず、加賀友禅工房に弟子入りし7年間修行。しかし、自身の発想に蓋をして、昔ながらの規則に沿った仕事を続ける日々に疑問を感じた彼女は、工房を辞める決意をします。その後、中南米に魅せられ、ボリビアやメキシコを転々とした水元さん。現地でたくさんの面白いものに触れ、パワーアップして帰国しました。それから九谷焼きの窯元に師事し、絵付けを学んだそうです。
こういった本能に従った潔い生き方、とてもかっこいいですね。
次に作品の特徴に触れてみましょう。
加賀友禅の絵柄と九谷焼きの技法をベースとした色絵磁器。そこへ、独創的な造形と、カラフルで斬新な絵付けが加わり、陶芸界の新世界が築かれました。絵が器をリードしていく造形スタイル、と説明する彼女の作品。自身の経歴と、持ち味が存分に生かされていますね。
ここで、ひとつ作品を紹介します。
不思議の国のアリスをモチーフとしたこちらの作品。ぐにゃぐにゃと歪んだトランプ、時計の絵柄は、不思議さや怪しさを漂わせ、物語にリンクしています。それに加え、花、格子、鱗など、加賀友禅で使われる模様を散りばめています。そういった昔からある模様も加えることにより、昔か今か、和か洋か分からないといったような、作品の世界に迷い込ませる力もあります。さらに、目の前の物が大きく見えたり、小さく見えたりする奇病「不思議の国のアリス症候群」の意味も隠されているのだとか。
ここで気になるのが、花の中心にある目。彼女の作品を見ると、目が描かれたものがたくさんあることに気付きました。そこには、どんな意味があるのでしょうか。
彼女は絵付けをする際、器の表面に自身の内面世界を描いているといいます。心の中を表すことにより、目が使われているのです。また、今の日本のサブカルチャーにも影響され、アニメに出てくる「目」もヒントになっているのだそう。一部の作品には、目の中に星があったり、まつ毛が付いたりしているのも納得です。なるほど。そんな意味が隠されていたのですね。
興味深いのは、同じ柄を使ったとしても、表現の仕方によって作品の印象が変わることです。女性的な表情、男性的な表情。可愛らしさと毒々しさ。そんな多面性が魅力的なのです。さらに、それらの配合のバランスも絶妙なので、目を惹き付ける力にも頷けます。そんな計算された技が潜んでいたのですね。
また、自身の作品を盛る文化と表現し、わび・さび文化などの引き算の美があるとしたら、彼女の作品は足し算なのだと。見た目を大げさにするのが自分らしさ。スルーされるのは面白くない、引っかかる仕掛けが欲しいといいます。私はまさに、その策略にうまくひっかかった内の一人ということです。完全にやられましたね(笑)くやしい!
控えめな文化が日本の美徳とされがちですが、私達も、たまには足し算してみても良いかもしれませんね。その行動から、何かひっかかったら面白いと思いませんか?
◇北陸発 工芸未来派◇
期間:2015年4月3日(金)~4月12日(日)
時間:10:30~19:00(最終日は17:00まで)/無休
場所:和光ホール/東京都中央区銀座4-5-11 和光 本館6F
URL :http://www.wako.co.jp/exhibitions/456
料金:無料
◇水元かよこ(みずもとかよこ)/ http://mizumotokayoko.jimdo.com/
石川県生まれの陶芸作家。1989年加賀友禅工房に弟子入りする。2001年に九谷焼きの窯元に師事し、絵付けを学ぶ。2010年より独立し、ドイツのミュンヘンでのグループ展をはじめ、国内各地で個展、グループ展を開催。
◇今後の出展予定◇
・5月8日(金)~11日(月)COLLECT 2015–Crafts Counci(イギリス/ロンドン)※MICHEKO GALERIE(ミュンヘン)より出展
・8月12日(水)~18日(火)現代作家茶碗特集 (東京/日本橋三越本店6F 美術工芸サロン・アートスクエア)
・9月 個展(タイトル未定) (石川県野々市市/ギャラリールンパルンパ)
・9月25日(金)~27(日)神戸アートマルシェ (兵庫県/神戸メリケンパークオリエンタルホテル12F)※ギャラリールンパルンパ(石川県)より出展
・10月10日(土)~25日(日)16周年企画展 花器展 (愛知県江南市 /ギャラリー数奇)
・11月7日(土)~23(月祝)ぐいのみ展 (愛知県江南市/ギャラリー数奇)
・12月 ジ・アートフェア+プリュス ウルトラ 2015(東京 青山/スパイラルガーデン)※ギャラリールンパルンパ(石川県)より出展
関連記事
関連記事はありません