- 2015.03.18
パークホテル東京 「アーティスト・イン・ホテル」
2015年3月5日 Written By 美生
ようやく日差しが暖かくなってきた季節、早くも春まっさかりを迎えたホテルの一室にお邪魔してきました。
パークホテル東京は、2003年開業時から東京で初めて「デザインホテルズ」に加盟し、空間(Atrium)、食(Restaurant) 、旅(Travel)=“ART”をテーマにした“ART COLOURS”プロジェクトを立ち上げ、一風変わった日本のおもてなしシーンをアートで演出している、ちょっと変わったホテルです。
汐留駅直結のメディアタワー内、ホテルのフロントへ向かうと、ドアが開いた瞬間。そこが25階だとは思えない吹き抜けの空間が広がっていました。
フロントの窓には、ドーンとそびえ立つ東京タワー、ロビー全体を利用したアート展示。
一体、どんなお部屋なんだろう・・・期待が広がります。
2012年からこのホテルでは、「作家が作る部屋」というコンセプトで客室の壁紙にアーティストが直接絵を描いたり、原画やオブジェを壁に設置しアーティストの世界観を表す、「アーティスト・イン・ホテル プロジェクト」を展開しています。
普段は、宿泊客しか味わうことの出来ないこの空間を、特別に案内して頂きました。
現在、「アーティスト・イン・ホテル」で宿泊スタートしているのは13部屋。その一室を手掛けた大竹寛子さんの案内で、今年1月に完成したばかりの、彼女が手掛けた「桜」の部屋を見学させて頂きました。
お部屋の中心にそびえ立つ、インパクトある大きな桜の木に衝撃を受け圧倒されてしまいましたが、よくよく見ると部屋全体に描かれた蝶や、蝶の形をした桜の花びらは、一枚一枚がとても繊細に描かれていて、部屋全体と美しく調和している居心地の良さを感じました。
お話を伺うと、日本の美意識の象徴とも言われる「桜」。そして、魂と時の流れを表す「蝶」。この2つの色合い、描き方を使い分けることで、日本独自の春夏秋冬や、生と死を表した散り際の美しさをコンセプトにしているとのこと。
もともと、東京藝術大学で日本画を選考していた大竹さんですが、一部屋全体をキャンバスにしたのは初めて。
大竹さん:
「1ヶ月間もホテルの部屋に、ほぼ缶詰状態で描き続けるのは、かなりきつかったです。それに、部屋ごとにテイストの違うアーティストさんがいらっしゃるので、比べられてしまうプレッシャーもありました。
一方で、アーティストさんとの繋がりを持てたし、滞在中はホテルの食事や、バーラウンジも利用できて、アーティストに対するホテル側の待遇はとても良かったと思います」
確かに、お部屋によってはかなり個性が強く、落ち着いて宿泊するというよりも、非日常であるアート空間を楽しんで過ごす意味合いが強いように感じました。宿泊する方も殆どが外国人で、SUMO(相撲)をモチーフにしたお部屋が人気だそうです。
そんな中、大竹さんの「桜」部屋は、個性的でありながらも部屋として落ち着ける空間だと感じました。
彼女自身も今回一番気遣った点が、宿泊者を意識した部屋全体の空間創りや、完成イメージに合わせた計画性であったようです。平面に岩絵具などを使って描く日本画のスタイルを飛び出し、アクリルや金箔をふんだんに使用した画材選びも、部屋のコンセプトに沿うように洗練されていました。
お部屋が完成してまだ1ヶ月程ですが、すでに新聞や雑誌でも「桜」の部屋を紹介しているメディアは多く、宿泊予約も増えてきているそうです。
4月からは、同ホテルのロビーで「桜」をテーマにした展示も予定させていて、お部屋の中でも、外でも、まさに満開の桜を楽しむことができます。
ちなみに、「アーティスト・イン・ホテル」のお部屋は期間限定ではなく、今後も維持していく予定で、今までは、ギャラリーやアート団体からの推薦でアーティストを募集していましたが、現在は一般公募も行っているそうです。
ポートフォリオを通した一次選考の後、実際のお部屋で内覧会審査を行い、最終選考では何もない部屋で試泊をすることでアーティストの世界観を表した下絵の審査があるそうです。滞在期間は特に決まっておらず、短い方で5日。長い方は何ヶ月も掛けて一部屋を完成させるとのこと。
現在、1フロアに13部屋完成している部屋も2016年には31部屋へ増室予定で、東京オリンピックでも、海外からの宿泊客にホテルを通じて「日本の美意識」に触れ帰ってもらうことができます。また、「アートは敷居が高い」と感じがちな日本人にも、たくさんの作品が並ぶギャラリーや美術館とは違った空間で アーティストの世界観をじっくり味わって過ごすことができるホテルだと思います。
今回は数時間の滞在でしたが、窓からの景色によって変化するその部屋で、一日中どっぷり贅沢な時間と赤ワインを味わいたくなりました。
◇パークホテル東京
場所:〒105-7227 東京都港区東新橋1丁目7番1号 汐留メディアタワー(フロント25F)
◎ご予約・お問い合わせは 03-6252-1100 またはホームページまで
URL:http://parkhoteltokyo.com/
「アーティスト・イン・ホテル」 プロジェクトページ
URL:http://www.parkhoteltokyo.com/artcolours/aih.html
◇大竹寛子(日本画家)
岐阜県生まれ。 東京藝術大学美術学部日本画 卒業。
同大学院美術研究科日本画 修了 美術研究博士号取得。
現在、日本画家として国内外で活動中。
http://www.hiroko-otake.com/
蝶や枯れゆく花などのモチーフで「儚さの中にある無限性」を描き、繊細な作品が高い評価を集めている新進気鋭の日本画家。大竹さんが描いた蝶の作品は脳科学者・茂木健一郎氏の著書『今、ここからすべての場所へ』の表紙にも採用されている。
ART LIBRARY 粋 Vol.5 「大竹寛子 アーティストルーム 桜 完成記念展」
期間:2015年4月01日(水)~ 2015年6月30日(火)
パークホテル東京25階ロビーラウンジにある本棚にアート作品を展示、販売しています。「日本を感じる書斎」をコンセプトにアーティスト集団のART FACTORY’s 粋が季節ごとに提案します。
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