2015.02.19

『みなさま、ごきげんよう! 竹久夢二と乙女のハイカラらいふ』展

~女学生・職業婦人・淑女たちの憧れ~

 

2015年1月29日(木) 小松 一世(ライター)

 

よく晴れた冬の一日、お気に入りのアートポイントのひとつ竹久夢二美術館へ行ってきました。東大弥生門の向かい、暗闇坂という緩やかな坂道に建つ“ハイカラ”の言葉が似合う小さな美術館です。こちらで年明けから開催している『みなさま、ごきげんよう! 竹久夢二と乙女のハイカラらいふ展 
~女学生・職業婦人・淑女たちの憧れ~』を鑑賞しました。

 

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古い洋館といった佇まい。館内に入るや、ミュージアムショップのカラフルな小物たちに目が釘付けに。ポストカードや作品集のほか、夢二デザインの文様をあしらった和装小物などが並び、乙女心をくすぐります。

 

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『竹久夢二と乙女のハイカラらいふ展』の展示は夢二館1・2階です。
実はこの美術館、ちょっと複雑なつくりになっています。建物のメインは弥生美術館で、渡り廊下で繋がるような形で竹久夢二美術館があるのです。
弥生美術館(現在『小田富弥展』開催中)の展示室から竹久夢二美術館へつながっています。細~い渡り廊下には、過去に開催したイベントで制作した水森亜土さんによるガラス絵が展示されていて、レトロ感を増していました。

 

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展示はいくつかのコーナーに分かれていました。
『憧れの女学生! 少女たちの乙女らいふ~おしゃれをしませう』では、夢二がデビューして間もない頃に手がけた雑誌の“コマ絵”が紹介されています。“コマ絵”は、記事の内容に沿って補足的に描かれる挿絵と異なり、独立したテーマに沿って描かれたものです。当時のファッション界に少なからず影響を与えていたに違いない夢二。明治後期の女学生の姿を描いたこれらの作品群からは夢二独特の視点が感じられました。
女学生の袴姿を再現したマネキンも展示されていて、ちょっとしたタイムスリップ感覚も味わえます。

 

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『雑誌を読みませう』では、『少女界』(明治35年刊行)を皮切りに次々刊行されたという少女雑誌の表紙絵や挿絵が紹介されています。
小説やエッセイの挿絵なども多数あり、いわゆる“美人画”だけではない夢二の魅力を楽しめます。メルヘン調の挿絵などは、彼特有のタッチを感じさせながらもいわゆる美人画を描いた世界観とは一線を画しています。貴重な作品群と言えましょう。出版社による赤字が入れられた原画の数々にも興味をそそられました。

 

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『音楽を嗜みませう』では、セノオ音楽出版社より刊行された楽譜の表紙絵が並びます。280余点という手がけた作品量の膨大さも驚きですが、工夫を凝らした装丁やレタリングなど、編集デザイナーとしての側面をうかがわせている点に瞠目させられました。
館内にさりげなく置かれた蓄音機も当時の雰囲気を醸すのに一役買っていました。

 

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私の一番のお気に入りは『趣味のよい暮らしをしませう』のコーナーです。大正3年に「港屋絵草紙店」を開店した夢二。夢二デザインの千代紙の数々には、まさに大正ロマンの魅力が溢れていて、本当にうっとりさせられます。
そして、展示作品は乙女の暮らし方の提案にも及びます。『お手紙をしたためませう』と提示されたお洒落な絵葉書や絵封筒、『草花を愛でませう』と四季の草花モチーフの作品群が並ぶなど、日常を丁寧に暮らすためのヒントが満載です。
手提げ袋の裁縫や刺繍、ステンシルの手引きまであり、現在の婦人雑誌にもつながる内容が夢二のセンスと拘りで構成されていることに驚かされます。夢二は画家の領域に留まらず、現代で言うところのグラフィックデザイナー、編集者、エッセイスト、作詞家、スタイリスト、さらにはテキスタイルデザイナーの仕事領域もこなしていたことになります。その多彩ぶり、それでいて一環したセンスが現代も人気を保持する所以でしょうか。

 

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後半は『東京ハイカラらいふ』と題して、日本橋や銀座の街、浅草オペラやキネマなどの文化面や “モダン・ガール”と呼ばれた女性たちについてまとめられていました。また、夢二が愛した妻のたまき、恋人の彦乃、お葉の3人の女性についてまとめたコーナーでは、夢二の女性観も垣間見られるようでした。

 

さて、美術館の成り立ちについては、学芸員の松本様からお話をうかがうこともできました。

 

母体となる弥生美術館が建てられたのは1984年。弁護士の鹿野琢見氏が個人のコレクションを基に開設したのがはじまりだそうです。晩年に親交のあった挿絵画家・高畠華宵氏の作品約3,000点を中心に、出版美術に特化したコレクションが27,000点も収蔵されているとのこと。雑誌の付録やしおりなどの小さな品まで丁寧に保存されているため、その数は膨大です。
さらに1990年に、弥生美術館と内廊下で繋いだ形で竹久夢二美術館が開設されました。夢二作品も約3,300余点が収蔵されており、その中から200~250点程を3ヶ月ごとにテーマを設定して展示公開しているということです。
これほど所蔵作品の充実した、しかもモダンな洋館風の美術館が私設のものだと知って大いに驚きました。企画展は学芸員の方々が交代に担当されるそうですが、特に毎回切り口を変えて夢二の魅力を現代に示し続けてくださっていることは、夢二ファンとしても嬉しい限りです。

 

敷地内には直営のカフェ「港や」もあります。
レトロ感たっぷりの店内。2階には陽も降り注いで冬の午後でもポカポカでした。
夢二デザインの文様のパネルやランプシェードなども飾られていて、カフェでも夢二の世界観を味わうことができます。
ランチに“野菜の甘みぎっしりカレー”をいただきました。季節の焼き野菜と自家製のピクルスが添えられた優しいお味に美術館のおもてなしの気持ちが感じられました。

 

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『みなさま、ごきげんよう! 竹久夢二と乙女のハイカラらいふ展 ~女学生・職業婦人・淑女たちの憧れ~』は3/29(日)まで。
3/8(日)には、午後3時から学芸員によるギャラリートークもあります。

 

【弥生美術館・竹久夢二美術館】
開館時間:10:00~17:00(最終入館は16:30)
カフェ 10:30~17:30(LO 17:00)/ミュージアムショップ 10:00~17:00
休館日:月曜日(祝日の場合は開館し、翌日休館)、年末年始及び展示替期間
所在地:東京都文京区弥生2-4-3(TEL03-3812-0012)
入館料:一般900円、大・高生800円、中・小生400円(2館併せて観覧できます)

 

http://www.yayoi-yumeji-museum.jp/


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