- 2014.06.06
幸福はぼくを見つけてくれるかな
「混沌」「日常」「幸せ」
2014年5月29日(木曜日)午後1時
『幸福はぼくを見つけてくれるかな?』を観に、初台の東京オペラシティへ行ってきました。展示のタイトルを見た時に「幸福」が人を探してくれることなんてあるのだろうかと、不思議な気持ちのまま足を運んでみることにしました。
「幸せってなんだろう」とよく考えることがあります。 私にとっての幸せは、健康、余裕のある暮らしが送れる時間とお金があること、関わっている人々が笑顔であることの4つの要素が揃って幸せだと考えています。あなたも自分自身の「幸せ」について、考えたことありますよね?
国連の調査*によると、幸福度の高い国は1位デンマーク、2位ノルウェー、3位スイスで日本は43位となっています。評価基準としては、富裕度、健康度、人生の選択における自由度、困ったときに頼れる人の有無、汚職に関するクリーン度や同じ国に住む人々の寛大さだそうです。
『幸福はぼくを見つけてくれるかな?』では、国際的に注目を集める10組のアーティストの作品で、誰もが認知をしている現代の問題において、見過ごしてしまうようなことを題材に制作した作品が展示されています。その中でも私が一番心に残ったのが、オマー・ファストさんの映像作品『コンティニュイティ(連続性)』です。本作は5年に1度ドイツで開催される国際美術展ドクメンタ13(2012)で大きな話題を呼んだものです。ドイツ人夫婦が戦地から帰還した息子を出迎え、自宅で夕食を共にするまでの場面が何度も繰り返され、そのたびに息子が新しく入れ替わります。
両親の迎えを駅で待っている間にカバンを失くしてまったという、どこか抜けている息子との再会。戦地での話を面白おかしく語る息子。愛しい息子との再会に感極まって声を上げて泣く母親。好物のマカロニがウジ虫に見えてしまう幻覚。兵士たちの死体を見つけてしまった瞬間。息子の帰りが嬉しくて一緒に寝につく母親の姿・・・。異なった家族がその関係性の中で「息子が帰還した」という同じストーリーを何度も繰り返していきます。その繰り返しによって、戦争を取り巻く人々の状態や心情について次第に理解が深まっていくのです。ストーリーが同じ展開になることを知った上で鑑賞をするので、40分間は長く感じますがゆったりとした話の流れは、戦争の残酷さや家族の温かさ幸せなど、観る側に様々なことについて思慮をめぐらせるために与えられた時間だともいえるでしょう。
人間社会という大きな括りで捉えた時に、生誕から社会に出て死を迎える、ということは万人に共通しています。『コンティニュイティ(連続性)』という作品は、同じストーリー(人生)であったとしても、その時の心と体の状態、人との関係、自分の性格や経験によって感じ方または捉え方が変わることを暗示しています。「幸福」は確かに幸福になりたい人を捜し回っていて、みんな同じ数だけ与えられているのかもしれません。人生のフィナーレを迎えるときに自分の人生が幸せだったかどうかという答えを出すのは、結局のところ自分の心次第なのかもしれないなんて、深いことを考えさせられた今回の「友華乃ぶらりアート」でした。ちなみに私は毎日幸せを感じられる楽観人間です(笑)。
*注釈
国連の調査・・・国連支援のもと2013年度の世界幸福度レポートをコロンビア大学地球研究所が発表。
『幸福はぼくを見つけてくれるかな?
─ 石川コレクション(岡山)からの10 作家』
期間:2014年4月19日~6月29日
時間:11:00 ~19:00 (金・土は20:00まで)
場所:東京オペラシティ アートギャラリー
料金:一般 1,000円/大・高生 800円/
中・小生以下無料
http://www.operacity.jp/ag/exh163/
石川コレクション
株式会社クロスカンパニー代表取締役社長、コンセプチュアルな作品を多く収集するコレクターの石川康晴さんのコレクションである。本展は国際的に注目を集める10組のアーティスト、ミルチャ・カントル、オマー・ファスト、ペーター・フィッシュリ ダヴィッド・ヴァイス、ライアン・ガンダー、リアム・ギリック、ピエール・ユイグ、小泉明郎、グレン・ライゴン、島袋道浩、ヤン・ヴォーの作品を紹介。
引用:東京オペラシティ アートギャラリーHP
https://www.operacity.jp/ag/exh163/j/introduction.html
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