- 2018.12.10
ジョヴァンニ
やすこな文房具 第十回
吉祥寺の中道通りには誘惑が多い。八百屋やレストラン、中華食堂、雑貨屋など、実に様々なジャンルのお店が立ち並んでいて、なかでも雑貨屋や聞いたことがない名前のコーヒー店などはちょっと覗き込まずにはいられなくなる。そんな中道通りを駅前から西へと進んだ先にあるのが「ジョヴァンニ」だ。木製のドアを開けると、なかには遠いヨーロッパの異国情緒あふれる空間が広がっている。
「イタリアの文具は日本やアメリカのものとは違って大きな流通に乗らないものばかりで、その多くがハンドメイドなんです。実際にイタリアに行くと住宅地の真ん中とか八百屋の隣とか、『なんでここにこんな素敵なお店があるの!?』ってビックリするくらい辺鄙(へんぴ)なところに歴史ある工房が建っていることもあって。そういうお店を探すためにも私自身がイタリアへ買い付けに行っています」
こう話してくれた店主の高梨さんは、もともとは大手の文具バイヤーだったが、ヨーロッパで見たことにないような文具たちに出会ったのがきっかけでジョヴァンニを開かれたそうだ。お店に並んでいるイタリア文具や雑貨の数々は、すべて自身で現地に足を運び直接仕入れているそうで、実際に現地へ赴く際は1か月ほどかけてイタリアを北から南へ縦断するのだとか。
イタリアの文具と聞かれると何を思い浮かべるだろうか? 私的には封蝋やベネチアンガラスのペンなどが真っ先に頭に浮かぶのだが、ジョヴァンニで扱っているイタリア文具は私の想像を超える素敵なものばかりだった。ベネチアンガラスのペンはどれも色鮮やかで、思わず立ち止まってお気に入りを探してしまうし、羽ペンはイタリア貴族が使っていそうな優雅さを纏っている。
店内に並ぶ美しいイタリア文具のなかでも、一番印象的だったのが色々な種類が並ぶ封蝋だ。フィレンツェの紋章でお馴染みのマークや薔薇、蝶々、雪のマークといった様々な種類の金色のシーリングスタンプ(封蝋印)はどれも素敵で、片端からすべてのマークを目で追ってしまった。高梨さん曰く、封蝋で使われているマークにはすべて意味があり、使用するのに許可が必要なものまであるのだとか。ちなみにジョヴァンニでは自分の家の家紋などのシーリングスタンプを製作してくれる有料のサービスも行っているそうなので、興味がある方はぜひお店を訪れてみてほしい。
店内にはベネチアのカーニバルでお馴染みの仮面も飾られており、店全体の雰囲気とも相まって、まるで本当にイタリアのとあるお店に迷い込んでしまったような気持ちにさせてくれる。「ボンジョルノ」なんて挨拶も聞こえてきそうだ。置いてある文具も日本ではあまり見かけないものばかりなので贈り物にも喜ばれそうだが、個人的にはガラスペンや羽ペンを使いこなすいつかのために、またジョヴァンニのドアの前に立ちたいと思う。
日本にいながらイタリアの雰囲気を楽しめるエキゾチックなお店でした。
文:橋詰康子 / 写真:西原樹里
ジョヴァンニ
東京都武蔵野市吉祥寺本町4-13-2
営業時間:11:00~20:00
定休日:水曜日
https://www.giovanni.jp/
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