2016.04.22

線香

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 線香。香りの話である。

 

 第二回の「やすこな本棚」で匂いに触れていることに因んで、というわけではない。
 少し湿っぽい話。先月、9歳になる飼い犬が急な病気で亡くなった。形ばかりの弔いもし、線香を立てたりもした。それがきっかけと言えばきっかけで、ただ、香炉に線香を立てる習慣は、家に仏壇がなかった20年以上も前からのことだ。

 

 家に香炉が置かれるようになったのは、母が他界した時だった。当時、仏壇は父の住む生家にあり、位牌はそちらにあったので、自分の住んでいた小さな借家では遺影の小さな写真立てと香炉といった、心ばかりの弔いの形だった。それ以来、香炉は小さなものから大きくなったりと変わりはしたけれど、片づけられることなくずっと置かれ続けている。元来、不信心な者なので、故人の月命日に毎月手を合わせるとか、そういうことはできないでいるが、それでも、ふと思い立った時に線香を立てたりするから、ずっとそこにあることになった。

 
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 日本の伝統的な香。その主原料は、白檀(びゃくだん)や沈香(ぢんこう)というもの。それらをもとに、用途やニーズなどに合わせて調合され作られている。香辛料や生薬としても知られている丁子(ちょうじ)や桂皮(けいひ)なども使われるというから、香りと人の健康には、どこかで密接な関わりがあるに違いない。
 香に詳しかったり拘りがあるわけではないけれど、梅や桜の香りといったものがあれば思わず買ってしまったり、気分で種類の違うのを組み合わせてみるといった楽しみ方をしている。

 

 香の話題だけでは、オヤヂっぽいなと思われるのもしゃくなので、あえて書いておくけれど、アロマとかほかの市販の芳香剤にだってけっこう敏感である。ただ思うのは、和と洋という違いではなく、置けばそれとなく始終香りを漂わせるタイプのものが多いのに比べ、香は焚いた時に立ち上がるという点が大きいと思っている。
 日々われわれは、ずいぶんとたくさんの匂いを嗅いでいる。そんな日常にあって、火を付け香を焚くという手間をかける作業は、ゆっくりと深呼吸をするように過ぎていく時間に節目を作るのに、とてもちょうどよいのではないだろうか。

 

文・写真:西東十一

 

 


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