2015.04.08

「ふわり」とした面白い視点で映像や空間をデザインする【前編】

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「FuwariLAB」(岡田憲一さん:冷水久仁江さん)/クリエイティブユニット

 

「よく、『どんな仕事をされているのですか?』と尋ねられるのですが、私たちもひと言で説明できないのでいつも困ってしまいます」と苦笑するクリエイティブユニット「FuwariLAB(フワリラボ)」の岡田憲一さんと冷水久仁江さん。日常の中で「これは面白そう」と閃いたアイデアを新たな視点で再構築して、参加・体験型のさまざまな空間や装置を創り出している。

 

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その創作の表現方法は、「ひと言では」という言葉どおり多岐にわたる。映像やプロダクト、ワークショップなどの分野にとらわれず、編み出された作品や空間は、「誰もが体験して楽しめるものを創る」という考えに基づき、子どもたちが「ワクワク」するのはもちろん、大人さえも童心に返って楽しめるような「遊び心」に溢れるものばかりだ。

 

実はお二人は、ご夫婦である。岡田さんは関東学院大学の建築学部を卒業後、いちばん楽しかったという「模型を作ったり映像を制作したり、もっとアート寄りのことを学びたくて」英国・ロンドンの「Royal College of Art」(王立芸術大学)に留学。「インタラクションデザイン」を学ぶうちに人が映像と対話するプログラミングが楽しくなり、帰国後はソニー・クリエイティブセンターの開発チームのデザイナーとしてインターフェースデザインに携わった。その傍ら、いろいろなワークショップなどで作品を発表する作家としての活動を行なっていた。

 

その岡田さんの作家活動をサポートしていたのが、久仁江さんだ。関東学院大学で経営学を学びながら「インテリアデザインにも興味を持ち」、インテリアコーディネートの学校にも通いながら両校ともに卒業後、自然派のデザインを手掛ける設計会社に就職。その後は、二人の共同作業が続き、2011年からユニット名を「FuwariLAB」として、創作活動を続けている。

 

「FuwariLAB」の由来を聞くと、「結婚式を、雲の上でふわふわしたパーティにしようと『ふわふわ王国』と名付けたことがきっかけで、ユニット名も後ろに『ラボ』をつけて、研究所や基地っぽいイメージが沸く名称にしました」。

 

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その創作物は、日常に接する素朴な素材を用いて、奇想天外な仕掛けを盛り込んだものが多い。

 

その1つが、「ジラフアイ」(Giraffe’s Eye)である。2012年5月から14年3月までアトリエとして入居していた、期間限定のクリエイターの活動拠点「ハンマーヘッドスタジオ」(横浜市)の日常的な創作活動を真上から撮って編集し、俯瞰して見せる映像を、パソコンの画面上で、手元の紙の「平面図」をなぞりながら場所を移動したり拡大して再生する。

 

この「ジラフアイ」は、「映画製作現場のメイキング映像が好きだったので、クリエイターの成果物だけでなく製作の過程を撮りたい」という岡田さんの発想と、「普段見られない視点から切り取った映像を作品として仕上げたい」という久仁江さんの発想を、2人のアイデアをミックスして1つの完成作品としてまとめあげたものだ。

 

利用者は手元にある紙の平面図を指でなぞりながら、見たいところに移動し、場所を拡大したりしながら再生できる。原理が解っていても、この「不思議感」が面白い。「ジラフアイ」はハンマーヘッドスタジオの「撤収!展」で発表したものだが、「第18回文化庁メディア芸術祭」の審査委員会推薦作品にも選ばれた。ハンマーヘッドスタジオで知り合ったアーティスト仲間からは、「こんな風に仕上がったんだ」と、すでに閉鎖されているハンマーヘッドスタジオの記録映像としても評価されている。iPadのタッチパネルのインターフェースを応用しているのだが、岡田さんは「商業施設や博物館などに向けて、今後の商品化も見据えて展開していきたい」と笑う。

 

この「ジラフアイ」は、5月31日まで東京ミッドタウンの「21_21DESIGN SIGHT」で開かれている「単位展」の設営風景を、同じような仕掛けで展示している。

 

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もう1つは、2013年末から2014年初頭にかけて行なった「ピンホールシネマ」のワークショップ(WS)。ダンボールと、いわゆる「100円ショップ」で売られているルーペをレンズにして、頭に装着できるサイズの箱の中に自分だけの映画館をつくる試みだ。箱の後部にレンズを付け、自分の後ろ側に見えている(はずの)パノラマの景色が箱の中の前面に映し出される仕組みだ。100円のレンズだけで作れる、世界で1つ、自分だけのオリジナルのパーソナル映写箱である。

 

この、手作り感と意外感が楽しいのだろう。WSの参加者は、「みなさん綺麗に映ることにびっくりしていました。この手作り感と学校での工作っぽいところを楽しんでくださったようです」と岡田さん。ただし、「格安のルーペは個体差によって焦点距離がまちまちで、予め用意した数十個のおよそ半分は使い物にならなかったんです。安いルーペってこれほど焦点距離に誤差があるほど雑なつくりなんだってことがわかって、それはそれで面白かった」と笑い顔で話す。結局、使えなくなったルーペを買い足すために、久仁江さんの実家である群馬県のディスカウントショップまでわざわざ出かける羽目になったそうだ。(後編に続く)

 

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■プロフィール
・「FuwariLAB」(フワリラボ)
日頃、「面白い」と思うことを独自の視点で再構築し、「子供ごころ」をキーワードにメディアにとらわれず作品を展開する。大人でも童心に返って楽しめるような空間づくりを目指して表現活動を行う。2014年8月18日に合同会社「LENS」を設立。
・岡田憲一
兵庫県出身。関東学院大学建築学部在学中から映像表現に関心を持ち、卒業後に渡英。ロンドンの「Royal College of Art」(王立芸術大学)に留学し、「インタラクションデザイン」を学ぶ。帰国後、ソニー・クリエイティブセンターのデザイナーを勤めながら、2011年11月に「FuwariLAB」を設立。
・冷水久仁江
群馬県出身。関東学院大学経済学部経営学科に所属する傍ら、インテリアの専門アカデミーでインテリアデザインを学ぶ。卒業後、リノベーションデザイン会社のインテリアコーディネーター、化粧品会社で商品企画・パッケージデザインを手掛けた後、岡田氏と「FuwariLAB」を設立。

 

(文・井関清経 写真・西原樹里)