2014.07.30

机の上には紙とハサミ。さあ、何を作ろう?[後編]

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鍋嶋通弘さん/ペーパークラフト作家

 

 子どもの頃から紙を切ることに楽しみを見出していた鍋嶋さんだが、初めからクリエイターの道を目指していたわけではない。大学卒業後に就職したIT関連企業に勤務時代、度重なる激務やストレスが原因で体調を崩し、入院したのが大きな転機となった。

 

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「時間がたくさんあった入院中、偶然、インターネットでペーパークラフト作家さんを見つけたんです。自分と同じことをしている人がいたんだ!と初めて知って、びっくりしました。佐野市で活動している方だったんですが、退院してから会いに行きました」

 

 この出会いをきっかけにインターネットを通じて“切り紙仲間”が徐々に増え、鍋嶋さんの切り紙への情熱も再燃。職場を辞めた現在は多くのイベントへ出展するほか、仲間のペーパークラフト作家と共同で企画展示なども行っている。中でも、アジア最大級のアート・イベントであるデザインフェスタへの出展は、鍋嶋さんにとって重要なライフワークの一つだ。

 

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「仲間のひとりが出展したときに初めてデザインフェスタの会場へ行ったんですが、会場全体の雰囲気や他の出展アーティスト達のエネルギーに圧倒されたし、刺激も受けました。何より、あの場所で自分の作品が多くの人の目に触れて、認めてもらえるということが大きな魅力ですよね」

 

 自分の作品を気に入ってもらえること。そして、それに対して対価が支払われるということ。ものづくりの現場に携わる時間が長くなるほど、そのありがたみは薄れがちだが、一般企業に勤めていたらなかなか経験できない、いわば“特権”かもしれない。
ところで、これまでに数え切れないほどの虫たちを作ってきた鍋嶋さんだが、手元にはほとんど残っていないのだとか。その理由を尋ねると「(残しておけば)満足してしまって、それ以上いいものが作れなくなる」から、あえて手放すのだという。

 

「我ながら、切り紙を始めた頃と比べると上達していると思います。作品が良くなればなるほど凝り出してしまって、出来上がるまでに時間がかかるのがたまにきずというか(笑)。
常にもっと巧くなりたい、よりリアルさを追究したいと思っていますし、新しい作品もどんどん作っていきたい。僕は本来、飽きっぽい性格なんですが、これだけは飽きないんですよ」

 

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 近年では動物園や水族館、自然公園からの依頼も多く、2014年度は7~9月にかけてアクアマリンふくしまで企画展『むしの学校』を開催。イベント会場で行われるワークショップも好評で、子どもから大人まで、夢中になってオリジナル型紙を使った立体切り紙に取り組む姿が見られる。
鍋嶋さんが作品を通して伝えたいのは、自然の中で遊ぶ楽しさ。残念ながら、カブトムシはスーパーで買ってくるもの、魚は切り身のまま泳いでいるものだと思っている子ども達も少なくない。
 便利になった世の中を憂いているわけではないし、以前に比べて虫や動物が住みにくい環境になってしまったことも事実。でも、都心部にもまだまだたくさんの生き物が暮らしているのだ。

 

身近にいる人が好きなものや趣味に感化されることって、よくありますよね。僕の周りにも、今まで虫や生き物にまったく興味がなかったのに、僕に影響されて好きになったという友人が何人かいるんですよ。子ども達も、身の回りの生き物たちに関心を持ってくれたら嬉しいですね」

 

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プロフィール
鍋嶋通弘
生き物をテーマに、さまざまな立体ペーパークラフト作品を制作。リアルかつ、どこか愛嬌のある作品が評判に。ブログではイベント情報のほか、鍋嶋さんが“ちょっといいコンデジ”で撮影した生き物の写真も紹介している。
http://nabesankirigami.blogspot.jp/

 

(文・河西みのり 写真・西原樹里)