2014.07.16

机の上には紙とハサミ。さあ、何を作ろう?[前編]

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鍋嶋通弘さん/ペーパークラフト作家

 

「子どもの頃から、虫に限らず生き物全般が大好きなんです。動物園に行くと一つの檻の前で動かなくなってしまうから、なかなか前に進まないんですよね(笑)」と、がっしりとした体躯に似合わず(失礼!)、少年のような笑顔を見せるのは、ペーパークラフト作家の鍋嶋通弘さん。

 

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 近ごろ、鍋嶋さんが作る立体的な切り紙作品が密かに注目を集めている。その魅力はなんといっても、今にも動き出しそうな豊かな表情にある。
 例えば、写真のカマキリ。鋭いトゲが並んだ前足にぷっくり膨らんだ腹、こちらを威嚇するような眼差しは、“昆虫界NO.1のハンター”にふさわしい堂々たる風格である。
 驚くのは、すべての作品が下書きを一切せずに切り出されていること。だから、同じ種類の虫を作っても、一つとして同じものはできない。オーダーを受けて作る場合は、出来上がった作品を見てもらい、相手が気に入った段階で商談が成立。いわば“お見合い”のようなやり方は非効率的にも思えるが、考えてみれば森や公園で出合う虫たちだって、一匹として同じものはいないはずだ。

 

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「虫に特化しているわけではなくて、魚や鳥も作るんですよ。でも、虫は一番身近な存在で、手で触れる距離にいるでしょう。紙の質感との相性もいいんです。犬や猫のように、ふわふわとした毛の質感を紙で表すのは難しいですね。
基本的には紙とハサミ、糊だけで作ります。ただ、例えばカマキリの足を紙だけで表現しようとするとどうしても太くなってしまう。よりリアルに作るために、このオオカマキリの足の部分には造花用の細いワイヤーを入れています。ちなみに、ほとんどの人がただ“カマキリ”としてしか認識していませんが、よくいるカマキリの中にはオオカマキリとチョウセンカマキリがいるんですよ。オオカマキリの特徴はね…」

 

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 虫にまつわる、どんな質問にも応えてくれる鍋嶋さんはまるで虫博士! 一度ハマり込むととことん情熱を注ぎ込む性質ゆえ、初めて見る虫と出合う度に、名前はもちろんのこと、何を好み、どんな場所に生息しているかなど生態までも調べずにはいられないのだとか。
 鍋嶋さんが紙とハサミ、たった2つの道具でできる切り紙の魅力を知ったのは中学生の頃。もともと手先は器用で、絵を描くことや工作も大好きだったという。

 

「図工と体育が得意な子どもでした(笑)。男の子ってよく、怪獣のフィギュアを戦わせて遊んでいるでしょう? 僕はその怪獣を見ながら、“もっと顔が怖そうだったら”とか“もっと尻尾が長かったら”と思っていたんです。紙でだったら、自分にでもできるんじゃないかとやってみたのが始まりですね

 

 幼い頃から、クリエイター気質だったことがわかるエピソードである。

 
 

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プロフィール
鍋嶋通弘
生き物をテーマに、さまざまな立体ペーパークラフト作品を制作。リアルかつ、どこか愛嬌のある作品が評判に。ブログではイベント情報のほか、鍋嶋さんが“ちょっといいコンデジ”で撮影した生き物の写真も紹介している。
http://nabesankirigami.blogspot.jp/

 

(文・河西みのり 写真・西原樹里)

 

[後編](7月30日配信予定)へ続く