2016.06.22

世代を超えて心が躍る瞬間を作りだす【後編】

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吉原孝洋さん/飴細工師

 

 2008年、千駄木に日本初・世界初となる飴細工専門店をオープンさせた飴細工師・吉原孝洋さん。吉原さんは日本各地をはじめとして、世界各国でその洗練された飴細工の技を披露しているほか、飴細工の歴史を紐解くことにも努めているそうだ。後編では、吉原さんが飴細工を通して経験したことや、自身が感じとられている飴細工への想いについて紹介していきたいと思う。

 
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「飴細工で使う飴には、原材料のほかに着色料を加えるので、どうしても小さいお子さんの親御さんとかは「これは見るもの」って線引きをされてしまうこともあります。なので、無着色で、小さなお子さんが食べられても安心できるような飴も、店頭では販売されています」

 

「飴」と聞くと、どうしても口の中でなめ続ける時間が長いため、着色料が多く入っているものなどは口の中に色が残ってしまうことも多い。そういった着色料も、例えば小さいお子さんを持つ親御さんであれば心配の種となってしまうのだろう。そういったことも踏まえて、飴を違う角度からアピールしているという吉原さんの姿勢は、「飴細工師だから」と一言で片づけられるものではない。

 
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 学校などで飴について講演することもあるという吉原さん。ご自身も、飴細工の歴史を紐解くことに努めているそうだ。

 

「飴って作るのに原材料を大量に使うんです。だから昔は、飴というのは高級品で、あまり普及していなかったんです。それが江戸時代になると、外で飴細工を売り歩くようになるんですね。当時は今のようにハサミだけ細工するのではなく、飴を膨らませながらそれを細工する技術を使い、売り歩いていたんです。つい何十年前に、今の方法が確立されたんです」

 
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 実際に飴細工師として、海外でもその技を披露することもあるそうだ。国ごとに違うその反応に驚くこともあるという。

 

「いろいろな国へ行くと、その国ごとに反応や好みの飴細工が違っていて面白いです。たとえばアメリカだったら、ピンクとか鮮やかな色の飴細工をリクエストされますね。欧米には日本の飴細工のような類がないので、みなさん驚かれることが多いです。海外に巡業する際は、道具も飴もすべて自分で持っていくことがほとんどですね。もともとは外で売り歩いていたものなので、道具がコンパクトに収まるのは楽ですね」

 

 確かに、世界広しといえど、飴を細工して食べるという風習がある国は少ない気がする。現に、海外で見かける飴は、見るからに甘そうでカラフルなキャンディだ。

 

 また、吉原さんは、海外でも日本でも美味しいものには目がないのだという。

 

「食べ歩きが趣味なんです。新発売されたお菓子や、洋菓子、和菓子なんかも大好きですね。百貨店に出店するときは特に、和菓子屋さんや洋菓子屋さんとお話して、いろいろな刺激をもらいます。飴はどの国にも共通している菓子でもあるんです。仕事で海外に行くときも、現地の情報を調べて美味しいものを食べに行くのが楽しみです」

 
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仕事でもあり趣味でもあり、僕にとって飴細工は切り離せないものです。休みの日も四六時中飴細工のことを考えていますし。疲れちゃうんですけど、それでもいつも考えちゃうんです。お客さんとやり取りをしながら飴細工を作るのは、最初はすごく緊張するんですけど、やっぱりすごく楽しいです

 

 プライベート時間も仕事のことを考えているというのは、なんだか気が休まらなくて大変そうにも思われる。しかし、そう話してくれた吉原さんの目に、辛さは微塵も見受けられなかった。おそらくそれは、吉原さんが今に至るまで様々な葛藤を乗り越えてきたからに違いない。

 

 吉原さんの心の中には、今も変わらず幼い時に見たという飴細工が、憧憬の対象として存在し続けているのかもしれない。そして彼もまた、誰かにとっての思い出の1ページとして心に居続けるのだ。今後さらに、飴細工について語ってくれた時の彼のようにキラキラとしている飴細工たちに会えるのを楽しみにしたいと思う。

 
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◆プロフィール
吉原 孝洋 (よしはら たかひろ)
幼い時に見た飴細工に憧れ、2002年から師匠につき活動を開始。2008年には日本初となる飴細工の専門店「あめ細工吉原」をオープン。その後はテレビや雑誌など、様々なメディアで飴細工を披露するなど、懐かしくも新しい飴細工を作りだすお店の代表飴細工師として活躍中。

 

「あめ細工吉原」ホームページ:http://ame-yoshihara.com/
ブログ:http://blog.ame-yoshihara.com/
FACEBOOKページ:https://www.facebook.com/amezaikuyoshihara

 

(文・橋詰康子 写真・西原樹里)