2015.04.22

「ふわり」とした面白い視点で映像や空間をデザインする【後編】

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「FuwariLAB」(岡田憲一さん:冷水久仁江さん)/クリエイティブユニット

 

 もともと、二人の経歴と方向性は「空間を作る」ことで共通していた。ワークショップ(WS)で参加者が作品を作っているときにも空気感が変わり、二人が創作した作品を置くだけでも「場の空気」が変わる。その空間演出には、久仁江さんがインテリアコーディネーターアカデミーで学んだ「リフォーム」や「リノベーション」の経験が生かされ、岡田さんがこれまで手掛けてきた映像と光による「ライブハウス」などの空間演出のノウハウが活用されている。

 

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 3月1日に東京・代官山で開業した、アーティストと地域の家族が集うコミュニケーションスペース「SodaCCo」のオープニングイベントでは、「シャボン玉マシン」を製作して設置した。船に似た「SodaCCo」の建造物の造形をモチーフにして、子どもたちが船の舵を切るとシャボン玉が「ふわふわ」と作り出される装置だ。その仕掛けに子供たちは大はしゃぎで、それを見守る親御さんたちも笑顔にあふれていたという。

 

 シャボン玉装置は、置くだけで自由気ままに子どもたちが声を上げて楽しみ、その周りの空間は「遊び」と「楽しさ」に満ち溢れる。二人の思い通りに、場の空気が作り上げられるのだ。

 

 「私たちの創作物が人の生活に役立つか……という視点で言えば、あまり役立つものではありませんよね」と二人は苦笑する。しかし、すべては「生活を楽しくする」ことを目指して創り出されている。たとえば、「ソーラー・ムーンライト」は、太陽が差し込む窓際に置いておき、周囲が暗くなると自動的に月の灯りが点灯する小さな箱だ。陽が落ちた頃にじわりと部屋の中に月明かりが自然に灯る、とても素敵な仕掛けだ。久仁江さんは「ソーラー・ムーンライト」を手に取って「昼間集めた太陽の光をソーラーライトを使って月のシートに当てるだけのごく簡単な仕組みです」と満面の笑みで言う。その笑顔には、素朴なモノを作ることが楽しくて仕方ないという気持ちが見て取れた。二人の作品は、人々の生活の中で「楽しさ」や「癒し」をさりげなく与えてくれるものがとても多い。

 

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 また、Webサイトで公開されている「Happy Birthday Film」は、友達の誕生祝いにオリジナルのビデオメッセージを贈る実験的なプロジェクトだ。わずか40秒ほどのショートムービーの中に「ちょっとした不思議」のエッセンスを加えて、贈り手のお祝いの気持ちを不思議感で代弁するような創意工夫を凝らしている。短い動画の中に「このムービーなら自分でも作れそう」といった創作意欲をくすぐる「親近感」を与える映像に仕立てるのがポイントという。

 

 岡田さんはもともと、ソニーでさまざまな製品のデザイン開発に携わっていた。その当時「使い勝手や操作が『楽』になる」ことを重視して仕事に携わっていたが、「操作が『楽しくなる』」ことに置き換えて開発の発想を改めると、このような作品が次々に生まれてきた。

 

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 「ラジコンがスマートフォンで操作して飛ばせるデジタル全盛の中で、アナログな操作で習得が難しくて時間がかかっても、それが『苦』ではなく『楽しく』なる仕掛けに価値が生まれるのだと思います。何かを作っていても『大変』ではなく『楽しい』と感じさせる工夫ですよね。言わば「トム・ソーヤ現象」にも似た、創作が楽しくなる道具や環境を作り出すことが目指すところなのです」。

 

 2人の間では「『妖怪プロジェクト』と勝手に名付けているのですが、たとえば大道芸のパントマイマーに替わるような、現れるだけで空気を一変させる『妖怪』みたいな装置を作りたいですね。『SodaCCo』で作ったシャボン玉マシーンを進化させて、ただ人が近づくとシャボン玉を自動的に吐き出す『生き物』だとか、あるいは人の気配を察知して人に向かって水鉄砲を打ち出す装置なんて、面白いですよね。空間とは、人の存在であり気配であり、装置など何かの存在で変わります。今は、WSやイベント会場での創作活動が主ですが、もっと実験的なプロダクトを積み重ねて、いずれは一般消費者に届けられる製品を手掛けられたらいいですね」と夢は広がる。

 

 その製品については、「アナログで身近な仕掛けとデジタルが融合したもの」という。未来の製品は、これまで2人が手掛けてきたモノづくりのコンセプトの延長線上にある。「これまでの作品も、湧き出たアイデアは、実際に完成してみないと当人たちでも見当がつかないものが多かった」が、それらの空間や装置はすべて、大人と子どもたちを楽しい気分にさせてきた。どんな製品が出てきて、また気持ちを「ふわふわ」と楽しませてくれるのか、とても楽しみだ。

 

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■プロフィール
・「FuwariLAB」(フワリラボ)
日頃、「面白い」と思うことを独自の視点で再構築し、「子供ごころ」をキーワードにメディアにとらわれず作品を展開する。大人でも童心に返って楽しめるような空間づくりを目指して表現活動を行う。2014年8月18日に合同会社「LENS」を設立。
・岡田憲一
兵庫県出身。関東学院大学建築学部在学中から映像表現に関心を持ち、卒業後に渡英。ロンドンの「Royal College of Art」(王立芸術大学)に留学し、「インタラクションデザイン」を学ぶ。帰国後、ソニー・クリエイティブセンターのデザイナーを勤めながら、2011年11月に「FuwariLAB」を設立。
・冷水久仁江
群馬県出身。関東学院大学経済学部経営学科に所属する傍ら、インテリアの専門アカデミーでインテリアデザインを学ぶ。卒業後、リノベーションデザイン会社のインテリアコーディネーター、化粧品会社で商品企画・パッケージデザインを手掛けた後、岡田氏と「FuwariLAB」を設立。

 

(文・井関清経 写真・西原樹里)