2017.09.27

大ダルマ制作200年記念「パフォーマー☆北斎」

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大ダルマ制作200年記念パフォーマー☆北斎 〜江戸と名古屋を駆ける〜」
 

2017年9月8日(金)飯島順子
 

世界的に名高い浮世絵師、飾北斎がパフォーマーとしても活躍していたのをご存知でしょうか? 折しも、今年は北斎が名古屋で120畳大の巨大ダルマを描くパフォーマンスを行って200周年。それを記念した企画展が、すみだ北斎美術館で9月9日〜10月22日まで開催されています。先日、一般公開に先立ち、プレス向けに行われた内覧会に行ってまいりました。
 

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大道芸や見世物の情景を『北斎漫画』で堪能
 

飾北斎の代表作といえば、何といっても「冨嶽三十六景」でしょう。特に「神奈川沖浪浦」は有名で、ゴッホやモネなど、西洋絵画の巨匠たちにも多大な影響を与えたばかりか、ドビュッシーは交響詩『海』を作曲したほどです。でも、私が北斎の魅力にはまったのは、25、26歳の頃、母に誘われて出かけた『北斎漫画』の展覧会がきっかけです。鋭い観察力、優れたデッサン力に感銘を受け、無我夢中で一つ一つの作品を見て回りました。『北斎漫画』は彼の奇才ぶりや時代背景を知るうえでも、非常にわかりやすく、好奇心をくすぶるものがたくさんあります。
今回の企画展は全四章で構成されており、北斎のパフォーマーとしての活躍にスポットを当て、『北斎漫画』の全編公開をはじめ、パフォーマンスの宣伝チラシの展示や大ダルマの制作、米粒アートなどの再現も行われ、見ごたえたっぷりの内容です。その中から私が印象に残った作品をご紹介します。
 

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『北斎漫画』初編、文化11年(1814)、すみだ北斎美術館蔵

 

まずは、第一章「江戸と名古屋のにぎわい」から、江戸のパフォーマーの様子がうかがえる『北斎漫画』の初編。左ページの下に描かれた、頭から水をかぶっている男性に注目を。人々からお金をもらい寒行をする願人坊主です。「寒さなんて、へっちゃら」といわんばかりの表情ですが、幾分、やせ我慢の様子も…。他にも恰幅のよい男性が人さし指で桶を立たせていたり(左ページの下段)、高下駄を履いた男性が杯やとっくりでジャグリングをしていたり(右ページ下段)、見ているだけでも楽しい気分になれます。
 

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「麦藁細工の図」、文政3年(1820)、太田記念美術館蔵

 

「麦藁細工の図」は、麦藁細工の見世物を描いた錦絵。三国志に出てくる諸孔明(しょかつこうめい)の招き人形、十二支の額面、籠の中の丹頂鶴、青龍刀の柄に描かれた三国志の英雄などが圧巻です。北斎はこの下絵も手がけています。生涯、貧困暮らしであったといわれる北斎ですが、なかなかの商売上手だったのではないでしょうか。宣伝チラシの「麦藁張細工絵番付」も展示されているため、色鮮やかな錦絵が下絵からどうアレンジされたのか、構図の違いも比較できます。
 
 

渾身の力作『北斎漫画』の全編を一挙公開
 

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左)『北斎漫画』の版本と袋が展示されたコーナー、すみだ北斎美術館蔵
右)『一筆画譜』、文政6年(1823)、名古屋市博物館蔵

 

第二章「北斎漫画の誕生」では、『北斎漫画』全十五編が一堂に会しています。各編と連動して版本の包装紙「袋」が展示されているのも貴重です。思うがままに描かれた『北斎漫画』は粋で、シニカルであったり、コミカルであったり、時代や国を超えて、見る人の心にさまざまな感情を呼び起こしてくれる不思議な力があります。私が気になった作品は十二編に出てくる、タコに襲われそうになって、必死に逃げようとしている人たち。後で調べてみると、タコは芋が好きで、海から上がって芋畑の芋を盗むという俗説があったようです。下の方には「膽が芋に成る」と書かれていて、これは「肝を潰すこと」。予想外のできごとに驚く様子を表しています。その右ページにある、ダルマが顔を縦、横に伸ばして、にらめっこをしている絵もユニークです。
また、一筆書きの教本ともいわれる『一筆画譜』も展示されており、北斎のデッサン力に目を奪われました。紙から一度も筆を離すことなく、一本の線で描かれたウサギや猫、鳥、大道芸人の描写が見事です。
 

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『北斎漫画』十二編(前期)、天保5年(1834)、すみだ北斎美術館蔵

 
 

北斎のユニークなアイデアが集結した大ダルマ
 

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左)「北斎大画即書細図」(後期展示) 高力猿猴庵著・文化14年(1817)成立、江戸時代後期写、名古屋市博物館蔵
右)「北斎大画即書引札」、文化14年(1817)、名古屋市博物館蔵

 

いよいよ本展のクライマックス、第三章「大パフォーマンス ──北斎、大ダルマを描く!」です。北斎が畳百二十畳大(18×11メートル強)の大ダルマを最初に描いたのは1804年、江戸の音羽にある護国寺で。それから13年後の1817年に名古屋の西本願寺掛所で大ダルマのパフォーマンス。現物は残されていませんが、当時の様子は「北斎大画即書引札」から知ることができます。引札は宣伝ポスターで、大ダルマの目、口、面のサイズ、筆はしゅろほうき、竹ほうき、米俵5俵を使うこと、雨天の場合は延期となる内容が記されています。
「北斎大画即書細図」は、尾張藩士で文筆家の猿猴庵(えんこうあん)によるもの。大ダルマパフォーマンスの様子を描いた貴重な資料です。また、本展の入口前のスペースには、大ダルマ制作を体験できるコーナーもできているので、こちらもぜひ。
その他に、写真に収められませんでしたが、米1粒に2羽のスズメを描いた北斎のパフォーマンスを再現したもの。紙にブルーの絵の具をつけた刷毛で川の流れを描き、チャボの足に絵の具をつけて、その上を歩かせて「竜田川に紅葉の図」を再現したユニークな試みも紹介されています。
 
 

「冨嶽三十六景 尾州不二見原」も見られる第四章
 

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「冨嶽三十六景 尾州不二見原」の原寸大パネル、すみだ北斎美術館蔵

 

最後、第四章「名古屋に残した北斎の足跡」では、名古屋の版元から本の出版やパフォーマーとしての活躍をたどる以外に、牧墨僊(まきぼくせん)、沼田月斎(ぬまたげっさい)、北鷹(ほくおう)など、門人たちの秀作が展示されています。また、この章で「冨嶽三十六景 尾州不二見原」も紹介されています。残念ながら前期はパネルのみ。後期に実物が展示されるため、会期中に再訪したいと思っています。
 

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©Forward Stroke

 

すみだ北斎美術館は近未来的な外観も素敵で、昨年11月にオープンしたときから訪れてみたかった美術館です。既に今年9月8日の時点で、総入館者数は30万人以上を記録。コンパクトな美術館ですが、北斎の作品とじっくり向き合うには、ちょうどよい広さに感じました。本展の期間中、9月30日(土)と10月7日(土)は14時〜30分程度、スライドトークも開催されます。こうしたイベントに参加して、北斎の作品をより深く鑑賞してみると、新たな楽しみが広がりそうです。
 
 

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招待券をプレゼント!
本コラムの読者の皆さまに感謝を込めて、抽選で5組10名様に、大ダルマ制作200年記念「パフォーマー☆北斎 〜江戸と名古屋を駆ける〜」の招待券をプレゼントします。メールフォームの件名を「北斎」として、「お名前」、「メールアドレス」、内容欄に「送付先の郵便番号・住所」を明記のうえ、ご応募ください。
応募締切:2017年10月9日(祝)

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大ダルマ制作200年記念「パフォーマー☆北斎 〜江戸と名古屋を駆ける〜」
会期:前期 2017年9月9日(土)〜10月1日(日)
   後期 2017年10月3日(火)〜10月22日(日)
※各期で一部展示替えあり
時 間:9:30〜17:30(入館は17:00まで)
休館日:毎週月曜日(ただし、10月9日は開館)、10月10日(火)
会 場:すみだ北斎美術館 東京都墨田区亀沢2-7-2
主 催:墨田区・すみだ北斎美術館、東京新聞
お問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
http://hokusai-museum.jp/daruma/

 
 


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