2017.06.14

大エルミタージュ美術館展 オールドマスター西洋絵画の巨匠たち

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2017年5月26日(金)Qunico(アクセサリー作家)
 

確かに“本物”は裏切らない。そしてつけ入る隙もない。
 

私が「死ぬまでに絶対に訪ねたい」と思っている美術館の一つ、ロシアのサンクトペテルブルクにあるエルミタージュ美術館。約310万点もの所蔵品があり、日本でも数年ごとに企画展が開催される人気の場所です。その美術館展が、今年も東京・名古屋・神戸の3都市を巡回します。前回東京で行われたのは確か2012年。その時はどうしても時間が取れず泣く泣くあきらめたこともあり、次こそと待ちわびていました。
 

今回の出品作は、16世紀ルネサンス、17-18世紀のバロックやロココの巨匠たちの傑作85点。ティツィアーノ、クラーナハ、レンブラント、ルーベンス、ヴァトー、ブーシェなど、西洋絵画好きにはたまらない贅沢なセレクトは、アクセサリー作家としての創作にも、素敵なインスピレーションを与えてくれる予感も強く、それをしっかり持ち帰りたい! と、撮影ナイトという全作品の写真撮影OKの特別な日に訪ねてきました。
 

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創立者・女帝エカテリーナには不要な首飾り
 

実は私が「死ぬまでに絶対行きたい」と思っている理由は、所蔵作品の魅力、建築物としての壮麗さの他にももう一つあります。それは、美術館の創立者である女帝エカテリーナ2世を題材にした、池田理代子作の漫画「女帝エカテリーナ」で、彼女の物語のファンになったから。
 

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グッズ売り場にも置かれていた、池田理代子作「女帝エカテリーナ」とグッズのクリアファイル

 

エカテリーナは14歳でドイツを離れロシアへ。言葉の習得はもちろん、倒れるほど勉学に励み、国民に受け入れられるようにロシア人たらんとして宗教も改宗。後にロシアの血をもたないロシアの女帝として君臨し、国土を発展させます。同じ女帝でも、オーストリアのマリア・テレジアのように継承によって王位を受け、かつ恋愛結婚をしたある意味恵まれた人生とは違い、愛のない結婚をした夫から我慢の末にクーデターによって王位を奪うという激しい人生です。その後は生き生きと政治に才能を発揮し、芸術を愛し自由な恋愛も謳歌するのですが、自分で運命をつかみ取っていく力強い生き方に魅せられ、この物語の舞台を肌で感じてみたいと思っていました。
 

そんなファン心理もあり、まだ現地には行けそうにないので、この美術展で少しでもその空気を感じられたらという期待もあったのですが、その思いを歓迎するかのごとく、入ってすぐにエカテリーナ2世の戴冠式の姿を描いた肖像画がありました。まるで「私の隠れ家にようこそ」と出迎えてくれているように(エルミタージュはフランス語で「隠れ家」の意)。いきなりのご対面に内側から湧き出るような高揚感を覚えつつも、女帝としての圧も強く感じます。それは期待通りで嬉しくもありましたが、「今日は心して観なくては。」と、少し緊張感を持ちました。
 

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ウィギリウス・エリクセン《戴冠式のローブを着たエカテリーナ2世の肖像》

 

知性を表す鷲(ロシア帝国を統治していた皇室・ロマノフ家の紋章「双頭の鷲」)をあしらった豪華な衣装、権力を意味する王冠や王杓、そして何より、堂々とした佇まいから溢れる彼女の知性的な魅力が、しっかりと伝わってくる作品です。
美しい女性の肖像画を見ると、どんなジュエリーが合うかなと想像を巡らし、そこからデザインのインスピレーションを受けることもあるのですが、このエカテリーナの肖像画は、「私に不足しているものはなにもないわ」と言わんばかり。つけ入る隙を与えてくれませんでした。女性としては何かネックレスを着けたくなりそうなデコルテの開き具合ですが、権力を誇示する「女帝の戴冠式」には不要でしょうし、何より内面から溢れる美しさをかえって邪魔しそうな気すらします。画家の腕はもちろんのこと、彼女の生き方あってこその肖像画なのでしょう。
 
 

寄り添ってくれた各国のミューズたち
 

1枚目からすでにお腹いっぱいのスタートも、本編はここから。国別(地域別)に6つの章構成にまとめられ、今回のポスターに記された「本物は裏切らない」というコピーに納得の傑作が続きます。エカテリーナ2世の肖像画同様に作品の完璧度が高く、絵に加えたくなるようなジュエリーは浮かばなかったのですが、創作意欲を掻き立ててくれる何人かのミューズに出会えました。
 

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「第1章 イタリア:ルネサンスからバロックへ」より
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《羽飾りのある帽子をかぶった若い女性の肖像》

 

巨匠ティツィアーノの作品。男性の帽子を借りて男装を楽しんでいるという説もあるこの絵。綺麗な女性がボーイッシュな恰好をすることで、そのギャップから女性としての魅力がより引き立っています。現代のスタイリングでもよく使われる技でもあるからか、美しいだけでなくお洒落な絵というのが第一印象でした。しかも帽子部分は、作者が一度頭部を完成させてから、あとから描き足したとか。そうした真意はわかりませんが、その流れはスタイリングと同じ。絵の巧みさは変わらずともこの帽子がなければもっと味気ない印象で終わっていた気がします。
私は男女とも使える男っぽいデザインも作るので、そのスタイリングのヒントも与えてくれました。
 

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「第2章 オランダ:市民絵画の黄金時代」より
ヘラルト・テル・ボルフ《カトリーナ・レーニンクの肖像》

 

リボンのモチーフが愛らしいものの、黒いドレスに幸薄そうなスリムな体型。さらに小さめのキャンバスに余白たっぷりに全身を描かれているのもあってか、守ってあげたいと目が離せなくなります。華やかなジュエリーを加えると負けてしまう気がしますし、これ以上何かをプラスすることは、この女性の繊細な魅力を消してしまいかねない。感じたのは、「強い黒」ではなく「儚い黒」。いつか形にしたいテーマが増えました。
 

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「第5章 フランス:古典主義的バロックからロココへ」より
ジャン=バティスト・サンテール《ヴェールをまとう若い女性》

 

隠されると見たくなるし気になるのが人の心理。明るいところで見た彼女の瞳は何色なのか、見つかったら困るからなのか、悲しみを隠しているのか、でも口元は少し笑っているようにも見えるし……。見る限り絵の中にジュエリーは描かれていませんが、色々な想像を掻き立てるヴェールの存在が、身に付ける人の魅力を引き立てるジュエリーと同等の役割りを果たしています。秘める美しさには、やはりそそられます。
 

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「第6章 イギリス・ドイツ:美術大国の狭間で」より
トマス・ゲインズバラ《青い服を着た婦人の肖像》

 

彼女の白く透き通った肌そのものが、もうパールのよう。そう思うと、ロココらしいビッグなヘアスタイルもバロックパールのように思えてくるという、少しふざけたイマジネーションも。そこから、パールを2つ連ねてブルーのリボンと合わせた、夏に似合う耳飾りが浮かびました。これほど具体的にさっとイメージできることはあまりないのですが、ロココというデザイン的にわかりやすく華やかな時代のものだからかもしれません。
 

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 クラーナハの《林檎の木の下の聖母子》          スルバランの《聖母マリアの少女時代》

 

他にも、ポスターにもなっているクラーナハの《林檎の木の下の聖母子》やスルバランの《聖母マリアの少女時代》など、チラシなどで取り上げられているとおり、巨匠たちの名画が盛りだくさんでした。それはそれは西洋絵画ファンには大満足の内容でしたが、私には絵画作品自体の魅力がすごすぎたようで、エカテリーナ2世の時代背景までも楽しむ余裕は正直残っておらず……。ただ、章ごとに赤やグリーンなど壁が色分けされており、それが視覚的にまとまりがわかりやすいだけでなく、都心の現代建築ではないエルミタージュ美術館の豪華な宮殿空間にいる気分を少し味合わせてくれました。
 

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和ませてくれたロシアゆかりのグッズたち
 

最後に、たっぷり鑑賞し終わった満腹状態を和ませてくれたのが、ロシアゆかりのオリジナルグッズたちでした。ロシアといえばマトリョーシカ。マグネットやジャム仕様のものまで、伝統的な可愛らしい絵柄のマトリョーシカがたくさん並んでいました。
 

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それともう一つ、ロシアの国民的キャラクターのチェブラーシカ。「なりきりチェブぬいぐるみ」といって、展示作品になりきったスペシャルバージョンのぬいぐるみがありました。実はチェブラーシカは、子供でも楽しめる音声ガイドの担当もしています。私は通常版でスペシャル・ナビゲーター又吉直樹さんの恐ろしいほど棒読みコメントを楽しみましたが、チェブラーシカ版はクイズも交えながらの案内だそうです。
 

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今回は写真撮影が可能だったこともあり、少しそこに夢中になりすぎてしまった反省もあるので、東京の会期はもうまもなく終わってしまいますが、できればその前にもう一度、今度はチェブラーシカの音声ガイドをお供に、オールドマスターの作品をゆっくり堪能しに行こうと思います。
 
 

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大エルミタージュ美術館展 オールドマスター西洋絵画の巨匠たち
 

東京展
会期:2017年3月18日(土)〜6月18日(日)
会場:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ 森タワー52階)
開館時間:10:00〜20:00(入館は閉館30分前まで)
http://hermitage2017.jp/
 

名古屋展
会期:2017年7月1日(土)〜9月18日(月・祝)
会場:愛知県美術館
開館時間:10:00〜18:00 金曜日は20:00まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:毎週月曜日、7月18日(火)
    (但し、7月17日、8月14日、9月18日は開館)
http://www-art.aac.pref.aichi.jp/exhibition/index.html
 

神戸展
会期:2017年10月3日(火)〜2018年1月14日(日)
会場:兵庫県立美術館
開館時間:10:00~18:00(入館は閉館の30分前まで)
     金・土曜日は20:00まで開館(但し、12月29日、30日を除く)
休館日:月曜日、10月10日、1月9日、年末年始(12月31日、1月1日)
    (但し、10月9日、1月8日は開館)
http://www.ytv.co.jp/hermitage/

 
 


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