2017.04.07

MOMATコレクション

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2017年3月29日(水)渡邉 理絵

 

― 桜の表情と共に ―

 

桜の季節になりました。桜の名所で有名な千鳥ヶ淵の近くにある東京国立近代美術館では、桜と共に楽しむイベント「美術館の春まつり」と合わせて、所蔵作品展「MOMATコレクション」が開催されています。13,000点を超える所蔵作品から約200点を厳選して展示する今回の所蔵作品展。この季節だけに公開される「桜」に関する作品を目当てに、竹橋駅へ向かいました。駅を出ると、すぐ目の前に東京国立近代美術館が見えてきます。美術館の4階にある「眺めのいい部屋」からはこんな景色。皇居の目の前で、桜が咲く頃にはお堀と桜の景色が広がります。

 
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今回の所蔵作品展は、2階から4階までにわたり、日本の近代美術だけではなく、日本の美術家に影響を与えた西洋の近代美術や絵画、彫刻、写真など様々な作品を見ることができます。
目当てにしていた「桜」の作品は4階にあります。例年より少し開花が遅れていた本物の桜より一足先に「満開の桜」を見ることができました。

 

まずは川合玉堂(かわいぎょくどう)の《行く春》(重要文化財)です。
六曲一双(6枚の屏風が2組)で描かれた大きな作品です。

 
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川合玉堂《行く春》1916年 重要文化財(展示期間:4月16日まで)

 

長瀞(埼玉県秩父郡)の山間に流れる川の急流や、脇にそびえ立つ崖や岩などの荒々しい描写の中で、満開の桜の木の枝と舞い散る桜の花びらが春の訪れと優しさを添えてくれています。舟があることで、風景画の中でも近代の人間の暮らしが垣間見える作品となっています。展示されている右隻(写真下)から左隻(写真上)へ歩いて見ていくと、まっすぐ歩いているのに山の奥へ進んだかのような、自然の臨場感と奥行きを感じます。そして最後に目の前に現れた満開の桜に、思わず立ち止まってじっくり見入ってしまいました。間近で見た時の存在感には圧倒されますが、遠くから全体を見渡すと、まるで長瀞へ桜を見に行ったかのような気持ちになり、有名な「長瀞渓谷ライン下り」に行ってみたくなりました。長瀞が国指定の名勝・天然記念物に指定されたのは1924年で、この絵が発表されたその少し後のことです。

 

もう一つ、六曲一双の大きな作品があります。
菊池芳文(きくちほうぶん)の《小雨ふる吉野》です。

 
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菊池芳文《小雨ふる吉野》1914年(展示期間:4月16日まで)

 

吉野山が名勝として国に指定されたのはこの絵が発表された後の1924年のことですが、遡る1594年には豊臣秀吉や徳川家康などが大花見を行ったことでも有名な地です。今も昔も変わらない桜の花を、歴史上の人物が同じように見ていたと思うと感慨深いですね。
菊池芳文は桜の名手とうたわれた画家だということ。桜の遠近の描写も美しかったですが、大きく描かれた桜の花びらの下のほうの絵の具が垂れそうに立体的になっているのを見て、本当に小雨に濡れている桜の花びらを見ているような錯覚を覚えました。

 

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さて、もう一つの桜の作品をご紹介します。松林桂月の《春宵花影図》です。
桜の作品が見られるのは桜の季節だけ、という貴重さだけではなく、他館への貸し出しや修復がかぶらず、上記の二点と合わせてこの三点が揃って展示されるのは八年ぶりとのこと。

 
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松林桂月《春宵花影図》1939年(展示期間:4月16日まで)

 

こちらは屏風ではなく掛け軸の作品でとても風情があります。後ろに月がぼんやり見え、夜桜と少し霧がかった様子が墨の濃淡でとても綺麗に表現されています。薄いピンクの桜が夜の暗がりでは白く見える様子が目に浮かび、白黒の作品の中にカラーの作品と同じようなリアリティが感じられます。

 

桜の作品以外には、重要文化財の岸田劉生(きしだりゅうせい)《道路と土手と塀》(1915)(写真左)、藤田嗣治(ふじたつぐはる)《自画像》(1929)、奈良美智(ならよしとも)《Harmless Kitty》(1994)、高村光太郎《手》(c.1918)(写真右)などが印象に残っています。

 
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また、何年か前に訪れた時にも同じ場所にあり、今回も出会えたアントニー・ゴームリー「反映/思索」(2001)という人間の等身大の置物の作品は妙に気になる存在です。2体が大きな窓の中と外で向き合って立っています。気になる方は2階に行けば必ず出会えますのでご覧ください。

 

「美術館の春まつり」期間には、2階のレストラン「ラー・エ・ミクニ」でテラスカフェをオープンしていて、フランス料理で有名な三國清三シェフのプロデュースするレストランのパニーニやお花見弁当を買え、作品以外でもお花見気分を盛り上げてくれます。こちらは4月9日(日)までです。

 
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帰り道は、「千鳥ヶ淵さんぽみち」と案内板のある千鳥ヶ淵縁道を歩いて、北の丸公園や武道館、重要文化財「田安門」を通り抜け、九段下駅から帰りました。子連れだったため、駅のエレベーターを求めて遠回りしたのもあるのですが、この道は本当に散歩にちょうど良く、東京国立近代美術館の工芸館に立ち寄ったり、子供が北の丸公園で走り回ったりすることもでき、公園の桜もまだあまり咲いていなかったですが、展示の桜の余韻ですっかりお花見気分を味わうことができました。

 
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取材に訪れた日の千鳥ヶ淵の桜と、4月4日の桜です。
山間の桜、小雨の桜、夜桜と色々な表情を見せてくれる日本画の桜と共に是非味わってみてください。

 
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MOMATコレクション
会 期:2017年2月18日(土)~5月21日(日)
    【前期】2月18日(土)~4月16日(日)
    【後期】4月18日(火)~5月21日(日)
休館日:月曜日(ただし5月1日は開館)
時 間:10:00~17:00(金、土は20:00まで)※入館は30分前まで
    ※春まつり期間中(3月28日~4月9日)の金、土は21:00まで
会 場:東京国立近代美術館 本館4-2階 千代田区北の丸公園3-1
入場料:一般430円(220円)、大学生130円(70円)
    ※( )内は20名以上の団体料金
http://www.momat.go.jp/am/exhibition/permanent20170218/