2016.12.23

マリメッコ展 ─ デザイン、ファブリック、ライフスタイル

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女性たちを新しい一歩に導いた大胆なデザイン

 

2016年12月16日(金) 佐藤愛美

 

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「色にはそれぞれ波長がある」という話を、友人の画家から聞いた。
色とは、物体に塗料が塗ってあるのではなく、それぞれの色が目には見えない波長を持ち、光や音と同じように人間に感知されているという話だ。たとえ視力がない人であっても、目以外の器官が色を感知し「暖かい」とか「静か」とか、“感じる”ことができるのだそうだ。
私は色のことを専門的に勉強したわけではないが、この説が本当だとしたら、色が人に与える影響はとても大きなものに違いないと思った。

 

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12月17日よりBunkamura ザ・ミュージアムにおいてスタートした『マリメッコ展』。パッと目をひく鮮やかな色の花模様は、誰もがどこかで一度は見たことがあるだろう。今回は、開催に先立って行われた開会式と内覧会にお邪魔し、個性を放つマリメッコの作品たちに触れてきた。

 

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1951年にフィンランドにて創業されたデザインハウス「マリメッコ」は、現在はファッション界だけではなく、インテリアや家庭用品の分野にまで展開され、世界的に知名度の高いブランドとなっている。今回、Bunkamura ザ・ミュージアムに展示されている作品は200点以上にのぼる。ここでは、フィンランド・デザイン・ミュージアムに所蔵されているファブリックやヴィンテージドレスや関連アイテム、各デザイナーによるデザインスケッチなどを鑑賞することができる。
60年にわたる歴史の中で、マリメッコには才能豊かなデザイナーたちが集まり、個性的なデザインが数多く生まれてきた。日本人の脇坂克二も、ブランドを代表するデザイナーの一人である。

 

ファブリック ≪ウニッコ≫(ケシの花)、図案デザイン:マイヤ・イソラ、1964年
Unikko pattern designed for Marimekko by Maija Isola in 1964

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マリメッコで最も有名なファブリックと言えば「ウニッコ(ケシの花)」だろう。ブランドの名前を聞いただけで、大きなピンクの花が脳裏に浮かぶ。華やかで、力強く、全ての人を注目させるこのデザインは、私にとって《自分のファッションには取り入れる勇気がないけれど、憧れの存在》であった。

 

そんな「ウニッコ」に関する貴重な裏話を、フィンランド・デザイン・ミュージアムの学芸員であるハリー・キヴィリンナ氏が教えてくれた。

 

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「このデザインが生まれた当時、フィンランドでは花柄が大流行していました。ブランドの創業者であるアルミ・ラティアはこの流れを受け、花柄のデザインは絶対に作ってはいけないとデザイナーに命じたのです。マイヤ・イソラはその命令に反し、大きなケシの花のデザインを作り上げてしまったのです!絶対に作ってはいけないと言われたら、反発して絶対に作りたくなるのがデザイナーの性分です」

 

最も有名なデザインは、なんとデザイナーの反発心から誕生したものだったのである!マリメッコのデザインが私の中で憧れの存在に留まっている理由は、イソラのようなデザイナーたちの意志がそこに宿り、色や模様を通して力強いメッセージを発信していたからだろうか。それは、冒頭で述べたような、目には見えない、色による刺激なのかもしれない。

 

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マリメッコが誕生した1950年代は激動の時代であった。戦争が終わり、新しい時代へと移り変わろうとしていた時である。それは、フィンランドの女性たちの解放も意味していた。
そういった時代背景をファブリックと服のデザインに活かし確立させたのは、初の正社員デザイナーであるヴオッコ・ヌルメスニエミだった。彼女は、女性たちをコルセットから解放したのである。腰周りをきつく締め付け、自由な身動きを奪うタイトな洋服ではなく、動きやすいゆったりとしたコットンドレスを作り、これまでの「あるべき女性像」を破壊した。

 

また、彼女は洋服を作る時に裁断を最小限に抑え、柄がよく見えるような作りに仕立てあげた。彼女が目指していたのは、過去のファッション界が構築した「当たり前」に囚われない、まったく新しいタイプのファッションだったようである。
これは「強い自己を持つ、自信に満ちた女性は流行など気にしない」という創業者の言葉にも通じるものがあるだろう。

 

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現在の日本において、ファッションはかなり自由になりつつある。
趣味で和服を着る人もいれば、ロリータファッションを好む人もいるし、年齢に関係なく好きな色・形の服を着ることが許されている。性別の境界線をなくしたユニセックスなファッションすらある。自分の好きな服を着て、自由に主張することができる時代だ。

 

しかし、1950年代のフィンランドでは、女性がコルセットを外すことは決して容易ではなかったはずだ。当時の社会的な性役割などを考えると、個人が好きな服を自由に着こなせる現代とは、状況が大きく異なっていただろうと思う。

 

ドレス≪キヴィヤルカ≫、1957年 ファブリック≪ピッコロ≫(ピッコロ[擬音])、1953年
服飾・図案デザイン:ヴオッコ・ヌルメスニエミ Design Museum Archive

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見ているだけで心が躍る大胆なデザインのワンピースたちは、当時の女性たちの気持ちを代弁するスピーカーであり、着る人に自由な発想や勇気を与えてくれたに違いない。マリメッコの服を選んだ女性たちは、長年において自分を縛っていた「女性らしさ」を脱ぎ捨て、代わりに「自分らしさ」を身につけていったのではないだろうか。

 

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可愛くてお洒落なマリメッコの展覧会を見に行こう。そんな気持ちで足を運んだが、単なるお洒落では終わらない、デザインの核心にある強烈なメッセージに触れることとなった。デザイナーたちが巻き起こしてきた、60年間の爆発の歴史を見ているかのようだった。

 

ぜひ会場に足を運び、実物のファブリックやドレスと対面していただきたい。マリメッコの個性的な色と形に出会えば、まるでそこには、ピンと背筋を伸ばしたフィンランドの女性がいるような感覚に陥るはずだ。

 
 

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『マリメッコ展』招待券をプレゼント!
本コラムの読者の皆さまに感謝を込めて、抽選で5組10名様に今回の『マリメッコ展』(東京会場 Bunkamura ザ・ミュージアム)の招待券をプレゼントします。
メールフォームの件名を「マリメッコ」として、「お名前」、「メールアドレス」、内容欄に「送付先の郵便番号・住所」を明記のうえ、ご応募ください。 
応募締切:2017年1月8日(日)
ご応募はこちらから!

 

マリメッコ展 ─ デザイン、ファブリック、ライフスタイル
会 期:2016年12月17日(土)〜2017年2月12日(日)
    10:00〜19:00(入館は18:30分まで)
    毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)12/31(土)を除く
休館日:2017年1月1日(日・祝)
会 場:Bunkamura ザ・ミュージアム
    〒150-8507 東京都渋谷区道玄坂2-24-1
電 話:03-5777-8600(ハローダイヤル)
観覧料:一般1,400円/高校・大学生1,000円/小中学生700円
主 催:Bunkamura、フィンランド・デザイン・ミュージアム、朝日新聞社
http://marimekko-exhibition.jp